2019年10月5日土曜日

憧れのシオジ大木に逢えた


 群馬県上野村での森林セラピー体験に参加して是非とも見たい樹と訪れたい場所があった。 見たい木は「シオジ」。
 シオジは、モクセイ科 トネリコ属でアオダモやヤチダモの仲間である。
九州ではシオデと呼ばれ 漢字表記は 柾樹、 柾+〇(木偏に壽)
冷温帯の渓流沿、いわゆる渓畔林を構成する。本州四国に分布し群馬県利根村が北限、生育地としては秩父山地が有名であるが群馬県上野村北沢渓谷(国有林)のシオジ原生林は国の天然記念物、秩父は車で1時間程度なので上野村は秩父山地に接している。
 シオジは樹高が高く30m超となる。幹は通直で完満、直径1.5m以上 単幹性(株立ちしない)葉は奇数羽状複葉で小葉は79枚、雄株と両性株がある、翼を持った種子は風で飛ぶが遠くへは飛ばない、稚樹は耐陰性が強い、
 材は建築(建具 床柱)家具 テーブル バット 楽器 ピアノ外板 木工品(漆器)いわゆる銘木となる。

サワグルミ、カツラと混交する傾向がありアワブキ、フサザクラ、チドリノキが下木層にある林相となりスズタケは少なくなる。

これだけの予備知識を持って上野村神流川源流の中之沢へ。

 シオジは奥多摩などで幼木や幼齢木は見ているが大木にはこれまで出会えていない、前橋営林局(関東森林管理局)の勤務時代に上野村の国有林のシオジの大木の話を聞いて一度は見たい憧れの樹である。本当は北沢渓谷の原生林を見たかったが、片道3時間と聞けば二の足を踏んでしまう。

さて、中之沢のシオジ。落差20mのオボロカヤの滝の対岸に大木があった。対岸に渡るのは少し難儀だが、ここまで来てそばに行かないのは折角逢った愛しい人の体温を感じないで帰るようなもの。ガイドさんに許しをもらって大木のそばへ、
堂々たる風貌のシオジの大木
 
樹肌
 
触るとふかふかの苔に癒される
 樹高は35mを超し胸高直径も100cmはある。樹皮は浅黒く荒い。思った通りの樹であり胸がキューンとなりおもわず抱きついてしまった。株の周りをまわってみるとふかふかの良い土壌、これだけの樹高を支えるので根も深く広く張っているだろう。シオジと混交する樹も下木も地表植生も予備知識のとおりである。稚樹の発生も確認。葉っぱは高くてとても取れないが稚樹で確認、シオジに逢えて感激の森林セラピー体験。

 

 

そして行きたい(いかなければならない)場所は、日航機墜落事故の520人の犠牲者を祀る「慰霊の園」、
 
墓石に刻まれた520名の名前、事故の記録と当時を振り返るビデオを見ると今更ながらに悲しみが襲ってくる。この方々はまさかの突然の死に直面して何を思っただろう。この方々の生きたかったとの想いと、犠牲者の救助に奔走し、心から嘆き悲しみ、遺族を慰め、そして事故を繰り返してはならないとの上野村村民の想いがひしひしと伝わってくる。自分の生き方を見つめてしまう場所であった。

                                      草野記

 

下流圏会員学習会 上野村森林セラピー体験


下流圏会員学習会の2回目は神流川源流の村、上野村において9月22日より2日間の日程で開催し、会員8名が参加しました。上ノ原で計画しているヘルスツーリズムの参考にするため、森林セラピーを体験するとともに、上野村の歴史と文化を訪ねることが目的です。

初日朝、高崎駅に集合した参加者はレンタカーに乗り込み、予定通り10時前に集合場所の森の体験館に到着。原則日曜日に開催される森林セラピー体験のこの日の参加者は、青水の他に東京からきた二人組の計10名。受付を済ませ、森林セラピストの中村さんから説明を受けた後、マイクロバスでセラピー基地の中之沢源流域へと向かいました。

バスは県道から外れると、作業道を整備した細い道を進みます。山側も谷側も急峻な険しい山道です。

最初のスポットは、遊歩道を沢まで降り下ったオボロカヤの滝の周辺。オボロカヤはアイヌ語で水溜まりという意味。この滝の近くに木製デッキが設えてあり、そこで15分ほど滝の音を聞きながら交代でシートに横たわったり、滝壺で飛沫を浴びながら過ごしました。

         オボロカヤの滝へと続く遊歩道を進む

オボロカヤの滝

 
                 寝観

 デッキの反対側にシオジの大木があり、草野塾長が渓流を渡りシオジの根元まで行きました。隣に人がいると予想以上に大きいことがわかります。
 
 
               シオジの木

 次は「森のレストラン」で地元の食材を使った特製弁当の食事。もちろん電気はなく、壁がガラスブロックを嵌めた鉄骨で、小屋組みが木材の十坪程の建物。食事の後は岡田さんが抹茶を点てて全員に振る舞いました。
 
 
                特製弁当


               森のレストラン

 昼食後は、沢筋のルートを上流へと歩きました。苔むした岩肌に広葉樹が根を張り、奥入瀬渓谷のような雰囲気があります。標高も千二、三百メートルあるためか、少し靄がかかってきました。
 
         苔むした森の中を渓流にそって上ってゆく

 
                苔

 
                 森
 
 中村さんは森林セラピーの効用は、医学的な研究からも裏付けられていると強調されました。森林セラピー協会の役員には登山家の今井通子さんはじめ医師の方々が多数おり、森林と身体の健康との関係を医学遼法的な側面から明らかにする研究が進んでいるとのことです。また、今年の五月に森林セラピーの世界大会が上野村で開催された際には、海外からの参加者は、「日本の森はどこからでも水が湧き出ている」と驚いたそうです。

上ノ原のヘルスツーリズムの原点は、やはり「飲水思源」であると感じました。帰りに、「しおじの湯」に立ち寄り温泉で汗を流して、森林セラピーの全行程を終えました。

宿泊先の民宿「不二野家」には5時頃到着。不二野屋の主人の黒澤さんは猟師でもあり、夕食には熊と猪の肉がでました。鉄板にバターをひき、塩コショウをたっぷり降って良く焼くのがコツとのことで、臭みもなく美味しくいただきました。

 

 
                                              夕食には猪と熊の肉が

 日航機の墜落時、黒澤さんは消防団員で、事故同時の話や神流川発電所などについての話も伺うことが出来、思わぬ「車座講座」となりました。
 2日目は朝食を食べた後、近くの諏訪神社にお参り。板葺きの舞殿があり、藤原の諏訪神社と同じくお祭りには獅子舞が奉納されるようです。

 
              諏訪神社舞殿

8時過ぎに宿を出て上野ダムに向かいました。上野ダムは隣の長野県にある南相木ダムとの落差を利用した揚水式発電のためのダムです。群馬県側の地下に東京電力神流川発電所がつくられています。

 
              上野ダム

続いて黒澤家住宅へ。屋根は勾配の緩い板葺き石置き屋根で、百坪はある大きな民家です。上野村で茅葺きの民家は見かけないのは、急峻な地形のため茅場ができなかったからかもしれません。二階は上野村の民俗資料が展示されていました。

              黒澤家住宅

 続いて、日航機事故の犠牲者をまつる慰霊の園へと向かいました。

慰霊碑にお参りした後、展示室で事故の模様を伝えるパネルなどを見学し、映像も鑑賞しました。事故の教訓として、自衛隊、警察、マスコミなどが情報を共有することの大切さを訴える、黒澤村長はじめ当時事故処理に関わった上野村関係者の言葉が印象的でした。この慰霊の園は、身元を特定できない遺体を弔うため黒澤村長の呼びかけで村民が土地を提供したものです。

  
                             慰霊の園

 次は神流川支流の沢筋にかかる吊り橋、スカイブリッジを見学。全長は225メートルで、橋上から眼下90メートルの谷底から天空へと広がる緑の山々の姿を堪能しました

  

        スカイブリッジからの眺めとシャボン玉
 
             スカイブリッジ

最後に道の駅向かいの蕎麦屋で昼食を食べて帰路につきましたが、森林セラピー以外にもいろいろ学ぶことの多い楽習会となりました。(作成 稲)

2019年9月12日木曜日

ヘルスツーリズムの森林づくり 遊歩道貫通・樹名板付

 例年の9月の活動は諏訪神社大祭に併せて実施するミズナラ林整備である。
今年は,諏訪神社のお祭りは獅子舞の奉納が取りやめとなったので、いつものお祭りへの参加はなし。

 この時季の上ノ原は,まだ夏の日差しであるが涼風が吹き、ススキが赤みがかった穂を出して、オミナエシ、ヤマハギ、ツルリンドウなどの秋の草花が咲き、虫の音が聞こえる。中でも邯鄲の声が心地よく、まるで草々が鈴を振っているようである。

この時季の上ノ原  「邯鄲が 鳴いて茅場が 鈴を振る」


ツルリンドウ

オミナエシ
 
ノアザミとヒョウモンチョウ


 今回の作業は、ミズナラ林北側のゴルフ場コースに隣接する壮齢林内に作設済の搬出路兼散策路と6月の活動で作った散策路をつないで草原から壮齢林の散策コースを完成させることである。
参加者は、首都圏からの15名(うち日帰り2名)と現地から北山さんが参加、参加者が道づくりになれたこともあり、比較的緩やかな斜面で、横木の設置が余り必要でなく、木漏れ日の射すさわやかな空間のなかでの作業は思ったよりはかどった。3時半頃には前回の歩道の終点に到達して、これで貫通である。

研修の成果を披露


歩道作りは慣れたもの

残りの時間は、座観場所の設置、前回丸太を四角に並べて作ったおいたのを利用してみると座り心地が悪い。その代わりに散策路の斜面上部にミズナラを倒して一列に並べるような座観場所を作った。いわゆる倒木座観である(写真)。みんなで一列に座ってみるとなかなかよろしい。

倒木座観で勢ぞろい

これで森林ヘルスツーリズムを実施する基礎ができた。このヘルスツーリズムの森を仮称「ゆるぶの森」としているので完成した散策コースの名称は「ゆるぶコース」が有力。

 この日の宿は関ヶ原、夕食後、はす向かいにある「居酒屋パル」で車座講座・交流会を行った。車座講座の話題は、神奈川県で林業従事者ガイダンス講座を受けた藤岡隆司さんに体験談を語ってもらった。

 2日目は、「ゆるぶコース」の樹木に樹名板を取り付ける作業である。既に樹名が記載された板を手分けして持って、散策路のそばの樹木に次々と取り付けていく。
クリに樹名板取り付け

 
 ここで、藤岡さんがスマホできれいに撮ってくれた樹名板を取り付けた樹木の中で主なものをラインナップ
アズキナシ
 
ホオノキ

カツラ

ヤマブドウ

ハウチワカエデ

ミズキ



ツタウルシ(木に巻き付いている三出複葉の葉)

ハリギリ(センノキ)

ウダイカンバ(マカバ)


ブナ

ブナの裏に着いた熊の爪痕

最後に森の中で見つけた秋の果実

ムシカリ(オオカメノキ)
 

ミヤマガマズミの実に秋の気配

ブナのところまで行って本日の作業は終了。その後関ヶ原でお祭りのお赤飯をいただき、諏訪神社に参拝して帰路についた。
                                     草野記
 

2019年7月21日日曜日

活動報告 自然環境モニタリング -賑わいを実感-


草原の簡易的なモニタリング調査として、上ノ原のシンボルであるヒメシジミ、7月に咲くアザミ類、外来種のヒメジョオンの個体数調査を3人で行いました。1時間位かけてメインの通路沿いを歩いて、周辺に見られる対象種の数を地道に数える方法です。結果としてヒメシジミはなんと663個体、アザミ類は140個体、ヒメジョオンは19個体が見られました。ヒメシジミが乱舞している様子は見ればわかりますが、実際に数えてみるとその多さに改めて驚きました。梅雨の間の晴れ間だったこともあるかもしれません。
ナワシロイチゴに群がるヒメシジミ
エコパークに関するモニタリング調査のために日本自然保護協会が設置している自動撮影カメラのデータの回収を行いました。ニホンカモシカ、ニホンジカ、ツキノワグマ、ニホンザル、ニホンノウサギ、ニホンアナグマ、キツネ、タヌキ、ホンドテンなどが写っていました。日中は見ることのほとんどない生き物も写っていて、上ノ原の草原や森林が多くの動物達に利用されていることがわかります。ニホンジカは数年前までは上ノ原には来ていないかもと思われていましたが、今回の調査では少なくない枚数が撮影されていました。今後はシカ対策も考えないといけないかもしれません。
 
センサーカメラに写ったニホンシカ
 
ツキノワグマ
 
 
                            西村記

活動報告 防火帯刈払 侵入木除去 自然環境モニタリング -ヒメシジミとともに-

 71314日、来年の野焼きの準備作業である常設防火帯の刈払い、侵入木除去、自然環境モニタリングを行いました。刈払に7名、侵入木除去に3人、自然環境モニタリングに3人がつきました。
 暑い時期に防火帯や侵入木除去を行うのは、草や樹木がこの時期までは発芽や葉の展開で昨秋までに貯めたエネルギーを使い、これ以降は、光合成を盛んに行ない次の季節に備えて体内にエネルギーを貯め込み始めるからで、この時季に草刈りや除伐を行うとその後の再生やぼう芽のためにわずかに残ったエネルギーを使い体内に次季のエネルギーを貯めることが出来ず再生力が衰退するからです。
 林業ではこの時季に下刈りといって植栽した幼木の刈り出しを行いますが、これは周りの雑草や灌木を除去することで植栽木の日当たりを良くして光合成をしやすいようにするのと,前述のように周りの雑草木を衰退させ、人のチカラで植栽木の光の獲得競争を助けるのです。
 今年は、新たに電動刈払機が2台増え、齊藤さんの機械持ち込みの助っ人もいれて、7台で周囲の防火帯を刈り払いました。今年は比較的気温が低く助かりましたがそれでも汗びっしょりの作業となります。今日一日で終了すると目算していましたが歩道刈りも行ったため南側の防火帯が一部残ってしまい2日目に電動刈払機で尾島、稲さんの女性2人に30分ほど刈ってもらいました。
刈り払い機の前にヨツバヒヨドリが
 


私は、十郎太沢沿いの防火帯を担当。刈り始めてすぐに気づいたのは、刈られる草群から一斉に飛び立つヒメシジミの群れが多いこと。機械を止めて観察するとナワシロイチゴの花にヒメシジミの群、それがあちこちにあります。中にはノアザミに群がっている集団も、これほどのヒメシジミの群舞は久しぶりです。ここ45年見られなくて心配していたのですが発生の周期なのか、気候のせいかわかりませんが見事に復活です。 可憐なヒメシジミを写真で堪能下さい。

ナワシロイチゴの花に群がるヒメシジミ(表が青紫色♂ 暗褐色は♀)

ヒメシジミの幼虫の食草はアザミ類 オオイタドリなど

ナワシロイチゴは上品な味と香り、彼と彼女の舌鼓が聞こえてきそう




そういえば,今年はナワシロイチゴが多いように感じます。この植物は日当たりを好むので、防火帯や道路の作設で適した生育環境が増えたのでしよう。その結果ヒメシジミも増えたという生物多様性の連鎖を生んだのではないでしょうか。そう考えるとナワシロイチゴやアザミを刈ってしまうのはヒメシジミに悪い気がして出来るだけ残すようにしました。
 ヒメシジミが群がるナワシロイチゴの花、どんな味だろうとなめてみました。。ヒメシジミの可憐な姿にぴったりのとても上品な甘さと香りです。他にもギボウシ、ホタルブクロ、オオウバユリ、シオデ、ミヤマオダマキがあるたびに刈り取らないように慎重に機械を操作するためいつもより時間がかかってしまいました。ついには空想の世界に入り、「上ノ原の棲み心地はどうだい」「伴侶は見つかったかい」「冬はどうやって過ごしているの」など刈りながらヒメシジミとの対話です。安全上はもちろんNGです。
 今年の夏の上ノ原、特に様々な草花や昆虫が目に付きまし。.この時季の賑やかさは来てみないと実感できません。
ノアザミの色も鮮やか

ギボウシ 「貴女たちこんな花を咲かすのね!」

増えて欲しい山のアスパラ「シオデ」

刈り出したオオウバユリ

蛍を入れてみたいホタルブクロ

ハウチワカエデの種子(飛ぶには早い)
 



西村さんの自然環境モニタリングの報告(この次のブログを参照)の中でもありますようにセンサーカメラに写った動物も多く、上ノ原の生物多様性の豊かさを実証しています。これもコツコツと15年続けた茅場再生作業の成果でしょう。
この時季の上ノ原


 

この夜の宿は、「たかね」、日本茅葺き文化協会の上野さんと一緒に参加された京都美山町の茅葺き職人の塩澤さんに茅や茅葺きのことを沢山教わりました。塩澤さんは車イスでの生活ですが、障害を克服して茅葺職人を続けておられる情熱あふれる方でした。
 今年の茅刈りは、上ノ原着手15周年とふるさと文化財の森指定記念の茅刈イベントを企画することになりました。8月には実施内容を明らかにします。みなさん、是非参加して盛り上げて下さい。
 2日目は、残りの刈り払いを30分ほどで終了して、来年の事業として計画している,ヘルスツーリズムを意識しながらミズナラ林を散策しました。
雨の中でも苦にならず散策

この森は、途中、本降りになった雨にもほとんど濡れないほどの壮齢で様々な樹種が比較的大きな木があり心身のリフレッシュには最適です。

ミズナラの大木
 
                                        草野記