2011年1月31日月曜日

第10回沼田眞賞授賞式・記念講演会報告

日本自然保護協会(NACS-J)
第10回沼田眞賞授賞式・記念講演会


 ご承知の通り、森林塾青水はNACS-Jの本年度(第10回)沼田眞賞を受賞しました。「茅場の再生と活用による文化と生物の多様性保全」が授賞理由で、去る1月22日(土)の午後、東京都江東区の清澄庭園・大正記念館で授賞式と記念講演会が開催されました。約百名の来場があり、本会からも清水塾長はもちろんのこと、原、安楽、笹岡の各顧問をはじめ会員約20名が出席し、結成10年を経た青水にとって思い出に残る式典となりました。その概要を紹介します。
 授賞式ではNACS-Jの田畑理事長の挨拶に続いて、亀山選考委員長が選考理由を述べた後、沼田賞が授与されました。受章者は本会の他、佐々木克之氏、NPO法人「こんぶくろ池自然の森」の二団体・一個人で、清水塾長は壇上にて田畑理事長より、賞状と副賞のデジタルカメラの授与を受けました。


 続いての記念講演では、塾長が“「飲水思源」元・入会山の再生と活用‐活動の報告と今後の課題について‐”と題して、約一時間講演しました。


 塾長は青水の活動について、〈飲水思源〉〈入会〉〈草地・草原〉〈今日的利用〉〈流域コモンズ〉の五つのキイワードを提示し、フィールドである藤原の位置と環境を紹介した上で、10年にわたる茅場を中心にした活動について報告しました。そして、今日的課題である生物多様性の問題について、これまでの体験から、○命のつながりの多様性 ○人と自然のつながりの多様性 ○地域とのつながりの多様性 ○死なばもろともの世界 として捉えていることを披露しました。最後に、これからの10年に向けて、次世代の担い手の確保などの諸課題に触れ、さらに茅の利活用、都心・フィールド間の交通、事務局スタッフの拡充という具体的問題についても報告し、来場者に協力を呼びかけて講演を終えました。限られた時間の中であり、清水塾長が「語りそびれたこと」もありました。その部分については別項をご覧ください。 
 
他の受賞者の記念講演について、次に紹介します。佐々木克之氏は「河川から沿岸・干潟にいたる物質循環の研究と自然保護への貢献」が授賞理由です。佐々木氏は三河湾一色干潟での研究をもとに、干潟が有機物を分解し、窒素やリンを減らすことを量的に明らかにし、三番瀬の埋め立てや諫早湾の問題について重要な提言を行ってきました。講演では、シロザケとサクラマスの放流について、両者は生態が異なることから、ダムが建設されると、サクラマスは放流を続けても減少してしまうことや、浚渫土砂や産廃の埋め立てが沿岸漁業の衰退を招いていることに言及し、「持続的な開発」よりも「持続的な利用」が大切であるとする沼田眞さんの言葉を紹介し、講演を終えました。
 
NPO法人「こんぶくろ池自然の森」は「こんぶくろ池湿地の調査・保全活動を通じた自然博物公園の実現」が授賞理由です。森和成会長が「こんぶくろ池自然博物公園」の自然と保全活動、今後の課題について講演しました。「こんぶくろ池自然博物公園」は千葉県柏市にあり、広さは18.6ヘクタール。湧水による二つの池と里山を中心に、多様な動植物が生息しています。しかし、五年前までは大量のゴミが不法投棄され、人も寄りつかなかったということです。そんな状況から同法人の取り組みが始まり、今では産官学民の連携による公園整備め保全活動が取り組まれています。しかし課題はたくさんあり、今回の受章を契機に、さらに多くの人々に理解と協力を呼びかけていきたいとのことでした。
 
記念講演終了後は、主催者と授賞関係者との懇親会が開かれ、相互に交流を深める機会ともなりました。 (幹事 稲)

2011年1月27日木曜日

雪のアート作品:藤原は墨絵の世界でした

「沼田賞」受賞式の翌1月23日から2泊3日、雪の藤原で骨休めをしてきた。昼間はかんじき雪原トレッキング、あとは読書と温泉三昧。
宿をとった湯ノ小屋集落は海抜830~850㍍。もちろん、一面の銀世界。窓外の景色はまるで墨絵の世界。
貯木場跡の十二神社(山の神)の鳥居が、もう少しで雪に埋まる程度の積雪。
脇に立っている人物の身長からして、積雪は170~180㎝位か。
24日午前10時の気温はマイナス4度。さらさらの粉雪(パウダースノウ)が降りやんだ晴れ間、湯ノ小屋川の表情に思わず見惚れた。
天然自然の造形美というべきか。雪のアート作品に美の極致を見る思いだった。日のあたる雪原の斜面に目をやると、黒い点のようなものが蠢いていた。ルーペで覗いてみると、ほのかに緑かかった雪虫くん(?)
春とまちがえて、どこかの穴から這い出てきたのか。
日がな一日何もしないでも飽きることのない雪の藤原。明日の元気をいただいた。感謝。

2011.1.26(清水)

「沼田真賞」受賞記念講演で語りそびれたこと

-『上ノ原の善玉キーストーン種になります』宣言-

2011年1月22日、「日本自然保護協会沼田真賞」(第10回)を当塾が受賞することになった。「茅場という二次草原を文化と生物の多様性の両面から再評価し、流域ネットワークを通じて保全する先駆的・モデル的活動」との過分なるご評価。個人的にも大恩ある沼田先生。しかも、我が国における草地生態学の地平を切り拓いた先生の名を冠した賞を、ずばり草地再生というテーマでいただいた。二重の喜びにて、少しばかりはご恩返しが出来たかと真に嬉しいかぎりであった。
記念講演をやれといわれて驚いたが、ご恩返しのつもりで演題を「『飲水思源』元・入会山の再生と活用」とし、塾の活動実績ならびに課題の報告を申上げ、併せて今後のご指導ご支援をお願いした
キーワードを飲水思源、入会、草地・草原、今日的利用、流域コモンズの5つにして話した。初めてパワーポイントなる文明の利器を使ったせいか、力(りき!)が入りすぎて時間配分をミス。後半飛ばし過ぎて、大事なことを喋り漏らした。「我々は、少なくとも上ノ原というフイールドでは善玉キーストーン種としてあり続けたい」ということ。かつて里山において先人たちがそうであったように、ススキ草原とミズナラ二次林からなる上ノ原「入会の森」を賢く利用し、草木や動物たちにとっても住みよい生態系を保っていく。その要石になる、という覚悟だ。
その思いを込めた書初め
をせっかく持参したのに、我々の考える生物多様性の意味を述べただけで、この肝心の要石宣言をし損ねた。悔しいので、この場をかりてあらためて善玉キーストーン種宣言をさせていただく。人と生き物が入り会うコモンズ村ふじわら、万歳! 
2011.1.26(清水)