2022年10月9日日曜日

活動報告「茅穂採種とミズナラ林整備」2022年10月8日~9日

 今年も10月になって、これから秋本番、上ノ原茅場は紅葉と草紅葉になり収穫の時期を迎えます。その前に、ススキの穂(種)を採取する作業を活動として今年初めて実施しました。

 ことの発端は、さかのぼること3~4年前、ヘリコプターの会社に勤めていた時、災害地を一緒に回った緑化技術者の友人から航空緑化の資材として上ノ原のススキの種の採取の話があり、その友人が種苗会社の技術者を連れて上ノ原を訪れ、友人は一緒茅刈もしました。その後音沙汰がなかったのですが今年の8月中旬にメールで種採取の打診がありました。その訳は、かなり以前から生物多様性・生態系保全に影響する輸入種制限・国内種の使用遵守をかなり強く叫ばれていたですが国内種の確保がむつかしいことやコストの関係で輸入種に頼った施工が行われていました(輸入種と言って日本の種を中国などで栽培したものであり、海外で栽培することで現地のものと交雑して遺伝子の攪乱がすでに起こっていることも問題とされている)。それがコロナの影響で中国や東アジアなどとの往来がむつかしくなり、加えてアメリカの干ばつの影響で緑化植物の種子輸入が困難となったことで「日本でも種子を採る」という気運が高まったようです。このように施工地の近場で採取された種を使い生態系や生育に影響を及ぼさないようにすることを「郷土種緑化(植栽)」といいます。

「航空緑化」は、急峻、大規模・広範囲、道路がないなど機械や人力で緑化が困難な山腹崩壊地や山火事跡地をヘリコプターを使い緑化する方法で、バケットという大きなバケツのようなものに、ススキ、ヤシャブシ、ウツギなどの種子、肥料、接着剤、着色剤と植生基材(どろどろの液状のもの)を混合したものを散布して植生回復により土砂流出防止を図る工法で「国土強靭化」に貢献する災害復旧工事です。ススキは、貧栄養のやせ地でもいち早く発芽・生育し、土砂の移動を抑え、樹木の種子の生育基盤を作る大切な役目を果たします。

このような山腹崩壊地が航空緑化の対象地

ヘリに緑化資材を積み込む地上基地
左奥が緑化する崩壊地

ヘリにぶら下げたバケット

ススキは、風媒花で8月~9月にかけてその個体の2mぐらいの範囲で受粉し、その後結実しますが受粉率は約3割とされ、同じイネ科のイネは自家受粉するので受粉率は90%になるのに比べて自家受粉しないススキはかなり低いようです。結実した種は熟すると綿毛で風に乗って新天地に運ばれます。受粉・結実していないものは綿毛のままススキの穂に(枯れ尾花)状態で残ります。なので、枯れ尾花の種は「しいな」ということになります。

10月初めの上ノ原のススキ




熟したススキ

この風景がいい
9月初旬の活動の際に花が咲き穂が赤くなっているのを確認していますので10月の初旬なら熟しているだろうと今回の活動で採種を試みました。

ススキの種の付き具合

ススキの綿毛と種

試みという意味は、本格的には来年からになりますので、今年は採取時期・方法を検討するとともに1日どのくらい採種可能かの「行程調査」を行い、データをもとに1kg当たりの売り渡し価格(買い上げ価格)を設定(交渉)することにしました。1日目に、全員で茅穂を採取することにして、百均で買ったハサミで茅穂を刈り、腰に下げた土嚢袋に入れていきます。1時間もすると袋が重くなりました。同時に参加者の中から若・壮・老(男女)の代表を選人して1時間の採取量を測定しました。その結果、生総重量で5.34kg、平均1.07kgとなりました。

代表5人の収穫

茅刈でススキ全体を収穫の対象として見ていましたが、茅穂に注目するとまた違った風景が見えます。青空をバックに穂を見上げるようにチョキチョキ。その音もいい響きです。背の高いススキの時はすこし苦労しますがその代わりいい穂が取れます。穂の採取は道路から離れていて茅刈をしないところ、屋根茅に不向きな低いススキが生えているところを選びます。こうして11名が採った茅穂は約15kg、これは生重量ですので乾燥させると半分ぐらいになるでしょう。これを古民家に運び1昼夜乾燥させ、次の日に段ボールに詰めて種苗会社送りました。

古民家で乾燥


種苗会社からの連絡によると少し湿り気はあったが、種の付き具合も問題ないとのこと。採取時期、方法はこれで何とかなりそうです。上ノ原のススキの種が関東周辺の「郷土種」として崩壊地の復旧に貢献する目途がつきました。同時に今まで無価値だった茅穂が「茅場の恵み」となり、集落の現金収入ひいては茅場の保全に繋がりまそうです。4年前の種まきが芽を出しました。この後の生育に乞うご期待。

 2日目は、「ゆるぶの森」のミズナラ林整備を行いました。

北山塾長が「抜き切り」をする際に思った方向に安全に伐倒するために必要な、ロープ作業を指導しましたがなかなかうまくいきませんでした。その後、安全性確保、材の利用、将来の生育を考慮した選木の方法の指導、実際に手ノコを使い伐採する方法などを指導してもらいました。

手ノコ伐採
10月の好天に恵まれた新しい試みの作業もうまくいき、いよいよ10月末は茅刈です。

報告 草野 今田和子さんの写真を一部拝借しました。


 

2022年9月4日日曜日

「奥利根水源の森林(もり)」でリトリート -森の香りとクロモジの香りを楽しみました-2022年9月3日~4日

 

9月3日~4日「奥利根水源の森林でリトリート」を行いました。
奥利根水源の森林は、平成3年に当時の水上営林署(林野庁)が尾瀬の南東に位置する関東の奥入瀬と言われる照葉峡に近い武尊山自然休養林内に設定した低ダム群や魚道付き堰堤、開閉水門式堰堤などのモデル治山施設として森林の防災機能を強化しながら森林浴などのレクレーションを楽しめるよう管理道、駐車場、遊歩道、水遊び場、キャンプ場などを設置したレクレーション施設で、一帯は関東一の広大なブナ林となっています。

 参加者9名は、キャンプ場の近くの水遊び場の清流の音を聞きながら昼食をとりました。そのあと、ミーティングを行い水源の森林の施設や今日の予定を説明しました。                               

今日のプログラムは、この森の奥にある「田代湿原」までのトレッキングリトリートです。体力や体調から無理のできない2人は北山さんが車で管理道から先回りします。一行は、「森林浴の道」を200年生のブナの巨木群の中をフィトンチッドを浴びながら登り、管理道に合流したところで一休み、ここで、この森林が伐採が入っていてもちゃんと更新していることもあってブナ林などの天然林の伐採と更新(択伐)について説明しました。       そのあと、管理道を少し歩き、登山道に入ります。田代湿原へ登る登山道は木道が設置してあるもののぬかるみがあり滑りやすくなっているところが多くありました。ブナの巨木やシナノキ、ダケカンバの勇壮な自然林の中を歩く今回のプログラムが効いて前日まで多忙で酷使したからだと心が癒されていくのが分かります。途中には初秋らしく、名前もわからないキノコがたくさん生えていました。

森林浴の道のブナ大木








出発から1時間10分ほど、先行した3人が待っていた田代湿原の入り口にたどり着きました。合流した一行は、田代湿原の周遊道を歩いて景色を楽しみました。30年ほど前に来た時には遊歩道のそばまで水位があったように記憶していましたが今は一面が草原化、乾燥化が進んでいるようです。初夏にはヒメカイウの群落の花で有名なこの湿原がですがヒメカイウはどんな状態なのか心配されます。






田代湿原


田代湿原のリンドウ💛


この日は曇天でしたが雨に降られることもなく終了し、17時半には宿の並木山荘に到着しました。

 その夜の車座講座は急遽、草野が「ブナという樹木の特性」とこれまで見た各地のブナ林を話題としました。

2日目 夜はかなり激しい雨が降りましたが、朝から青空がでる好天気です。まず、柳沼さんの指導でリトリートプログラムにそった準備体操をしたあと「ゆるぶの森」を歩きオオバクロモジを採取します。採ったクロモジの葉をもぎ、小枝を短く切り、蒸留装置で蒸留してエキスを抽出します。

ススキの花が咲いて花粉が飛び始めた


ススキの花


始まりはリトリートで

採取したクロモジ

クロモジの葉

蒸留装置


蒸留後のクロモジ


スプレー小瓶に小分けしてお土産

蒸留装置の熱源は達磨ストーブ、冷却水は十郎太沢の湧水です。

約1時間で5リットルほど取れました。これをスプレー付き小瓶に分けて参加者はお土産としてお持ちかえり。スプレーすると周囲にすごく良い香りがします。香りのお土産とは気が利いています。切った小枝を湧水で煎じたクロモジ茶も木の香りがしておいしいものができました。

この時季の上ノ原は夏から秋の花が咲いています。写真を揚げておきます。

ハギ


ツリガネニンジン

オオヤマホクチ

シシウド

ウドの花

オミナエシ

前回の活動で挿した池の周りの挿し木は、ヤナギの活着は悪く意外やタニウツギがほとんど活着していました。タニウツギの花に囲まれる池が出来そうです。

今回のプログラム1日目の森の香り、2日目のクロモジの香りと「香りの中でのリトリート」となりました。

 報告 草野









2022年7月17日日曜日

防火帯刈払いとビオトープ(池)の手入れ 2022年7月16日~17日

 7月16日~17日、戻り梅雨の中、防火帯整備を行いました。
この時季の活動は、雨でなければ炎天下の作業とあって例年参加人数は少数となります。
ところが、今回は17人がエントリー。直前で体調不良者が3人出て14人。それでも盛況でした。やはり、コロナ禍でも出かけたい。それも自然豊かで心身が癒されるところへ・・・という想いでしょう。
この時季のススキ


 初日の作業中は雨もなく、夕食後に降雨になったので楽しみにしていた蛍の光はか細かったのは残念でした。2日目は炎天下。作業終了後にスコールが来るという幸運に恵まれました。
 メインの作業は防火帯の刈り払い、エンジン付き刈り払い機5台に電動刈払機4台、それに日大水上演習林の職員の中澤さんが刈払機持ち込みで助っ人参加、計10台で常設防火帯と歩道を刈払いました。この作業は暑さの中のかなりの重労働ですが、皆さん楽しそうな作業ぶり、いい汗をかき、達成感に浸っていました。

 やりたくても体力的に
電動刈払機

刈り払いが出来ないグループは、前回造った池(名前はまだない)の周囲の植生を回復する目的で「柳」と「ウツギ」の枝を採って挿し穂をつくり、挿し木しました。挿し木はこの時季は適期、果たしてどの程度発根するかこの秋にはわかるでしょう。

 この日の宿は天然温泉風呂のあるロッジ「たかね」、汗をかいた身体を癒すことができました。
ヤナギの挿し穂とり

挿し木

挿し木


 降雨もあってホタル狩りは不発でしたが、藤岡和子さんの「野を食らう」と題した発達障害のある子供たちとの心温まる交流やパーマカルチャー体験学習を語っていただきました。青水でも彼女の素晴らしい取り組みを何とか応援できればいいのですが、今後の検討課題です。
 2日目は、炎天下でも夜の雨で快適な気温。昨日の残りの歩道の刈払いを3人にやってもらいました。
 「池の浚渫・池畔の整備」グループは池に膝まで入り、スコップを使い水深を深くして周囲を固める作業です。水温は12~13度でしょう。この暑さの中で気持ちよさそうでした。
池の浚渫



 そして、もう一組は、北山さんの案内で「ゆるぶの森」の中のシラカバの樹皮剥きです。
 立木に鉈で切り目を入れてそこから竹べらを使いぐるりと円周状に剥いていきます。この時季の樹木は水分が多いので良く剥けます。この樹皮の内皮は細く割き飾り小物などの細工に使われます。ポセット、バッグ、インテリア小物や網かごなどの細工もできるようです。ネットで実際の作品・商品を見ることができます。外皮は着火材に最適(杣人:そまびと)がたき火の着火の時に使います)。アイヌの人々はシラカバの樹皮でスリッパや長靴を作っていたようです。樺細工と言って秋田県の角館が有名ですがこの場合の樺はヤマザクラのことです。




さて、樹皮を剥かれたシラカバはどうなるのでしょう。
 樹皮とは幹の外側を覆っている部分で、樹体内部を外界から保護する形成層から外側の組織で肥大成長に伴い外側から順番に剥がれていきます。さらに樹皮は内樹皮と外樹皮に分かれます。内樹皮は形成層の細胞分裂でつくりだされた師部のことで生きた組織です。この外樹皮と師部の間に周皮はあります。シラカバやヤマザクラは最初の周皮が生き続け、肥大成長しても引き裂かれず細胞数を増やしたり、細胞を長く成長させて繊維が発達したような、この種類独特の樹皮となります。これが革細工に利用されるのです。
 シラカバの周皮は何層にもなっています。この日剥いた内皮は薄皮が重なっているようでした。形成層と師部を残せば樹木は枯れることはありません。形成層を剥いてしまうと枯れますのでこれを利用して立木のまま枯らす「巻枯らし(環状剝皮)」という技術があります。ただ、樹皮の樹体内部を虫、カビ、紫外線、寒暑、湿気などの外部から守るという役目が果たせなくなるので樹体は衰弱すると思われます。
 なので、シラカバの場合40年から50年ぐらいが寿命ですので枯れてもいいような老齢樹を剝皮の対象にするのは理にかなっています。今回の皮を剥いたシラカバはおそらく40年以上です。もちろん材は問題なく利用できます。「シラカバは死して皮を残す」ということです。
 うんちくが長くなりましたが、今回の活動は多岐にわたり充実していました。そして茅場には夏の花がたくさん咲いていましたので写真を載せておきます。

ヒメシジミは乱舞は見られませんでした。

楽しみしていたヤマユリは猿の被害で少ない



クマイチゴ


ヨツバヒヨドリ





ノアザミ


トリアシショウ


        
ウツボグサ

 
ヤマアジサイ(エゾアジサイ)






 
                                報告 草野