2024年2月10日土曜日

つくば市・平沢官衙遺跡で楽習会 上ノ原産の茅による葺き替え工事を見学

  2022年度と2023年度の二年にわたり、上ノ原で刈り取られた茅、合計凡そ六千束が、茨城県つくば市の平沢官衙遺跡に建つ、復元土壁双倉の茅屋根の葺き替え工事に使用されています。森林塾青水では24日に、つくば市の主催で実施された見学会に会員他11名が参加しました。

国指定史跡である平沢官衙遺跡は、奈良・平安期の筑波郡の郡役所跡で、昭和50年の県営住宅建設工事に際して発見され、その後発掘調査と復元整備工事が進められ、平成15年に、「平沢官衙遺跡歴史ひろば」として正式に開園しました。

史跡周辺の地域は日本百名山の一つ、筑波山の参詣道の入口にあたる古くからの観光名所です。参加者は午前中つくば駅に集合し、市営バスの「つくバス」に揺られて史跡西側の北条地区に移動、昼食前に、かつて醤油製造業を営んでいた「宮清大蔵」という江戸時代末に建てられた登録文化財の建物を見学してから、歩いて平沢官衙に移動しました。

写真 復元建物群の遠景 後方に筑波山が見える



史跡に到着すると、昨年の茅出しに参加いただき、車座講座で遺跡についてお話しいただいた、つくば市文化財課の石橋充課長より、今度は実際に現場を見ながら解説いただきました

写真 石橋課長より遺跡全体の説明を聞く



三棟ある復元建物は、かつて稲を保存していた正倉で、萱葺きの土倉双倉の右側は校倉造り、左側には板倉造りで復元されています。参加者は校倉造りの木組みの実際を、模型を使って体験することができました。

写真 模型を使って校倉の木組みを体験



続いて、実際に屋根に上がり、現場で茅葺き工事の現場を見学しました。茅葺き文化協会の事務局長であり、()里山建築研究所のスタッフとして現場の施行管理を担当している上野弥智代さんと、工事に従事している職人さんから話を伺いました。今回の工事には上ノ原のほか、地元つくば市の高エネルギー加速器研究機構はじめ、県内数か所から茅を調達しているとのことです。

一番気になるのは、上ノ原産の茅の「品質」ですが、いろんな太さの茅が混じっていても、それぞれ使う場所によって適した太さは異なるので、現場で選別して「適材適所」で使っているとのことでした。「刈る側」としては、一本一本の太さにあまりこだわること無く、萬枝師匠の言うように、穂の付いた真直ぐの茅を刈り、雑草を極力取り除いて、定められた太さにしっかりと束ねることが大切だと理解しました。

写真 葺き替え工事中の土倉全景



写真 職人さんから葺替工事の説明を聞く



写真 茅葺に使う道具や材料も現場に展示



写真 茅葺屋根の軒下 下側が霞ヶ浦の細いシマガヤ、上側が上ノ原のカヤ



写真 高床の床下に茅を保管



史跡全体の整備は令和8年度まで続くとのことですが、土倉の茅葺き工事は、令和73月竣工予定です。その時は、大勢でお祝いに駆け付けたいと思います。 (文責・稲)

 




 

2023年11月25日土曜日

活動報告 「茅出し」 -2年続けてつくば市の平沢官衙遺跡の屋根材を搬出-

 

今年の茅出しと山之口終も無事に終わりました。藤岡和子さんが青水のfacebookにその様子を掲載してくれましたので承諾をいただいて転載しました。

(1) Facebook

 

1118-19

茅出しは、上ノ原入会地の仕事納めです。1028日から刈り始め3週間、刈り取った草原に散っているボッチを、作業道や公道に集める体力仕事です。

仲間集い昼飯を食べていた頃に広がるは、息を呑む太陽に輝くボッチ風景。茅出し仕事の爽快感を存分に味わえそうと思われたのですが、、、。

いざ作業開始!

あれよあれよと天候が急変。粉雪が降り始め、徐々に綿雪吹き荒れる中の仕事となりました。それでも、みんなのやる気で1530分には、刈り取ったボッチを道に集めることが出来ました。ご苦労様です。

ボッチが立つ茅場に近づく怪しい雲


雪の降る中

寒さにも負けず茅出し

雪もやむ

翌日は、青空と雨が繰り返す冬がそろそろ始まるそんな気配漂う日。トラックにボッチを積み込みました。途中虹が現れ、その素晴らしさを味わう小休止もあり、無事に作業終了。

運び出されたボッチ

トラックに積み込む

虹🌈


今年の嫁入り先は、642ボッチ(3,210)すべて、古代筑波の正倉院『平沢官衙遺跡』の屋根材になります。

【山の口終い】

十二様へ、入会地の恵みを戴いた感謝と一年無事に作業できた御礼をお参りします。

山之口終い


そして直会へ、自然と人間と神が同じものを口にして清めます。

お供え・直会


すべては繋がっている

どれが勝るでもなく共存し

互いに慈しみ

来年も

孫の代へも

その先まで続いていく

上ノ原入会地でありますように

   和子

 

車座講座

 今回の車座講座は贅沢にも2つの話題で実施しました。

一つは茅の嫁入り先である「平沢官衙遺跡について」をつくば市文化局の石橋さん。平沢官衙遺跡は12月から工事が始まり、1月頃には見学会も行われるとのこと是非訪れたいものです。
 そして「嬬恋村の未来 -野鳥の会への期待-」を移住して3年間地域振興に尽力され今月で退任される上原さん。村の遠景、近景からの魅力を情熱込めて話されました。

石橋さん

上原さん

 

 茅出し数最終結果

トラックに積み込んで今年の茅刈数が確定しました

 ボランティ    660束(132ボッチ)

 茅刈衆(2人)1,300束(260ボッチ)

 合宿      1,025束(205ボッチ)

自伐組      225束(45ボッチ)

合計     3,210束(642ボッチ)


嫁入りボッチに祝い唄♪♬
晩秋の茅場風景

写真は、藤岡さん、笹岡さんに提供いただきました。 報告 草野



2023年11月12日日曜日

「2023茅刈実施報告」 ススキは生育不良でもボランティア・合宿・地元茅刈衆のチカラを結集

 記録にも記憶にもない今年の夏の異常な暑さと降雨の少なさの連続は、人々の生活にも大きな影響を与えたがこの異常気象は植物たち、上ノ原のススキにも影響して近年にない生育不良となり草丈、茎径ともに例年に比べ見劣りがする。雑草は繁茂し、ススキの色も今一で「地球はどうなってしまうのか」とススキが嘆いているようだ。                                   温暖化は急速に進んでいる。

シラカバと茅場とミズナラ林の紅葉


記帳台と後背林


  今年の茅刈は、茅場の中で比較的生育が良く、雑草が少なく、ススキがまとまっているところを探しながら刈る、自然の恵みに感謝しながらもススキの状態に心を痛めながらの茅刈となった。

 1028日、募集に応じて22名が上ノ原に集結、今年の参加者の特徴は、ヨーロッパからの留学生2人を含む東工大グループをはじめとした20代の若者が多く上ノ原茅場は活気に溢れた。

 始まりの式のあと雲越萬枝師匠の茅刈講習、その称賛される技術はもとより気の利いたジョークを交えた指導を聞くのを楽しみにしている。今年のジョークは作り上げたボっチを指して「これなら大阪万博に出しても恥ずかしくない」であった。いいなー。 

茅刈講習

ボっチを抱きしめる師匠

鎌研ぎ
   鎌研ぎ終わり、それぞれが刈り始める。                               生育のいい場所を探しながら茅を刈るのでなかなか能率が上がらない、1時間ほどで2ボッチ刈ったところで巡回してみるとやはり「茅が小さい」との声が多い。ついでに茅場全体を回り,茅刈合宿の時に入る比較的生育が良くまとまっている場所に目星をつけておく。そのあと2ボッチを作りあげたころで3時の休憩。広場にもどると岡田さんの野点の準備が出来ていて、お菓子と一緒にいただく。おいしいお茶を茅場でいただく幸せ。岡田さんいつも有難うございます。

野点で疲れが吹っ飛ぶ

作法にのっとり小首をかしげる


この後も巡回、1ボッチを刈ったころに本日の作業は終了。皆さんに出来高数に応じたボッチ券を配ってみると本日のボッチ数は60ボッチだった。 

ベテランが初心者を指導

              
刈れば日本の屋根が蘇る

 
本日の宿は料理に定評のある「とんち」。                                夕食後の車座講座は東工大学院生、平尾しえなさんの全国茅刈行脚などの話、上ノ原はもとより阿蘇、長野開田高原(カリヤス)、御殿場、大阪(淀川)、筑波、沖縄(ササ)などの全国で茅刈をしている強者、今回はヨーロッパの茅葺の話も含めて各地の茅場の特徴もあり大変勉強になる話題でした。建築が専門の彼女「家は買うものでなく作るもの」の言葉におおいに同感。

2日目、天候はまずまず。生育のいいところが把握できたのか能率が上がり、全体で70ボッチ。2日間で130ボッチ(650束)。ボッチ券で買えるお米、マメ、野菜などの地元産農産物が移動販売車で到着してたちまちのうちに完売。

今年の茅ボッチは昨年に引き続き、つくば市の国指定文化財「平沢官衛遺跡」の屋根の葺き替え用として嫁入り先が決まっている。目標の600ボッチ(3000束)にはまだまだだが条件の悪い中、皆さんよく頑張ってもらった。後は第1陣、2陣の合宿組、そして地元茅刈衆の頑張りで目標を達成することになる。

その茅刈合宿。第1陣は29日7人、30日(終日)6人、31日(午前中)3人が従事した。さすがベテランぞろい成果は100ボッチを超えた。第2陣は11月3,4,5日に6人が入り、これも100ボッチを超えたので合宿で200ボッチ(1000束)。

合宿第2陣のメンバー


きえすぎくん活躍


これに昨年2200束の実績を誇る雲越萬枝さん、渡邊勇三さんの地元茅刈衆が従事して上ノ原茅場には600ボッチ以上が林立し11月18,19茅出し・嫁入り日を待っている。

ボッチが立つ茅場



残っていた紅葉


合宿の帰りの夕暮れの茅場

  報告:草野                                             写真提供:清水さん、柳沼さん、藤岡和子さん。

 

2023年11月1日水曜日

麗澤中学校奥利根水源の森フィールドワーク ~上ノ原茅場入会の森~

  上ノ原の木々が色とりどりに染まった秋麗な10月25日、私立麗澤中学校1年生の『自分(ゆめ)プロジェクト』奥利根水源の森フィールドワークが、森林塾青水の活動の場上ノ原茅場入会の森で行われました。

 

自分(ゆめ)プロジェクトとは、麗澤中学高等学校6年間を通して麗澤教育が大切にしている感謝の心・思いやりの心・自立の心を育てるプロジェクトです。3つの心を育むために、様々な体験や実践を通じて自分のことを真剣に考え、関心・適正・能力を探り、自己理解を深めていきます。その第一歩が、中学1年生の自分(ゆめ)プロジェクト『奥利根水源の森フィールドワーク』です。生徒ひとりひとりの自己理解へと繋がっていけるよう、5月の学校の敷地内を巡る五感植物観察と合わせて森林塾青水が、インストラクターとして関わっています。昨年よりテーマをリアリティ~直に触れ感じる~として、遊びと学びを分けない心身全体に働きかける遊学を導入。すべてが気づきであり知恵になると考えました。生徒たちは、一日を通して3つのプログラムを体験します。3つのプログラムが繋がるひとつの流れと感じるように各プログラムに関連性を感じるタイトルを付けました。また、昨年の子どもたちの様子から分析し、より心が癒され、たくさんのことを感じ取っていけるように再構成しました。生徒たちは、教室と異なる観点から学んでいきます。

 【プログラム】

・自然と暮らし~雲越家古民家見学~ 30分

・自然と仕事~茅刈り体験~ 70分

・自然を感じる~観察・遊び・ヒーリング~ 140分

 <準備>

 前日の10月24日、インストラクターは、上ノ原に集まり子どもたちを迎える準備をします。まず、事前に伝えていたインストラクター心得の捉え方のポイントを、作成者藤岡から解説し、意図を共有しました。その後、散策しながら枯れ木撤去や、スズメバチが飛翔していないかの確認をしました。途中、目隠しトレイルのコースも選び、3ヶ所にロープを張りました。前日にインストラクターが下見をすることで、子どもたちにどこで何を伝えるか、プログラムの進め方を考えることができます。当日戸惑うことの無いよう、子どもたちが安全に自分を解放できるよう、綿密な打ち合わせを行っています。

 11月25日朝、五感植物観察から半年、子どもたちは、どんな成長をしているのでしょう。ドキドキしながら上ノ原で待っていると、中学1年生147名がやってきました。さあ、上ノ原茅場入会の森フィールドワークの始まりです。

 <自然と暮らし>

 国指定重要有形民俗文化財『雲越家住宅資料館』見学

豪雪に耐え厳しい山村生活を送っていた藤原の人々の歴史を、今現在も葺き替えられている茅葺き屋根の中、実際に使われていた生活用具に触れながら学びます。

 今年、古民家見学初の試みとして囲炉裏に火を焚きました。子どもたちは、それ急げと民家周辺で焚き木拾い。戻っては焚べ、またひとり戻ってきては焚べています。先人の生活の一部分を自ら楽しんでいる子どもたちの姿を見て、説明を担当した藤原若夫婦も嬉しい気持ちになったと話して下さいました。

子どもたちは、民家の中で火を焚くとどのように煙が昇り、天井に届くのか。この煙が、柱・梁・屋根に煤を纏わせ、防腐殺菌作用を働かせて日々暮らすことが丈夫な家に育て、家の安心安全を作っていくと直に感じたでしょうか。語りだけでは伝えきれない先人の知恵を体から学びました。

 <自然と仕事>

上ノ原入会地、秋の仕事のひとつ、茅刈りを体験します。先人たちは、茅刈りから一軒の家を葺くまで集落の共働としてきました。遊学の考え方のひとつに『他者と共感的世界の実感』があります。茅刈り仕事しかり、先人たちは、暮らしの中で遊学していたのです。

 さて、子どもたちはというと「もっと刈らないと縛れないんじゃない」「あっちのほうがよさそうだよ」「あれ?刈れないんだけど、どうやってるの?」と、クラスメイトと共働しているではありませんか。自ら他者と共感的世界を築いています。こういった経験が、現代の子どもたちに不足していると、茅刈りをしている姿を見ていて感じます。

 なぜそう感じるのでしょう。殆どの子が、鎌でススキを叩いています。『鎌は引くから刈れる』実演しながら言葉でも伝えますが、鎌を引いているつもりなのでしょう。けれども、叩いているのです。普段の学習スタイルが、文字・写真・映像といった、二次元で構成されている中、急に『見て習え・体で習え』と、リアリティを求められてもどうしたら良いか分からないのだと思いました。それでも子どもたちは、茅刈りを楽しんでいました。「刈っていたら穂が舞ってキラキラ綺麗だった。」「鎌を研ぐシャッシャッシャの音が気持ちよかった。」と、教えてくれました。

 <自然を感じる>

 『感じる』には、意識を解放することが鍵となります。子どもたちに「今から自然を感じましょう」と言葉だけで伝えても、『やっているつもり』になってしまうことが推測されました。そうならないよう、自然と意識を向けていけるプロセスを踏み、ワークを行いました。

 【プロセス】

  ①    導入=人を感じる

・自分を感じる(呼吸 心音)

・相手を感じる(二人組背中合わせ)

・相手との関わりを感じる(押す もたれる)

    散策

・自分の暮らす環境と上ノ原の環境を比較

・入会地の活用、持続可能な資源

・水はどこから来るのか 水源の森

     自分と自然

・好きな自然物を探す

・選んだ自然物を感じる(呼吸 触感など)

・自分と自然物との関わりを感じる(押す もたれる)

     目隠しトレイル

樹木間をロープでつなぎ目隠しをして辿りゴールまで進む




 リアリティ溢れる体験を作り出すためには、インストラクターの心に余裕がないと作れません。そのために、プロセスにはたくさんの余白があります。インストラクターは、子どもたちがどのように感じているか、その時々の反応を敏感にキャッチします。そして、子どもたちとの関わりの中から伝えたいこと、気づいて欲しことを見出し、意識の解放を導きます。それでは、どう子どもたちが解放したのか、そのほんの一部をお伝えします。



木を味わう

 人を感じるワークをキハダ中心に囲んで行い、その後キハダに触れました。木肌に虫や菌を見つける子もいれば、舞い散る木の葉に気づき、木を見上げ手を高く伸ばし、葉を捕まえようと左右行ったり来たりしている子もいます。そういえば、人を感じるワークで心音を感じているときに、風で舞う木の葉の音が聞こえたと教えてくれた子がいました。そんな子どもたちの様子を見ながら、樹皮を少し剝いで内側の黄色を監察します。舐めてみたい希望者を募り「せーのっ!」で一斉に舐めました。「苦~」チャレンジした子のほとんどが渋っ面や苦笑いの中「おいしい」と、笑顔で30分位口に含んで味わっている子がいました。

 感動を伝える

 ゆるぶの森を抜け、草原に出た瞬間「わあ」と、歓声が上がりました。「この景色持って帰りたいなあ。そうだ。先生に撮って貰えばいいんだ。」男の子は、先生にお願いすることにしたようです。「先生、そこじゃありません。もっとこっち。そうそう。あの山のあの感じを入れてください。」カメラを覗き込みながら感動した景色を細かく伝えています。満足いく一枚が撮れてニコニコしていました。

秘めていたリアリティ

 目隠しトレイルが終わると、次はいつ遊べるかが気になる子どもたち。蔓が絡まる雑木林に着いたところで「ここで遊ぼう」と、遊びの時間を取ることにしました。すぐに子どもたちは、インストラクターが見える範囲で三々五々に散り、雑木林内は、ワイワイキャッキャと子どもたちの声で満ちていきました。




 「この子たちこんな風に笑うんだあ。」子どもたちを見守っていた先生の口から漏れました。「どうしました?」インストラクターが尋ねると、「学校では見たことがない顔で笑っているんです。こんないい顔初めてみました。」そう零す先生。自然が子どもたちを解放させ、秘めていたリアリティを引き出したのだと思いました。

 感覚の実行

 すべての行程が解放を生んだ分けではありません。散策中、山道で息が上がり苦しくなっても、決してマスクを外さない子が数人いました。マスク着用は任意ですが、酸素を取り込みたい自分の体のSOSに気づけない、もしくは思考がそうさせているのかもしれません。自分で判断できなくなっている子どもたちがいたことは事実です。この4年間でそうさせてしまったのは、社会そのものだと感じました。

 フィールドワークの最後に、わたしが担当させていただいた子どもたちへ、今日が特別な体験ではないというお話をしました。

 「始めに自分の体を使って相手を知りました。次にそれを気に入った自然と行いました。茅刈りも体を使って昔の人の仕事を知りました。今日行ったこと、そこから見えてくるもの、気づいたことすべてが繋がっています。今日、考え感じたことは、街に帰っても日々考えることの根っこ、基盤となることかと思います。気持ちがいいと感じる。それはなぜだろう?疲れたと感じる。それはなぜだろう?嫌だと感じる。それはなぜだろう?『なぜ』と感じること、疑問に持つことは知りたいという欲求の現れです。たくさん気づいて『なぜ』に出会ってください。そこから学んでいくことが、みんなひとりひとりの知識として実っていくのだと思っています。今日は、みんなと過ごせてとても楽しかったです。ありがとう。」

 一日の終わり、子どもたちに「今日どうだった?」と尋ねると、一人の女の子が叫びました。「全部楽しかった。全部綺麗だったあ。」また来年、どんな子どもたちに出会えるのでしょうか。



報告 藤岡和子