2017年10月23日月曜日

2017⑦活動報告 雨の中の茅刈も楽しく 地域通貨ボッチ券も登場


 台風21号が日本本土に上陸するおそれが強まった1021日、22日今年の茅刈が実施された。新潟湯沢町の予報は21日が曇り時々雨、22日は終日強い雨である。上ノ原に着いたときはすでに降り出していて全員がレインコートを着用することになり、役場に用意していただいたテントの中でのはじまりの式となった。

 上ノ原は靄と小雨で紅葉も良く見えない。夏の天候不良でススキの生育もあまりよくない、葉もまだ青い、今年は初霜もまだとのこと。

 何よりも今年の茅刈はいつもの年季の入った顔が見えないのが寂しい、惣一郎さんが亡くなり、三郎さんも健康面から来られない。藤原の茅刈衆が少ない分ボランティアの力の見せ所と期待して塾長が酒断ちまでしたのにこの天気である。

 新たな試みとして、今年から飲水思源地域通貨「ボッチ」を刈ったボッチ数に応じて配布することにした。1ボッチ(5束)を刈ると200ボッチ(円)のボッチ券がもらえ、農産物直売所で藤原の農産物が買える仕組みである。はじまりの式でこのことを説明して奮闘を促す。
 
飲水思源地域通貨 200ボッチ とボッチに着ける荷札
 

 このあと、それぞれが鎌を研ぎ、雲越萬枝さんに茅刈、ススキでの結束による束の作り方、ボッチの立て方をご指導いただいた。よい茅がびっしり生えたところを目指すこと、鎌で刈るときは茅を抱え込む(抱き込む)こと、きれいで倒れないボッチづくりのコツは、束を結束するとき葉の高さの下から65%のところで縛ること、ボッチを縛るときは同じ身内の茅で縛ることなどを実演してもらい参加者はススキの中に入っていた。
 
萬枝さんのわかりやすい指導を受ける

模範の美しいボッチ

 

 そう強くはないが雨は相変わらず降り続ける条件の中でも皆さんボッチづくりに一生懸命である。声をかけると元気な声が返ってくる。作ったボッチの前でカメラに見せる笑顔は誇らしそうである。
 
どうだ
 
出来ました
 
 
 
 

♪♪ 鎌を持つ手が震えてる、ボッチくくられ嬉しそう、笑顔がこぼれてー、雨に煙り~ ボっチも濡れてる~ 笑顔 あふれる茅場で~す♪♪

 思わず出た歌詞は麦畑のパクリ
全員が1ボッチ以上を作った頃合いの15:30に終了の合図をだした

 終わりの式で全員から作ったボッチ数を聞くと、少ない人で1ボッチ、多い人は4ボッチとなった。2時間半で4ボッチは1日にすると10ボッチはできる茅刈士捕のレベルである。 全員の数を集計すると69ボッチとなった。
 
69ボッチが雨の上ノ原に
 
 
初霜がなく、まだ残って咲いていたシシウド
 
今年も見れた自然しか出せない色合いのマユミとツルウメモドキ
 

2日目に姿を見せた紅葉をバックに撮った集合写真 


 本来はボッチに名前を書いた荷札を付け2日目が終わった時点で検査して合格したものに1ボッチにつき200ボッチ券を渡す手はずであったが翌日が強雨で作業ができないと判断してその日の夕食時に各自にボッチ券を渡した。

 この日の宿は、料理に定評のある「とんち」。満腹になったところで異色の車座講座が開かれた。講師は藤原や尾瀬などでコウモリ、ネズミ、モグラなどの動物を研究されている群馬県自然環境調査研究会の夏目道生さん。この春まで小学校の理科の先生だったとのことだが45年前からここ藤原に移住してコツコツと研究されている方である。コウモリ、モグラの標本や迫力ある写真、撮りためたスライドを駆使しての講座は、見たくても見れない土の中や空を飛ぶ、夜行性の小動物である。そして究極は生きたウサギコウモリ、ユビナガコウモリの登場(もちろん研究のための許可を得て捕獲されたものである)。実物による解説には説得力がある。自然界には様々な生き物がいてそれぞれの役割を果たしている。人間が彼らに少なからず影響を与えていることを自覚しなければならないことを痛感させられた。実に面白くためになる講座でした。このような方が藤原に居られたとは知らなかった、藤原のタカラは自然、そして人です。
 
愛おしそうに動物を語る

本物登場

 

 2日目はやはり朝から雨、それも強い。上ノ原に下見に行き、作業は無理と判断。紅葉のシーズンでもあり、照葉峡の紅葉狩りをすることにした。ちょうど紅葉の盛り、雨の日の紅葉もしっとりとしてなかなかよろしく、写真写りもいい。
緑に戻りそうな雨の中の紅葉
 

 そして、もらったボッチ券を使っての買い物、久保にあるNPO法人 奥利根水源地域ネットワークの地域農産物直売所に立ち寄り、花マメ、カブ、食用菊、炊き込みご飯おにぎり、手作り草履などを購入、その間直売所の賑わいぶりははさながら台風のようになった。飲水思源地域通貨ボッチ券の威力抜群であった。そして台風に向かうように帰路についた。
 
山ガールパワーがさく裂した直売所は大賑わい
 

 雨に降られた茅刈であったが楽しく収穫の多い茅刈であった。

                            文責:草野

2017年10月9日月曜日

「みなかみユネスコ・エコパーク登録記念式典」に出席-地域活動報告で塾の活動を報告-


平成28年にみなかみ町が申請していたユネスコ・エコーパークが今年614日に登録されました。
 103日、その記念式典に草野、北山さん、清水さんが出席しました

みなかみエコパークは、みなかみ町、新潟県魚沼市、南魚沼市、湯沢町の一部からなり総面積91,368ha、その90%以上が森林です。何よりも利根川の最初の一滴を生み出し、東京をはじめとする首都圏3000万人の生命とくらしを支える水源地域となっています。この地域は、太平洋側と日本海側の気候の境目という特徴ある気象条件のもと、貴重な自然も多く、人々が暮らしの中で自然と共生していることが世界のモデルとなると評価されての登録決定でした。

式典では、認定証授与、各来賓の祝辞、みなかみユネスコ・駅パークの概要説明のあと地域で「みなかみ町自然環境及び生物多様性を守り育てる昆虫等の「保護を推進する条例(通称昆虫等頬条例)」の下、自然再生等の活動をしている5団体の活動報告がありました。森林塾青水も草野がみなかみ町へのお祝いと御礼、北山塾頭が活動報告を行いました。塾は、上ノ原町有地を借用して活動して茅場とミズナラ林の保全活動を行っています。また昆虫等保護条例による助成金をいただいており、町民の皆さんにこれまでの成果を報告する機会を作っていただくようお願いしていたところですのでこの報告会は絶好の機会となりました。役場の担当者の方のご対応に感謝申し上げます。北山さんが作成した活動報告は、野焼の動画を放映するなど迫力満点でみなさんの評価が高かったようです。
 
授与式

ブナの額に納められた認定証

北山さんの報告


 

また、会場ロビーでは、塾のパネル、パンフ、茅風通信などを配布したほか、車座講座の小冊子を増刷して配布したところ瞬く間に完配しました。少ない時間の中で増刷に奮闘していただいた伊賀さんに感謝です。
 
配布した車座講座小冊子
 

森林塾青水は。飲水思源を合言葉にしています。

式典ではエコパークは認定がゴールでなくスタートであるとの言葉を何度も聞きましたがフィールドを提供していただいているみなかみ町のエコパーク理念活かした町づくりへの協力を惜しみません。

草野記

土呂部草原で茅ボッチづくり  -継続はタカラを造る- 


塾の今年の第6回目の定例活動である「日光土呂部草原での茅ボッチづくり」を930日から101日に実施、12名が参加。
 東武日光駅に集合の後、レンタカーと自家用車で土呂部へ・・・。

季節は違うが今回で3回目の土呂部での活動である。宿舎の水芭蕉苑の前では日光茅ボッチの会の飯村代表をはじめ4人と秋の草花を盆花風に飾った目玉ボッチの出迎えを受ける。この花の中に大好きな花の一つであるリンドウを見つけた。飯村さんによるとカッパ(草地)にも咲いているとのこと、最後に野生のリンドウを見たのは10年以上も前、この花は青春の思い出の花でもある。
目玉ボッチと盆花が関係
 
 この日は気温が低く土呂部は初霜だったとのこと。これから木々の彩が鮮やかになっていく前触れだ。

 昼食後、飯村さんの植物などの解説を受けながらカッパに向かう。この日の作業はボッチづくり、ボッチの用途は上ノ原の茅屋根資材と違い牛の冬場の餌(刈干:カッポシ)であるからボッチの材料はススキだけでなくあらゆる草が混ざってもかまわないし、草丈も短いので比較的楽である。ただ、牛が食べるには硬いシラカバ、ハギ、ヤマナラシなどの木質系は除かなければならない。飯村さんによると牛は栽培した牧草より野生の草が混じった干し草の方の食べっぷりがよいとのこと。同じ種類で同じ味の食べ物を食べるよりいろいろな味のする草が栄養のバランスも良くおいしい、それに牛舎にいても厳しい寒さの冬場の餌として薬効などもある野草もまじっているので体に良いことを本能で知っているのだろう。以前、栽培種の牧草だけを食べている牛は流産率が高いと聞いたことがある。
 
 ボッチづくりの手順は、あらかじめ機械刈りした野草を集めて直径5寸ほどの束にまとめて下から1/3ぐらいより少し上ススキで縛り雑木を取り除く、これを5束つくりまとめて立てる、ボッチの腰のあたりで縛り、穂先も縛って出来上がり。ススキだけでなく雑多な草も一緒なのできれいな円錐形のボッチになりにくく、立ち姿も良くない。やっているうちにそれぞれの束は下だけでなく上の方も縛ってみたらまとまりがよく
きれいなボッチ姿になった。ひと手間多いがその後はこの方法を使った。
 
刈った草を鎌で集める
 
ボっチを立てる
 
立ち姿がきれいなボッチ

カッパのボッチ


山際と青空の境がくっきりとした素晴らしい秋晴れの中、遠くに佇む集落が見える風景の中のボッチづくりは楽しく、日光に来てよかった。他所のフィールドを経験することは自分のフィールドを見直し継続するチカラとなる。参加した仲間たちの満足げな顔もうれしい。

山際くっきり、青空、集落
 
ボッチのある風景①

ボッチのある風景②

ボッチづくりのすぐそばに野生のリンドウが咲き、作業が終わり、フィールドを案内してもらった歩道の脇でも見ることができた。幸せな気分になり一瞬、昔日にタイムトラベルしたような気分になり周りが見えなくなり一人の甘酸っぱい世界に。


リンドウ(なぜ大好きかはないしょ)
 

土呂部草原は植物、特に花の宝庫である。何気なく絶滅危惧種が咲いていて驚かされる。草原、湿地(水芭蕉園地)、森林、モザイク状の自然ということもあるがなにより草原などを利用する作業が営々と続けられたことが生物多様性の保全につながっている。まさに「継続はタカラを造る」である。今回出会った草花、カラハナソウ(ホップ)、ナベナ、コウリンカ、ウメバチソウ、アケボノソウ、アキノキリンソウ、リンドウなどはその一部である。
ウメバチソウ
 
カラハナソウ(K子さんが料理を思案中)
 
 
まだ残っていたアケボノソウ

説明を追加
 
コウリンカ

 


1日目の作業終了(皆さんいい笑顔です)
民宿水芭蕉苑は居心地がいい。食事は地元料理でおいしい。おかげで交流会も大盛り上がった。

2日目は、早起きして散策、お目当ては今年栃木県で初めて確認された「クロイタヤ」である。この朝も放射冷却で霜が降り、朝霧が気温上昇ととも湧き上がる景色を楽しみながらの散策となった。「クロイタヤ」は「カジカエデ」と間違いそうなカエデである。よく見ればその違いは明らかであるがちょっと違うぞと気づかれた茅ボッチの会の観察力に頭が下がる。おかげで初めてクロイタヤを見ることができた。
左カジカエデ(切れ込みが直線的)、、右クロビイタヤ(切れ込み鋭角))

タネ(羽が水平)

樹皮(黒く亀裂が多い)


 

クロイタヤのある場所は沼地や河川の近くの水分の多いところ。沼から霧が湧きたつ景色に感動しながらの散策となった。  
 
            ”朝霧に 仲間の声も 湧き上がる”

クロビイタヤのある沼の幻想的な朝もや
 

朝食後は、昨日続きの茅ボッチづくり、かなり捗ったので途中、機械刈りをして追加することに。

作業終了後、大滝を見て、地そばで昼食をして、来年はワラビのころに訪れようかとの声を残して土呂部をあとにした。

2日目の作業終了

                                            草野記