2025年7月7日月曜日

『茅風 Breeze from the field of thatch-grass 森林塾青水の20年 』

 

 森林塾青水が、利根川源流域の群馬県みなかみ町藤原の皆様と共に、上ノ原の野焼きを復活して20年。その活動の歩みをまとめた本が刊行しました。

 記念本作成への経緯 副塾長:藤岡 和子

2024年。10年前6人いた藤原の茅刈り職人は、受け継ぎ世代の渡辺勇三さんおひとりになりました。

藤原の茅刈りは、藤原だけの唯一無二の技。とも縛りの技を失いたくない。私には、水たまりのアメンボほどの波紋しか起こせないかもしれないけれど、これからも上ノ原入会地を繋いでいくためには、今が動く時だと強く思うようになっていました。そして、まずは多くの人に知ってもらうことと考え、作成したのが本書『茅風 森林塾青水の20年』です。

多くの方々が関わってきた上ノ原。万葉の世から続く上ノ原茅場を、万葉集のようにそこはかとなく綴ったこの本を読むと、自然環境を守ることは、専門家でなくとも誰でもが日々の暮らしの中で関わっていけることなのだと、感じていただけると思います。

  構成は、青水の会報「茅風」が掲載した写真と文章を中心に20年を辿っています。上ノ原に集う人々が流した感動の汗とともに一緒に体感しましょう。

この機会に是非お求めください。

 B5版カラー160

定価2500

 ○氏名・部数・送り先を明記の上、下記の何れかの方法で、森林塾青水事務局まで、お申込み下さい。

 メール:jimukyoku@commonf.net

 FAX:0445438898(青水事務局長 稲方)

 郵送:〒379-1721群馬県利根郡みなかみ町藤原3862-1 北山方

 ○記念本に請求書・支払い方法の案内を同封の上、お送りいたします。

 尚、送料は実費のご負担をいただきます。








  文書 副塾長 藤岡和子
  写真  草野

2025年6月2日月曜日

麗澤中学校樹木観察会 ―青水よりインストラクター13名が参加ー

 

5 24日土曜日、麗澤中学校1年生の樹木観察会 を中学校構内で行いました。この樹木観察会は学校 の「自分(ゆめ)プロジェクト」の一環で行われて いて、「自分自身を見つめ、自分自身を発見する」こ とがテーマになっています。森林塾青水がこの観察 会をお手伝いしてもう10年以上になります。今年は、 生徒165名、引率の先生11名、インストラクター13 名が参加しました。

麗澤学園は緑がいっぱい


 観察会は、「五感を使って感じる」「自分自身の気 づきを得る」ことをコンセプトにしています。樹木 の名前や自然の仕組みを知ることというよりも、あ くまでそれは題材にして、自分自身で観察したこと、 体験したことを大事にして、他の人と違ってもいい、 自分自身の感性や学びを持ち帰ってほしいと思って います。麗澤中学校の広い芝生広場で、そんな話を 生徒たちにもして、観察会スタートです。 生徒 1617 名のグループに先生とインストラク ターがついて、構内を回ります。観察会で扱う内容 はある程度は決めていて、樹木の生き方の特徴や工 夫について、例えば種子の散布方法や、樹木の成長 方法、周辺環境と の関係などについ て、構内の題材を 活用して観察・解 説していきます。 ただし、今年は年 輪を観察できる樹 木が少なく、ケヤ キの伐採断面を持 参しました。



ケヤキの材面を観察
地面を探索中


         インストラクターの 視点で見ていて印象的 なのは、生徒たちが思い もよらない行動、考え、 反応をすることです。例 えば、例年観察会で一番 盛り上がるのはヤブニ ッケイのにおいと味を 確かめてもらうところ なのですが、生徒たちに どんなにおい?どんな 味?と聞くと予想外の答えが返ってきます。近年多 いのは、バジルのにおい、次にシナモンのにおい。 今年は、バジルが多くてシナモンといった子はほと んどおらず、味についても、甘いといった子よりも からいといった子の方が多かったです。毎年やって いる身からすると、実際に味が変わっている気はし なくて、ニッキのような甘い味とすっとする香り、 という「答え」を一応持っているのですが、それを 「答え」として言うことはしません。あくまで参考 としてこういう風にも言われているよと伝えるくら いにして、自分の感性を大事にしてもらいます。 観察会の後は教室に戻ってまとめをします。

それぞれの体験や感じたことを模造紙に貼る


             
班ごとにまとめた「成果」を画面に投影して発表

        今年 度、例年とやり方を変えた点として、観察中にメモ 用紙を持たせないようにしていました。観察会の内 容を覚えているだろうかと少し不安もありましたが、 やってみるとそれは 杞憂だったことがわ かりました。むしろ、 メモがなかったこと で、植物の名前など の知識よりも、自分 たちが体験したこと や感じたことを自分 たちなりに整理した 発表が増えたように 思います。 クラスでの終わり のあいさつでは、今 日見た樹木や自然が 季節によって変わっ ていくことを気にし て見てみてほしいと 伝えました。1 回の 観察会で伝えられる 情報は少ないですが、 自分で観察して気づ く感性があれば、数 えきれないほどの発 班ごとにまとめた「成果」を画 面に投影して発表 見ができるでしょう。秋のみなかみフィールドワー クでも、たくさんの発見と素晴らしい体験をしても らうことを楽しみにしています。


報告 西村

2025年5月31日土曜日

活動報告 野を喰らう~山菜と草花の恵みにあふれる2日間~  2025年5月31日~6月1日

  野焼を終えひと月余りたちました。上ノ原は、命芽吹き賑やかに香り立つ季節を迎えました。植物たちは、次の世代につなぐため子孫を残すために、生き生きと養分を吸収し成長していきます。その命の一部をいただくプログラムです。

 なぜ山菜採りを年間プログラムに組み込んだのかというと、コロナ禍で野焼きを2年中止せざるをえなかったことと、再開後も悪天候続きで十分に焼けなかったことで、茅刈りでは雑草(ゴミ)と呼ばれる植物が増えてきたからです。梅雨に入る前、入会地で山菜を採り、食べることで夏に負けないからだをつくることは、屋根を葺き、家を守り、暮らしを次世代につないできた先人の日常でした。その当たり前を復活させること、この時期にススキ以外の草を採り活用することは、茅刈りの効率アップにもつながります。

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ワラビを採ろうとした矢先、ゴロゴロと雷が鳴りポツポツ雨も本降りになりました。一時車に戻り避難します。植物たちはというと、暗天にも負けず雨粒を纏い輝いていきます。雷が遠のいたところで、カッパを着て草原に出ました。いつまた雷が鳴るか分からない天気なので、作業は広範囲に広がらず、広場からカラマツ林までの上段で行いました。雨の中での作業となりましたが、13人でコンテナ山盛りいっぱいのワラビが採れました。

この時期の上ノ原茅場

雑草(ゴミ)の除去&ワラビの採取

 
採りたてのワラビ


=ワラビの処理は採ってすぐ行うべし=

15時、藤原の集会所『遊山館』に移動してワラビの処理を行います。ご指導いただくのは、3月の活動『雪原トレッキングとうどん打ち体験』でもお世話になった、並木山荘のおかみさんの小俣マチ子さんです。

灰汁抜き

重曹と木灰の2通り行いました。「重曹何g入れますか?」おかみさんに尋ねると「まあ入れてみて」と言いました。ワラビの収穫量や、その年の生育具合で重曹や木灰の分量は違ってくるのだそうです。長年毎年行っているおかみさんの経験がなせる技。ワラビにまんべんなくまぶしたところで、熱湯をヒタヒタまで注ぎ密閉します。10分後、食べてみて好みの味になっていたら、重曹や木灰を水で洗い流し、一晩流水に晒します。もちろん上ノ原まで運び、水守様が見守るなか十郎太沢の水に晒しました。

灰汁あく抜く


十郎太の清水で一晩晒す


ワラビの塩漬け

野菜を入手することが困難な、雪国の冬の保存食です。

まず、ワラビの根元を揃えて輪ゴムで直径10cmくらいの束にくくります。次に、蓋付きの平らな発砲スチロールの入れ物にビニール袋を入れます。ワラビの向きを揃えて並べ、一列並んだら塩を約500gまんべんなくのせます。その上に今度は逆さに並べていき、塩を約500gまんべんなくのせます。これを繰り返し、最後塩をで終えます。塩は2kg用意していました。「これじゃあ足らないね」とおかみさんの一言に、そんなに塩が必要なのかと、皆目を丸くします。副塾長が家に持ち帰って1kg追加しました。

ワラビの選別結束

塩をまぶす


  宿泊でお世話になったのは『ロッジたかね』温泉のお宿です。湯舟に浸かれば、雨に濡れ冷えたからだに、じんわり染み込み癒されていきました。夕食は、しし鍋や豚巻きなどお肉料理が並びました。その美味しさとボリュームにお腹いっぱいです。

 今回の車座講座は、副塾長藤岡 和子の暮らしの研究『野を喰らう』から野の花種別に仕込んだ酵素シロップの味比べをしました。何を試食させられるかと、みんなおっかなびっくり舐めています。タンポポが美味しかったという人、スイカズラが美味しかったという人、ハナダイコンが好みという人、人それぞれ感想が違い、虫によって食べる草が違うように人間も違うものだなあと感じます。一旦上がった雨もまた降りだしました。明日の天気はどうなるのでしょう。

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小雨降る朝になりました。効率を考え、作業を3班に分けることにしました。

・昼食の天婦羅用の野草摘み班

・侵入木及び草の伐採班

・ススキの生育に与える野焼き効果と雑草駆除効果検証班

 野焼きとススキ以外の草を抜くことが、どうススキの生育に効果が出るのかデータを集める1回目です。2m×2mを4分割。今年野焼きをしたところ、去年野焼きをしたところ、毎年野焼きをするところの3地点設置しました。この面積で十分なデータが取れるのか分かりませんが、今年の茅刈りまで月1回調査していきます。

野焼きの効果&雑草駆除効果試験地設置

プロットの様子


昨日と同じ雨降る中の作業になりましたが、雷雲は発生せずシトシト雨。薪炭林内まで足を運び、ヤマブドウの新芽を採集しました。各班作業に没頭しました。

  お昼の支度に遊山館に向かおうとすると「おや?」雨がやみ雲間から青空が覗いています。雨は、人が作業するにはいささか厄介ですが、植物たちには嬉しい雨。瑞々しい野草が摘めました。

自然からいただいた野草


ニリンソウ

天婦羅用に摘んだのは、ハンゴンソウ/アザミ/ヨモギ/ウド/フキの若葉/ヤマブドウの新芽/タンポポの花/7種。ご飯のお供にとノコンギクの醤油浸しも作りました。『ロッジたかね』で握っていただいたおにぎりと共に、参加者13人でわいわい野を喰らいました。

調理中

銀座の有名天ぷら屋より美味しかったと好評


報告・写真 副塾長 藤岡和子

 

 

2025年4月27日日曜日

BIG イベント !! 4月26日~27日 森林塾青水 20周年記念式典&野焼き

 【プロローグ】

馬県みなかみ町藤原上ノ原入会地で2004年、40年ぶりの野焼き復活から20年の節目の2024年。1年間の入会仕事を無事に終え、20周年式典を21年目の野焼きと共に開催しました。

私は、2014年夏の草刈りから関わり10年。今や副塾長(自称:青水のちんどん屋)に就任しています。

式典準備のため、幹事一同前日から藤原入り。講演会場入り口が寂しいので、ビビッと閃いたのが、
             

昨年作ったニュウ(乳)


昨年作ったニュウ()が上ノ原にある!杉の木から青っ葉、地面から蕗の薹、集落から桜の花を頂戴して生けました。夜も夜な夜な、明日の準打ち合わせ準備とです。



『ボッチ(茅束)生け花』


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私は、新幹線と在来線を利用する参加者のアテンドのため、マイクロバスに添乗しました。その中には、初代塾長清水さんと藤原の生き字引、林親男(ちかお)さんもいらっしゃいます。親男さんはご高齢のため、数年前から藤原を下り街で暮らしています。バスに乗った親男さんから、みなかみ語りが始まりました。

親雄さんから水上語り


古道の話。山の木を筏にして流した利根川の話。親男さんが指差す山の石で奈良俣ダムの石組みをした話。みなかみは、雪解けの水流を活かしてラフティングのメッカとなっているが、そのエネルギーは、水力発電にも使われていること。谷川岳を見ながら馬の背の話、雪解けてできる馬の姿を見て、春まきのタイミングを計っていたそう。

道中あちらこちらに、生活様式の変貌を語る歴史が、散りばめられていました。まさに自然と暮らしは一体でした。

 

「靴を取りに行きたいから、ちょっと家に寄ってくんねぇか?」

マイクロバスを親雄さんの自宅前に


それでマイクロバスを親男さんの自宅前に停めました。靴を取りに行っただけにしては遅いな?そう思った頃、戻って来たその手にアブラチャンのかんじき。

「いるか?」

なんと!!私に差し出しました。思いがけないプレゼント、親男ブランドのかんじき。ヤッター\(^o^)/来年の大幽トレッキングはこれで登ろう!!

用は済んだはずなのに、今度は庭に入って行きました。皆さんバスで待っているなか、親男さんが私を手招きします。

「金魚がいんだよ」

池を覗くと立派な金魚。親男さん曰く15匹。

「餌やっていいか。すぐ済む」

二度目の『すぐ済む』で餌やりを終え、漸くしてバスに戻った親男さんでした。

かんじきを頂き喜んでいると、親男さんが私に耳打ちします。

「大幽(洞窟)の氷筍って知ってるか?」

私が頷くと

「ありゃ~凄いだろ。あれは俺が見つけたんだ。初めて見た時は、そりゃあ、びっくりさ。2時間は動けんかった。」

親雄さんが最初に発見した大幽洞(洞窟)


初めての参加者も、きっと親男さんの虜になったことでしょう。ほんわか楽しい道中もここまで、上ノ原入会地に到着しました。

上ノ原に到着


さて、このビッグイベント。この1年草摘み欲を封印して準備に取り組んで参りました。熱意半端ないので、プロローグだけでこの長文です。()

 

【野焼き事前作業】

マイカー組も上ノ原入会地に集合し、明日の野焼きの準備をします。3日前上ノ原は、まだ雪に覆われていました。今年は、移住16年目の塾長も初めて経験する程の積雪量。久し振りに雪間の野焼きとなるとの見立てです。26日の雪の具合は、野焼き予定地に除雪機が入り、晴天による雪解けも相まって、予定のブロックの2/3は焼けそうです。

雪に覆われた上ノ原(3日前



 準備の要は、防火帯をしっかり作ること。安全な野焼きにするための鉄則です。今年は、雪間の野焼きになるので刈り払いはしません。スコップ隊が、焼きたい箇所に島状に残っている雪を、防火帯にしたい箇所、雪の解けているところに運んで、雪の防火帯を作りました。

スコップ隊が除雪で防火帯を作る

 レーキ隊は、夏に草を刈った防火帯の可燃物の除去を徹底して行いました。レーキの使い方にはもう一つ。3日前まで雪に覆われていた草原の湿った枯れ草は、雪の重みで地面にへばりつき、燃えにくい状態です。それを毛羽立たせて、燃えやすくする作業もしました。

レーキ隊がススキの毛羽立て



【野焼き復活21年目の点火式】

上ノ原では茅場11ha3分割して、3年周期で焼いています。今年は残雪のため、エリア1/3の内2/3程を焼きます。防火帯作りは例年より作業量が少なく、時間に余裕が出来ました。

上ノ原の野焼きは三分割3年周期が基本


そこで明日の練習も兼ねた20周年記念点火式(野焼き講習会)を行うことにしました。

着火は、初代塾長清水さんと二代目の草野さん。草野さんはしっかり清水さんのサポートにまわります。点火式で焼いた箇所は、広場の右の細長いエリア。焼け跡が、明日広場を焼く時の防火帯になります。「狭い帯状のエリアを丁寧にゆっくり焼くことで、隣接した広範囲を安全に焼くことが出来るんです。」と野焼き王子増井さん(年間30箇所以上の野焼き行脚時代を持つ)。前日夕方に上ノ原に降り立つと、一瞬で見極めた熟練の技!!さすが我が野焼きの師匠!

ジェットシューターを背負って指示する小幡さん



初代清水塾長と二代目草野塾長が点火式

点火式で焼いた歌手は、広場の右の細いエリア

 
長男を同行して久しぶりの上ノ原に立ちサポートしていただいた増井さん


昼食を食べ、鎮火確認をしっかり行い、式典会場に移動しました。

 

20周年行事プログラム】

 開会式

開会式 主催者挨拶北山塾長


  来賓挨拶

 

来賓挨拶 みなかみ町田村義和教育長

 みなかみ教育長来賓挨拶の後、私の番が来ました。人生初のプレゼンでしたが、始めの緊張はどこへやら、開き直って話せました。

私の番が終われば、後は素晴らしい話が続きます。

 報告会

 20年の振り返り』藤岡和子

 


 『上ノ原植物調査』小幡和男  (茨城県霞ヶ浦環境科学センター)

  


      

阿部賢一みなかみ町長 挨拶

   

 記念講演

 『流域コモンズという先見の知』西廣淳

 (国立環境研究所気候変動適応センター)




 シンポジウム

 『上ノ原の未来に向けて』




  コーディネーター 

   笹岡達男(全国草原再生ネットワーク理事)

  パネリスト

   朱宮丈晴(日本自然保護協会)

   町田守俊(町田工業社長)

   北山郁人(森林塾青水塾長) 

ナンバンギセルの花びらのヒダの話を、目を輝かせて語る小幡さん。ジャワ原人からネイチャーポジティブまで自然と人類の壮大な歴史を、青水の活動に当てはめて語る西廣さん。上ノ原の未来に向けて、登壇者各専門の視点から意見を出し合ったシンポジウム。3時間の式典は詰め込みすぎ感が半端ないですが、贅沢すぎるその濃さに頭一杯、胸一杯でした

 感謝の集い

草野前塾長の開会挨拶

林 親雄さんに感謝状贈呈

塾草創期の功労者木村伸介さんのお言葉と乾杯

懇親風景

安楽顧問の万歳三唱で締め


食事をしながら感謝の集い。そこで語り合いきれず、その後の各部屋での二次会で、車座談義に花が咲きました。

 

【山の口開け神事】

十二様に一年の入会仕事の無事を祈願します。北山塾長の祝詞の後、楽の奉納で唄わせていただきました。楽曲はカススアフリ族の歌で、ジャンベ(太鼓)は夫(貴司)です。

デュニヤマハタマ デュニヤマ

=和訳=

世界はひとつ ずっと 手を取り合っていこう

創始からいわれ続け守ってきた 地の神に感謝する心

何にでも自然界に叶わぬからこそ 共に生きること

と唄いました。

 

塾長の祝詞奏上

カススアフリ族の歌を奉楽

【野焼き】

「野焼きは陣取りゲームなんですよ」

息子を抱き、炎を読みながら呟いた師匠である増井さんの前を、ジェットシューターを背負い走る。

三年前に参加した女性から、「和子さんのように動けるには、どれくらい経験したんですか?」問われました。今年は着火でなく、水を背負うジェットシューターのみ。数えたら今年が7回目。女性が感じた私の『動き』は、経験回数は少ないけれど、一年目の2015年から火付け役に抜擢していただいた時から、その後3年間、火付け役とジェットシューターを兼任した年も、野焼き王子増井さんの側で一緒に動いたからこそ。問われなければ振り返ることのなかった気づきです。まだまだど素人ですが、野焼きレジェンド方の側で、これからも経験を積んでいきたい。

野焼き文化=火の文化が培ってきた生態系。季節仕事は1季逃すと365日後。式典での小幡さんの、上ノ原の植物の報告。西廣さんの、流域コモンズと火の文化の講演。茅場を一緒に守ってきた文化財の屋根を葺く町田工業社長の思い。そのお話を聞いた後の野焼き。一年後の重大さ、伝統を継承する大切さをひしひし感じました。

 

 

【増井さんと走り回りながら学んだ野焼きの至言。この時を経て、今の動きがある。】

「ジェットシューターは火を消すだけではないんです。炎をコントロールする。それが楽しいんです。」

「火を着ける。炎は広がる側から野焼きは炭化していく。」

「焼きたい方向にある程度炎が移ったら、焼かないエリア方向の。ほら、そこの炎ですね。消すんです。すると、こっちから風が吹いて焼きたい炎を助けるんです。」

 

「あそこが危険ですね。あの木に火が移ったら森まで燃やしかねない。そのために、手前のもさっとした、そこ。灌木がぱらついたところを一気に燃やしたい。」

「和子さんは、ここから、あっちに向かって、今までの感覚で着火して行って下さい。僕は、あそこまで行って、火を着けながら後から追いつきます。」

「僕が追いついたら、炎が高く揚がる前に急いで走りきります。」

「はい!走って!!」

走りきり、防火帯から炎を見る。

背後から冷たい風が吹いた。

「風を呼びました。これからです。」

風をうけ、一気に立ち上がった炎は、勢いをつけて枯れ野を焼いていく。煙は渦を巻き中心に集まり、天高く上がった。

そして鎮火 一瞬だった。

話だけでなく、予測を聞き、実際に行い、そして事象を体感する。この体感は忘れない。

増井さんの野焼きのやり方説明
















消防団のみなさん出動ありがとうございました



集合記念撮影
文 藤岡和子さんのFaceBook投稿より転載
写真 稲 貴夫さん提供