2020年10月5日月曜日

つくば山麓、「常陸風土記の丘」で茅葺体験をしてきました。

「茅葺き茅刈り体験研修・茅葺き講座2020」が10月3日、4日と2日間にわたり常陸風土記の丘(茨城県石岡市)にて開かれ、川端、松澤の両名が参加してきました。 主催者は青水と連携している日本茅葺文化協会、参加者は50名弱、そのほとんどが、古民家のオーナー、有機農家、茅葺職人志願者など、何らかの形での茅葺きステークホルダー、しかも若手が多い、これがまず驚きでした。有益な内容だったので、(聞き間違いのおそれも顧みず)要点をメモ、お伝えいたします。

石岡市は、筑波山の麓、自然環境に恵まれ、また昔から旗本領で豊なため、立派な民家が多い。今でも、旧やさと町を中心に茅葺民家が100棟も残っています。 30坪くらいの母屋と書院とからなり、代官クラスの格式の高いところでは、これに長屋門が加わる。屋敷の周囲に、風よけ火よけの生垣(いぐね)が設けられているのが特徴。

葺き方は、横の骨組みに縦の竹製垂木をわたし、3㎝程度の幅に割った竹の「桟(えつり、ゆずり?)」を裏側を上に、横にわたし、その上に茅を置いていく。その上に竹竿をわたし、荒縄で固定。こうした作業を何回かくりかえす。ここで使われる竹は、食用になる孟宗竹ではなく、マダケという種類のタケで、手に入りにくいとか。(竹のない地域は灌木を使用) 深く差し出された軒に付けられた縦縞の模様をつくることを軒つけ(トオシモノ)と言って、下地の白い層に稲ワラ、黒い層に煤で汚れた古茅、色の薄い層に新茅と、30センチくらいの層を3層から多いところだと8層葺く(層がつくられるのは軒の見える部分のみ)。最後に、上を竹で簀巻き状に固定(棟)、断面には棟飾り(キリトメ)をつけて完成。非常におしゃれなもので、この地方の特色とのことです。
当日のワークショップでは、茅ごしらえ、イボ結び(荒縄で土台に垂木を固定する)、カベ結び(桟や押さえを固定)、そして茅葺きの実務をさせていただきました。茅ごしらえは、長さ2メートル以上もある茅束を、ずらしたり、上下逆にしたり、切ったりして長さを整えること。屋根の上での作業効率のためで、この地方の特色とのことです。メインイベントの茅葺きは、楽しみな反面、高齢者2名が高所作業をして大丈夫かと危ぶまれましたが、現場は各時代の建物が展示されているところで、作業場所は縄文時代の竪穴住居なので、背が低く、これは杞憂でした。

1軒の家を葺くのに、最低1町歩(10000㎡=1ヘクタール)の茅場が必要、30年もてば30軒分という計算で、共同の結(ゆい)で維持管理にあたっていたそうです。 こうした茅場はなくなり、一方、霞ケ浦のヨシ原は、良質の茅場(シマガヤ=中空で小型)でしたが、飲料、工業用の水を得る目的で淡水化され、また護岸の埋め立てもあって、汚染も進み、衰退。また、昔から火入れにより炭素を固定、黒ぼく土を育ててきたが近隣の反対もあり野焼きが困難になっており、収量が半減したとのことです。

そういう経緯もあり、現在、近隣で一番の茅場は、なんと、つくばの高エネルギー加速器研究機構。 研究所を造成したあとの荒れ地10ヘクタールに茅が繁茂したのが発端で、毎年12月に刈り取りをしています。(茅刈りは、枯れてからやるのが鉄則で、そうすると炭素が根に固定され、栄養分の収奪がおこらない。冬の来るのが早い我々上ノ原と異なるところですね。) 実際刈ることができるのは3ヘクタールほどで、残りは(本来の研究所メンテのため)造園業者が刈り取ることになりますが、毎年全部刈るので雑木、雑草の侵入から免れて良質の茅場となっています。問題点は、性質上、火入れを出来ないことで、始めてからの15-6年で収量は半減、今、火入れに代わる(あるいは火入れをできるようにする?)次善策を研究しはじめたところとのことです。

お金の話ですが、茅の値段は、周囲2尺(60㎝)の縄で束ねた、直径20センチくらいの束で、生産者価格600円、末端価格1000円〜3000円。 (高エネルギー加速器研究機構で得られた茅は、地元茅葺き民家オーナーなどボランティアや、いわば結のメンバーによるものなので、安価に入手できています)

最後に、茅葺きに携わる人(ここでは茅手と言います)は、茅付記職人連合加盟者100名、ほか100名、合計200名くらい。昔から専業は無理で、副業としてやられてきたそうです。これからは、例えばIT従事者が副業で茅手になんて形も面白いのではとは、安藤邦廣筑波大名誉教授のお言葉でした。 最初に申したように、若い積極的な人が多く、新しい試みもされているようです。 指導員の一人の女性は、茨城県稲敷で、茅の育成をしているという。稲敷市(茨城県)の茅場のものを株分けし、石岡市八郷地区の休耕田に植え付ける方法で肥料はやらない、種からの育成も試行中。まだ、2-3年ですが、成果は上々とのこと。石岡市も職員を茅手として育成しているとか。働き方改革で、こういう「物好き(失礼)が増えてくると、将来は案外明るいかもしれません。

以上、松澤記

(ご興味のあるかた、「日本茅葺文化協会日本茅葺文化協会」http://www.kayabun.or.jp/ 「にほんの里100選/やさと茅葺き屋根保存会だより」http://yasatokayabuki.cocolog-nifty.com/blog/cat41476682/index.html「常陸風土記の丘と茅葺屋根について」http://business2.plala.or.jp/fudoki/08%E3%80%80kayabuki/report1.html をどうぞ御覧ください。)

1 件のコメント:

  1. 年齢層の高いお二人が参加したのですね。詳細な報告ありがとうございます。月2回くらい筑波に行っていますので、参加してみたいですね。

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