2015年4月20日月曜日

渡良瀬遊水地は「地域丸ごと博物館」!~ヨシ焼き見学と生きもの調査に参加して~




かねて念願の渡良瀬遊水地を、この春2回も訪ねることができた。最初は3月22日、遊水地利用組合連絡会などが中心になって行われたヨシ焼きの見学。(写真右)
二度目はそれから3週間後の4月12日。西村幹事と共に、渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会による湿地再生実験地「生きもの調査」に一般参加。(写真左下)いずれも、同協議会の猿山弘子事務局長ならびに川俣将世先生にお願いして、ご懇篤なるご案内ご指導を賜った。帰路、谷中湖の散策がてら湖北にひっそり佇む谷中村史跡を見学。(写真右下) 国策に翻弄された村民と田中正造翁の苦難苦汁を偲びつつ、福島原発事故の背景と現状に思いを馳せざるを得なかった。
遊水地は2012年、協議会の長年の努力が結実しラムサール条約登録湿地になった。その目的は足尾鉱毒事件の歴史的遺産たる遊水地を守りつつ、ゆたかな自然生態系を活かすこと。そのために、協議会は次なる活動目標としてエコミュージアム「自然と歴史の野外博物館」構想を提唱している。猿山先生たちは、何かと障害が多くまだまだ道半ばと仰っておられたが、小生は「訪問者の目線次第で、既に地域丸ごと博物館になっている」と実感した。同時に、当方より提案しご賛同いただいた「利根川流域コモンズ」交流活動が博物館構想の具体化にも資するのではないか、など愚考した次第。
今年のヨシ焼き見物者数は万単位と聞き及んだ。その一人でも多くに、火入れの目的、効用さらには地元や協議会の思いを理解し協働してもらう方策なども一緒に考えてみたいもの。
 「真の文明は 山を荒らさず川を荒らさず 村を破らず人を殺さざるべし」 田中正造翁の言葉を記して中間報告の筆をおきたい。                  (2015年4月13日、清水記)




2015年4月7日火曜日

第14回定期総会が開催されました


第14回「定期総会」開催報告

承認された新年度活動計画

 新幹事に西村会員

皆さまのお力添えによって発足14年を迎えることができた当塾は、去る4月4日に 、東京都渋谷区の環境パートナーシッププラザ・セミナースペースにおいて、第14回定期総会を開催いたしました。昨年の総会で新執行体制が誕生して1年が経過し、この間、草野塾長を中心に「継続は宝」との思いで、みなかみ町での活動の充実を図りつつ、運営基盤の強化を図ってきました。今回、幹事団の大枠は変わりませんでしたが、新幹事に若手の西村大志会員に就任いただき、さらなる活動の充実を図ることとしました。皆様方には森林塾青水の活動に、引き続きお力添えを賜りますようお願い申上げます。新年度の顧問及び幹事・オブザーバーは次の通りです。

 

 塾長

草野洋:全般統轄

塾頭

北山郁人*:全般統括補佐、みなかみ事務所長(地元・みなかみ町役場ならびに支援企業との連携窓口、古民家再生・活用、フットパス整備・活用、麗澤フィールドワーク など)

 幹事

浅川潔:事務局長(企画・予算統括、「総会」「幹事会」、草原サミット ほか)

稲貴夫:情報宣伝・啓発(「茅風」編集長、東京楽習会、総会/セミナー)

岡田伊佐子: 婦人部代表(自然ふれあい学習、東京楽習会、総会/セミナー)

高野史郎:学監(麗澤中「樹木観察会」「奥利根FW」、自然ふれあい学習)

古高利男:コラボ/自然観察会「のらえもん」、フィールド利用・交流促進、流域コモンズ

増井太樹:事業統括(流域コモンズ・連携促進、生き物調べ、モニタリング1000)

西村大志:事業統括補佐(流域コモンズ・連携促進、生き物調べ、モニタリング1000)

松澤英喜:事務局長補佐(発信活動促進、会員管理、HP・ブログメンテ、「茅風」編集、「総会」「幹事会」、助成事業 ほか)

吉野一幸*:地元代表(地元の活動参画推進、NPO奥利根ネットワーク、まちおこし委員会、古民家活用・交流促進、古道フットパスの活用、地域貢献プログラム)

米山正寛:コラボ/森林文化協会、発信活動拡充、流域コモンズ

 
監事

林部良治:会 計(年会費、経理統括)

 顧問

原剛、安楽勝彦、笹岡達男、滑志田隆、清水英毅

 

オブザーバー 相談役

木榑晴彦*:行政/みなかみ町役場窓口(観光課自然観光グループ)

林親男*:地元/「上ノ原運営協議会」窓口(藤原案内人クラブ)

川端英雄:発足時会員代表

*印はみなか町在住の役員です。

 

◆2015年度の主な活動計画・日程

総会では2014年度の事業報告並びに事業収支が承認されるともに、2015年度の事業計画並びに予算案が可決されました主な事業計画及び行事開催日は次の通りです。参加のご案内は、行事開催日の約一カ月前を目途にお送りいたしますので、ご予定を調節のうえ、ご参加をお願いたします。

 
活動日程はホームページに掲載しています。下記をクリックしてください。


◆会則(事務局住所)の改定

事務局(東京事務所)の住所変更に伴い、会則が改定されました。

新しい住所は、次の通りです。

千葉県浦安市高洲5-2-1-1011 コミュニティデザイン気付

                                                 報告 米山
 
                   掲載・文責 草野
                  
 
 

2015年4月6日月曜日

総会セミナー報告「ゆめは茅野を~琵琶湖の西の里山報告」


ゆめは茅野を~琵琶湖の西の里山報告」

           講師:海老沢秀夫氏(NPO法人麻生里山センター理事)

 

 講師は当塾の元幹事で、今は滋賀県琵琶湖西岸の高島市朽木地区で暮らしておられる。東京を離れてから2年間、地区の内外における活動の展開について、興味深い報告を受けた。

 

 

 朽木地区は、2005年に周辺の5町1村が合併して高島市となるまでは、朽木村という一つの自治体だった。車で琵琶湖まで約30分かかる山間の地であるが、若狭湾に面した福井県小浜市まで約45分、京都市街までは1時間半ほどの距離にある。かつては、若狭から京都まで荷を運んだ鯖街道の要衝として栄え、歴史上は海と山の文化が融合し合う地でもあった場所だ。

ここには、かつて講師が勤務していた朝日新聞社の森林環境基地「朝日の森」が設置されていた。基地の閉鎖に伴って市へ移管された森は現在、「森林公園・くつきの森」として市民に親しまれている。定年退職により東京での勤務を終えて朽木に帰った講師は、森の管理運営を市から委託された麻生里山センターの理事として、再びこの面積約150haの森を活動拠点とするようになった。

 朽木地区の植物相の特徴は、暖温帯と冷温帯の境界付近に位置するという立地から、日本海側と太平洋側の要素が入り混じった種の多様性の高さにある。ウラジロガシ、ヤブツバキ、モミなど暖かい地域の木と、ブナやシナノキ、ナナカマドなど寒い地域の木が一緒に生えている景観は、他の地域ではなかなか見られない。

かつては、こうした野山が薪炭林(カナギ山)、アカマツ林(マツ山)、スギ林(天然山)、肥料用採草地(ホトラ山)、ススキ草原(カヤバシ)といった用途ごとに場所を分けて利用されていた。くつきの森も、古い航空写真などを見ると、多くが草原として利用されていたようだ。やがて、草原や周辺農地にはスギが植林されるようになり、今では十分な手入れの行き届かないまま放置されたスギ人工林が目立つようになっている。くつきの森では、こうした人工林をもう一度コナラやクヌギの雑木林に、あるいは草原に戻すことを目標に、森の再生、利用にも取り組んでいるという。

ただ、全国的に問題となっているシカによる植物の食害は、こうした取り組みの阻害要因として無視できない状態にある。人工林の伐採跡地には、明るい環境を求める多くの植物が入ってくるが、食害を受けた結果として、シカが好まないアセビやワラビ、ススキなどの植物ばかりが残っている。本来豊かな植物相が成立する土地に、単調な植物相が現れてしまうのは、生態系被害と呼んでも間違いではないだろう。樹木も、明るい環境を好む陽樹の中でシカが食べない種類が優占的に繁茂しており、特に中国原産の外来種であるニワウルシが目立つようになっている。

こんな中で、講師の言葉を借りれば、地区の人々はみな今や「シカ戦争」に「徴兵」されている状態にある。被害対策として農地にフェンスを張るようになったが、資材は行政から提供されても設置や日常の管理は全て集落ごとにやらねばならない。講師が住む戸数10戸の小さな集落では、80歳代の古老を先頭に協力し合って作業を進めている。また、集落の各戸には組頭や井係、会計などの仕事が回ってくるほか、用水路の掃除や水道水源の管理なども協力して実施している。そんな中で、集落内の耕作放棄地を野焼きしたり、刈り取った茅を雪囲いや箒に利用したりと、新しい動きを演出することに、ちょっとした楽しみを感じているのが、講師の日常であるようだ。

 

このほか、2年前に東京から朽木まで中山道を歩いて戻った講師がこだわっているのが、各地に残された古い道をたどる活動である。NPOで働く仲間と結成した「朽木フットパス研究会」は、琵琶湖一周をはじめ、村内の古道や日本海側と太平洋側とを隔てる分水嶺の道の踏破などに挑戦を続けている。その延長線上の活動として、村内にある「信長の隠れ岩」など伝説の地を訪ねる散歩マップの整備にも乗り出したそうだ。さらには四国八十八カ所、熊野古道の巡礼も手掛け始めており、今後は韓国・済州島オルレ(「家に帰る細い道」の意味)のようなコースをめぐる海外遠征も目指すのだという。

「森林塾青水と藤原でやったことをなぞっているだけ」と謙遜して語った講師ではあったが、幅広く地域に貢献する活動を2年のうちに積み重ねてきた実践報告に、多くの参加者が驚きを覚えながら聞き入った。(まとめ・米山正寛)
 
                                             文責 草野