2019年5月27日月曜日

五感を使って樹木観察会 麗澤中1年生

 5月18日、五月晴れ、千葉県柏市にある麗澤学園中学校1年生の樹木観察会を行いました。今年の新1年生は、 4クラス、153名、入学後初めての中間テストを終わってホッとした気分の中行われました。
 塾のメンバーと協力いただくインストラクターは15名で、そのうち7名は1週間前にキャンパスを下見してどのようにインストラクションするかを検討してこの日に臨みました。
 麗澤中の樹木観察のインストラクションのポイントは「五感を使う」こと。「五感」とは「視覚」「味覚」「触覚」「嗅覚」「「聴覚」のことですが、これをキャンパスの樹木や自然観察をしながら体験させます。
 視覚は樹木、花、虫、土壌などを目でみることなのでこれが観察の大部分です。
味覚は、葉っぱや花蜜などを口に入れてみなければなりませんが今の子供たちには抵抗があります。もちろん、何でもかんでも口に入れさせられません。触覚は木の肌などに触れさせることですがこれもなぜか直ぐにはできない。嗅覚は、花や葉っぱの良い香りは問題ないがドクダミや土の臭いは躊躇しておっかなびっくりである。難しいのは聴覚、聞こうとすれば風にそよぐ葉の音、虫の羽音、鳥の声などであるがこれを聞き取れる子は感覚がすでに鋭いといってもいい。樹木の肌に耳をくっつけると
梢を渡る風の音(水があがる音ではない)が聞こえるはず、生徒達に、五感を使って
観察しながら「ほかの大事な感覚を使おう」と呼びかけてみました。
見たもの、きいたもの味わったものがなぜそうなのだろう。他との違いはなんだろう、これからどうなるのだろうと思いを巡らすことで五感で感じたものが生きてくる。見ていても見えない、聞いていても聞こえない状態のままにしない。
  五感を使った樹木観察をアカメガシワで再現してみましょう。


 アカメガシワ(写真)
 視覚 : ① 若い葉が赤い色している 
        ②よく見ると葉の上をアリがたむろしている
        ③葉柄が長い 
       これらから次のことを考えさせる
       ・赤いのはなぜ?
       ・赤い葉で光合成はできているか(少し上級)
       ・アリは何をしている?
       ・葉柄が長いことのメリットは?  
 味覚 : 若い葉を食べさせてみる(山菜のひとつ)
       ・味はないが柔らかい
 触覚 : 赤い葉を触らせる
       ・ザラザラした毛がある これは何? 何のためにある?
 聴覚 : 耳を澄ませて長い葉柄で揺れる葉の音を聞かせる
       ・サラサラという葉が揺れる音が聞こえる
       ・なぜ揺れる易いようにしている?
 嗅覚 : 葉っぱをもんで嗅がせる
       ・さわやかな香りがする。何の香り何だろう?
       
 五感を使う時、知覚、つまり「考えさせる」まで誘導してパイオニア樹種である
 アカメガシワの成長戦略を説明する。
 早く成長しなければならないパイオニア樹種にとっては葉は光合成をする大事なと 
 ころ、毛(星状毛)は若いおいしいをだべる虫や未だ未熟な若い葉の組織を強い紫 
 外線から守っている。
  葉に密線をもってアリを呼び寄せて、毛虫などを捕捉させている。
 長い葉柄は葉が重ならないで光を浴びられる。長い葉柄はは風に揺れやすく葉の 
 裏の二酸化炭素を入れ替えている。

 パイオニア樹種の生存戦略から森林遷移を説明することもできるし、葉を食器や食物をつつむのに使った人間の暮らしとの関係まで説明が可能である。
 
 麗澤学園のキャンパスは広大で東京ドームの10倍の広さのなかに多様でたくさんの樹木や草花、灌木から大木まであり自然豊か、ミニ森林もあり森林土壌が存在しミニ森林生態系も存在しています。したがって、微生物、土壌動物などの分解者、それを捕食する小動物、鳥類がいてミニ森林生態系が出来ている。蛇やトカゲも見られる、神宮の森のようにオオタカがいてもおかしくない。
朝下見の時に見た蛇「ヒカギリ」(体長20cmの大人)
かまれたらその日限りで死ぬというので名前がついたようだが毒蛇でない


動物や鳥や風が運んだと思われる樹木があちこちに見られ、稚樹のそばには母樹があり、自然のダイナミックで繊細な動きが感じられる。五感を使ってこのことが感じられるようになってほしい。でもことは簡単ではない、ニッケイを食べない、林の中に入りたがらない、虫に触れない、土壌を手に載せようとするとひっこめる子がいる。それでも段々と抵抗がなくなり進んで土に触り、葉っぱの分解の様子やそれを営む虫を見つけて手で慈しむ子が出てきたり、教室に帰り、振り返りの時間に観察で集めた葉っぱなどをイラスト風に張ったグループも出てきたのはうれしい。
教室での振り返り
 
 
生徒たちの作品
 
それぞれの葉の特徴をとらえた作品

 今年のキャンパスはエゴノキ、ホオノキなどの花が良く見えて、それを訪れる昆虫が多くてとても助かった。
エゴノキの清楚な花 たくさんのハナバチが訪花していた

めったに見られないホオノキの花(雌雄異熟の雄花の状態)
この付近には高貴な香りが漂う

 
種も大きなプロペラ状のメグスリノキやカエデ、イヌシデの種が見られて風で飛ぶ仕組みも説明しやすかった。その仕上げラワンの模型でのタネ飛ばしでありストリー性のあるインストラクションをすることが出来ました。
模型で風を使った種が飛ぶ様子を体験

 10月には紅葉の中でスケールが大きいみなかみ藤原の自然の中で、湧水や沢から水と森の関係や樹木、森林土壌、動物の存在痕跡から森の営みを体験してもらいます。

2019年5月5日日曜日

賑やかで充実した野焼で「平成」を締めくくり


2019年3月16日に上の原の茅場が文化庁の「ふるさと文化財の森」に認定された。これは、全国の文化財を修復するために必要な資材を安定的に供給するための制度で、木材や檜皮,茅,漆などの産地全国76カ所が設定されており、上ノ原を含む4カ所が新たに設定されている

新たなステータスを得た上ノ原で「令和」を目前にした429日、「平成」最後の野焼きが無事に終了した。

春になって、藤原は43日の4月としては記録的な53cmの積雪、10日前後にも低温と降雪により上ノ原の雪解けは進まなかった。固まった雪の表面を重機でかく乱することによりその後の気温の上昇で雪解けは急速に進む

10連休の真っ最中の427日、前日入りして、今年の野焼箇所のBブロック(町道と林道に囲まれた区画)や常設防火帯を見回ると、残雪は思ったより少なく野焼面は充分に確保できるが地面やススキの湿りが大きい。雪によるススキの倒伏状態もいつもより激しいようだ。それでも28日の好天の予報に乾燥が進むと判断して、仮設防火帯を縦に2本、横に1本作り6小区画に区分することにして、刈払機で地面をこするようにして刈り、可燃物を焼失面に掻き込み地面を露出させる作業にとりかかった。ほどなくすると雪が降りはじめ一次吹雪模様でうっすらと積雪する中、17時近く、誰かの「まだやるの」の声がかかるころ仮設防火帯がほぼ完成した。
 
「参加者の中に神官の方はいませんか~」 一年の安全と収穫を祈る山之口開
 
雪が舞う中の防火帯刈り
 

28日は、晴天、気温も高い。一度上ノ原に行き、準備作業をしているところに参加者の一人から「新幹線が動かない、復旧の見通しも立っていない」との緊急連絡、とりあえず、上毛高原に行くと、変電所の停電事故で運行停止、それからの小一時間は参加者に在来線に切り替えるように連絡するのにてんやわんや。

それでも12時半ごろには全員が揃い、はじまりの式、山の口開き、ミーティングを行い作業開始。作業は常設、仮設防火帯からの可燃物のかき込みとウツギなど除伐、ついでに遊ぼう(棒)パン用の棒の採取である。15時には作業もおわり、藤岡さんが午前中に仕込んだパン生地を棒に巻き付けて焼く、遊ぼうパンと岡田さんの野点を楽しんだ。
野焼きの前の作業 可燃物掻き寄せ

灌木除去

遊ぼう(棒)パンでもぐもぐタイム



今回の野焼きのゲストは多彩な顔触れと多くの初参加者で賑わった。そのなかの一人が塾メンバーの尾島さんがネパールですっかり気に入って招へいした好青年、トレッキングガイドのSubushさん。彼は、2週間の滞在中、桜の季節の会津やみなかみでアウトドア―を体験して、前日入りで野焼の作業を手伝ってもらった。勤勉な性格で力持ちで実によく働いてくれた。参加者も好感を持ってくれたようだ。

会津の桜を楽しんだスバスさん(右)

野焼きで太鼓を披露するスバスさん
 

国立環境研究所の西廣先生は二人の韓国からの留学生、茨城自然博物館の小幡さんは、同僚と森林総合研究所の研究者を同行、岐阜大の津田先生は大学院学生を同行、日本自然保護協会の朱宮さんは家族を同行、そのほか、昆虫と植物の相関関係を研究テーマにする大学院生もいてアカデミック色が強く出ていた。

初参加者も多く、中でも子供たちと、親と、夫婦で、家族一緒で参加したグループがほほえましい。一度参加した人がお友達を同行するケースも増えたのはとてもうれしい。北山さんのPRも効いて地元藤原の方の見学者も多くあった。
若者が薪割挑戦 なかなかの腰つき
 

今回は、毎日新聞の記者の方も取材に来ていただいて54日の朝刊の特集に掲載された。

その夜、宿泊参加者44名に、みなかみ役場高田課長ほか2人、共愛学園前橋国際大学の学生サークル藤原集落応援隊6人も加わった大人数で行われた交流会は、みなかみユネスコエコパーク、ふるさと文化財の森をメインテーマの大いに盛り上がった。

さて、29日、好天に恵まれ、ネパールの祈りの旗「タルチョ」がまるで黄色いハンカチを模したようにはためく中の野焼本番である。
 
タルチョ(馬風旗)がたなびき安全を祈る
 

「タルチョ(風馬旗)」とはチベットの五色の祈祷旗のことで、寺院や橋などによく飾られている。 青・白・赤・緑・黄の順に並んでいてそれぞれが天・風・火・水・地を表し、木版印刷により願い事や六字大明呪と呼ばれる仏教の呪文や、虎、麒麟、鳳凰、龍などが描かれていて経文が書かれている場合は風にはためく度に読経したことになる。今回は、尾島さんにネパールで直接購入してもらった。

地面やススキの湿り気は相変わらずだが幸いに気温も上昇気味、4者協議のGoサインも発せられ、着火隊、ジェットシュター隊、レーキ延焼防止隊が揃って、920分ごろ、カラマツ林に隣接して面積が一番広い小区画①から着火、林道わき上部を帯状に焼き、Aブロックへの延焼を防ぎ、常設防火帯、仮設防火帯に沿って同じく帯状に焼き、区画の斜面下真ん中あたりに火を着けて一気に燃やしていくつもりだったが、やはり湿り気が多く、火力が弱いので薄い落葉は焼けるがススキの稈(かん)が焼けずに残ってしまう、いつもの舞い上がるような炎も少ない。安全だが迫力がない、それでもススキの稈がはじける「パチパチ」という音が聞こえているので野焼の効果は十分にあるだろう。
 
安全な作業のためミーティング
 
 
帯状に焼失面を作る
 
湿っていて炎が上がらない

未黒野出現

 

②~⑥と縞焼き法で次々と焼いていき縞焼き法を実践確認する。出動してくれた消防団の放水の出番もなく11時には鎮火を確認して平成最後の野焼き気も無事に終わった。

この日は、支援をいただいているイオン環境財団の方が視察され、塾の活動と人脈を評価してもらうととともに藤原地域に触れあっていただいた。
 
イオン環境財団の方々
 

今年の野焼きを表現すると「ミディアム」であったものの、比較的広い面積(推定2.4ha)の野焼きを仮設防火帯と小区画縞焼き法の効果を実践で確認できたこと。 多様な参加者があって人のチカラが塾の運営のチカラとなることことを確信できたことである。

10連休の真っ最中にもかかわらず全面的な協力をいただいたみなかみ町役場、出動いただいた藤原消防団、大勢で押し寄せ、面倒なことをお願いした吉野屋さんに心から感謝いたします。

 

うえのはら お散歩手帳

上ノ原のガイドブック「うえのはら お散歩手帳」が出来ました。
これは、塾のフィールである上ノ原で楽しく過ごすための手がかりを集めたもので、周辺地図、野焼きなどの茅場の保全作業の解説、茅場・森林と人の暮らしの関係、四季折々の景色・草花、動物たちとの出会いを写真を豊富に使ったフィールドで使いやすい肩の凝らない全20ページのガイドブックです。下記にその一部を掲載しておきます。
 幹事の西村さんがお仕事の忙しい中、イオン環境財団の助成をいただいて精力的に編集してくれました。
おりしも、上ノ原の茅場が文化庁の「ふるさと文化財の森」に認定されたことでもあり、これでまた上ノ原がより親しみやすくなり、楽しく過ごせること請けいあです。
                                          草野記








 

上ノ原着手15年記念手拭「飲水思源」が出来ました

 

 2003年に旧水上町上ノ原町有林(もと入会地)の借受契約を結び、2004年に40年ぶりに野焼を復活させた上ノ原着手から2019年は15年目になります。それを記念して手拭を作成して会員に配布しました。
 渋い色合いの藍の下地に「飲水思源」の白抜の素敵な手拭です。
幹事の尾島さんのアイデア、デザインでさすが服飾の仕事人、センス抜群で、
今後も塾を盛り上げていこうという気持ちを固めるいいきっかけになるグッズとなりました
飾るもよし、首や頭につけて野良作業で使うもよし、どうぞお役立ください。
 なお在庫がありますので追加が欲しい方は申し出ください、一振り500円でお分けします。
                                           草野記