2013年5月21日火曜日

不発の茅場野焼き顛末記


不発の茅場野焼き顛末記

「燃やしていない」のに「燃え尽き症候群」

1.不発の経緯

  昨年の茅場野焼きは福島原発の放射能の影響もあって中止を余儀なくされました。
今年の茅場野焼きは雪の壁を防火帯として除雪により消雪した部分を焼く従来の「雪間を焼く方式」でなく、昨年から整備を進めてきた「防火帯方式」で実施することにしていました。
このこともあって、今年はリベンジとして、例年より3週間ほど遅らした5月11、12日のいずれかの日を実施日として一般参加者の募集をはじめ、様々な準備を進めてきました。

 56日、連休の最終日、現地を下見しました。ススキの乾燥具合は良好で、燃えすぎるほどの状態でしたが、夏と秋に刈り払った東側の共有林との防火帯は、茅場との境界が明瞭で可燃物も少なくなっている状態でした。また、今年、茅場野焼きするブロックCは、北側を作業道で隔離され、西側は十郎太沢となっています。加えて、このブロックは昨年、重点的に茅刈りが行われており全体的に可燃物は少ないところです。このことから、防火帯の手直しと、参加者で可燃物の除去作業を行うことで、延焼の危険性は低く、実施可能と判断しました。だだし、その日の乾燥、風などの気象条件によっては勇気ある撤退も視野に入れていました。

 実施日前日、510日、防火帯の手直しや道具類準備、現地最終確認等のため、塾長はじめ6人と津田、小幡両先生が現地入りしました。
上毛高原に着いた頃、役場の担当者から着信があり、「相談があるので上ノ原で会いたい」とのことでしたが、明日の打ち合わせだろうとあまり深く考えませんでした。
藤原集落に着き買い物をしていると、「今、上ノ原付近で山火事が起きているらしいが消防車は未だ来ていない」との情報、正直言って「タイミング悪いなー」と感じました。
上ノ原に向かい、その直下に着くと消防車が何台もあり、消防団があわただしく動いています。幸いにも火は消し止められていましたが、山火事の直後に遭遇したわけです。
手元の温湿度計で気温は30度前後、湿度は25%、なんとなく、プレッシャを感じながら準備進めているうち、役場の担当者が訪れて、「町内では、ここ1週間ほどで2,3件の山火事が起きており、今もこの直下で出火した状況下で住民の方の心配も増幅されている。
ついては、あくまでも相談ベースだが、野焼きの実施を再考いただけないか」とのこと。  相談とのことであるが実質的な中止要請である。 現在の気象条件では危険性は高いが明日の天気予報では曇りのち夜は雨とのことであり、危険性は低くなること、明日がだめなら、日曜日には降雨後の湿った状態での実施が可能であることを主張するも茅場野焼きの許可者である行政から暗に中止を要請されて強行するほどの絶対安全という自信と度胸はありません。結局、中止という苦渋の決断を全員で確認しました。

前日の上ノ原
防火帯の手直し



2.中止の影響
中止を決定してからが大変でした。
参加者へ「茅場野焼きの中止でも参加するかどうかの確認」「宿のキャンセル」「代替プログラム」などの問題をクリアしなければなりません。日帰り参加者には参加見合わせをお願いし、幸いに、宿泊参加者のうちキャンセルは4名のみ、39名が参加してくれることになりました。
問題は、代替プログラムです。 大まかには、初日は春の上ノ原の散策、2日目は、防火帯整備や除伐などの茅場の整備とすることにしたが詳細な内容までは詰められません。
 そうこうするうち、それまでに上ノ原周辺を散策していた、津田、小幡両先生が、散策の案内役と野焼きの効用などのパワーポイントによる解説を申し出ていただき一安心となりました。


3.茅場野焼きをやらないイベントの顛末
 5月11日、午前10時20分、参加者が上毛高原に集合し、上ノ原に向かう中で、野焼きの中止の経緯をかいつまんで説明はしましたがこの2日間をどのように過ごすのかみなさん一抹の不安があったでしょう。上ノ原に着いて、受付後、始まりの会のセレモニーと恒例の山ノ口開き神事を行った後、小雨の降る中を、小幡先生の解説で木馬道、十郎太沢の散策を行いました。
 季節は春、キクザキイチゲ、ヤマエンゴサク、ニリンソウが咲き、樹木もオオヤマザクラが咲き、カエデの芽吹きが美しい中を約1時間半の山歩きを楽しんでもらいました。
 その後は内野さん達が拵えた心づくしの味噌汁で、冷えた身体を温め、雨も強くなったことから宿で昼食ということにして本家に移動しました。
 昼食後、パワーポイントを使った津田先生の野焼きの科学と小幡先生の上ノ原の春の植物講座には参加者も満足していただいたようでおかげ様で充実したプログラムとなりました。        その後は温泉へのお誘いなどで過ごし、夕食そして交流会です。

                       小雨の中春の上ノ原散策プログラム

               本家で野焼きの科学と春の草花パワーポイント上映

交流会を行うころ、外はかなり強い雨で、参加者の皆さんは蛙の大合唱のゲコゲコに負けない上戸ぶりを発揮し午前様となるはしゃぎ過ぎの方もいたようです。近所の吉野屋さんの裏山の春の草花が見ごろでしたので希望者は散策することにしていましたことから明朝は大丈夫かなーと本気で心配しました。
 私は夜中の3時頃眼が覚めたので外を見ると満天の星空、絶好の野焼き日和になること間違いなしです。でもやりません。
 最終日は、茅場野焼きはやらないが来年度のリハーサルを兼ねた防火帯内の可燃物の除去をするグループ、防火帯を刈り払う刈り払い機使用グループ、侵入木の除伐のグループ、十郎太沢の源流遡行のグループに分けて行動してもらいました。ちなみに前夜の雨の後もあって野焼きには絶好の条件でした。

                  吉野屋さんの裏山のカタクリ群落
防火帯の可燃物除去

 それぞれ汗を流した作業も終わり、上毛高原への送迎が2往復する必要があることから早めの昼食を済ませて解散としました。

4.来年の茅場野焼き
 茅場野焼きの中止のお詫びも含めて参加者の皆さんに少しでも楽しんでいただくためにスタッフ一同精いっぱいのおもてなしをしたつもりですが不行き届きの面が多数あったことと思います。みなさん懲りずに来年の茅場野焼きへの参加をお待ちしております。

来年の茅場野焼きは、一部に従来の「雪間を焼く方式」に戻すような声もありますが
 私としては、今回、試行した防火帯整備を徹底し、実施日をもう1,2週間早くし、縞焼きを採用することで実施可能と考えています。それにしても焼かないのに燃え尽きた感じのする3日間でした。

  文責 草野

2 件のコメント:

  1. 山頂直前に引き返せるのが本当の登山家です。
    地元感情を最優先した、勇気ある決断、参加者(特に一般参加者)に一人ひとり説明して(キャンセル用なしの)参加可否を打診するなど、誠実な対応に感銘を受けました。
    こういうのを危機管理っていうんですね。

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  2. ありがたいお言葉有難うございます。
     小心者ですので、常に参加者の顔をうかがっての行動だったようです。
     最近、活動での自分自身が楽しめていないし心地よい汗もかけていないことに気付いていましてもうすこし気楽にやらねばとは思っていますが難しいようです。

      萌えたい爺(^◇^)

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