2015年7月13日月曜日

炎天下の防火帯刈払い、草花着花調査 ミッション終了

7月の定例活動は1112日に梅雨明けを思わせる高温・炎天下で行われました。

今回の作業は、動力刈払機による防火帯の刈払いと草原の草花の個体数と着花数調査に挑戦するプログラムでした。

 昨年から、一般参加者に刈り払い機を使う作業をしてもらっていますが、今年も初体験2名を含め6人で汗だくとなりながらの刈払いとなりました。

 午後1時、刈り払い機の特徴と安全作業などのミーティングを念入りに行ってから作業開始です。

 昨年の経験者は、慣れたもので機械を使う姿が様になっています。初体験者は、最初こそオッカナビックリでしたが、30分もするとコツもつかめたようで斜面がみるみる刈り取られていきます。 
カラマツ林に隣接している西側の防火帯は、傾斜も緩やかなところです。ここは、今年で4年目の刈払となり、ススキ主体の植生が衰退し、時期も少し早いため草丈も短く柔らかく演習の場として最適です。大汗をかきながら約1時間でこの斜面は終了しました。
刈り払い開始

初体験もすぐに慣れて

今年の新人カリジョ



 次の刈払い場所は、北側のミズナラ林に接し灌木や、切株、つるが多いためやや難儀するところです。ここでは、ベテラン組が山側を刈払い、時間をおいて横一列に刈りはらっていく方法を取りました。カエデ、タニウツギ、ヤマウルシにヤマブドウなどの木本が多い植生、刈刃にこれらが絡まりるうえ傾斜がきつく転石もあって能率が上がりません。2時間の作業で終わらず、1/3を残し本日の作業は午後4時過ぎに終了です。
 ここで毎年見かけるヤマユリが今年は見当たりませんでした。  
 
 この場所の残りと十郎太沢の防火帯は、2日目に二手に分かれて行ったところ涼しい時間帯であったこともあり、約1時間で終了しました。十郎太沢沿いの防火帯にはシオデがかなり生育しており、来年の山菜取りのために刈り残しておきました。
 草原を眺めると、刈払い跡が周りときれいに区別され、作業成果が一目瞭然、今年の参加者も達成感を実感していました。
シオデ発見
成果がわかりやすく達成感あり


 今年の防火帯刈払いは6台の機械がフル稼働し、炎天下にもかかわらず皆さん頑張っていただき、定例活動の中でミッション終了です。おかげで平日の臨時活動をしなくてよくなり助かりました。

 今回の宿泊は湯ノ小屋温泉の照葉荘です。大汗の疲れも温泉が吹き飛ばしてくれました。

 夕食後、西村会員の車座講座「上ノ原の植生調査の意義」が行われ、植生着花調査の意義や上ノ原の草花の紹介とともに植生調査を継続して行い、上ノ原の植生の生育の特徴が見えてくればどのように管理するかも見えてくるなどの貴重な示唆があり、参加者にわかりやすい講座となりました。
 この夜は、8時過ぎに前を流れる湯ノ小屋川の蛍の鑑賞のおまけつき、幻想的なひかりが疲れた体を癒してくれました。
 2日目は、皆さん5時に早起きして、三菱UFJ環境財団の水源の森林で探鳥会を行い、朝飯雨の仕事として県道の草刈りもやっていただき、早朝のならまた湖を訪れて宿に帰りました。
今年2回目の県道草刈奉仕

UFJ環境財団の森の近くのブナの種子

早朝のならまた湖

 早起きは清々しく、山並みに朝日が当たっていく輝く様子は太陽の光を待っていた自然の歓喜が聞こえるようで「希望」が湧いてくるような感覚になります。早起きは三文どころか値千金です。

****着花調査報告****

着花数調査では、今年は少し季節が遅く花が咲いていないものも多かったので、花にこだわらず識別しやすい植物(ノアザミ、ワラビ等)を調べることにしました。調査員4人で、事前に作っておいた6つの調査枠のうち、今年野焼きをしたところとしていないところを2つずつ、合計4つの枠で調査を行いました。暑い中で、茂ってきた草原の中に分け入っての作業でしたが、普段外からぼんやり見ているだけではわからない、草原での植物の生育状況をそれぞれ感じられたようでした。
調査結果は、厳密なものではありませんが、次の通りです。花の咲く植物については、今年野焼きをしたところにやや多かった植物もありましたが、地点ごとのばらつきも大きそうでした。ただ、今年野焼きをしていないところのうち、ススキの枯れ茎が分厚く積もっていたほうの調査枠では、明らかに種類、花数ともに少ないようでした。わかりやすい結果として出たのはワラビの個体数で、野焼きをした調査枠ではしていない調査枠の約3倍の個体数が確認されました(西村記)
 

ススキ草原に分け入って草花を調べます。

今回の活動には、埼玉から藤原に移住を希望しているNさんも一日体験として着花調査や散策をしてもらいました。ぜひとも仲間にしたい好青年でした。

Nさんのほかにも移住希望者の見学が2組、藤原に若者が増える予感がします。

北山さんがんばれ!!


                               文責 草野 

2015年7月7日火曜日

自分(ゆめ)プロジェクトのお手伝い  麗澤中一年生 奥利根水源の森林フィールド・ワーク


7月3日、廣池学園麗澤中一年生の奥利根水源の森林フィールド・ワーク(以下FW)を実施しました。

 このFWは、自分(ゆめ)プロジェクト(後述)の学習プログラムとして、5月にキャンパス内で行う樹木観察会とともに学校の依頼により当塾がお手伝いしているものです。

今年の一年生は4クラス8グループ148人、生徒たちは、前日2日に藤原ダムで首都圏の

水がめである奥利根地域にあるダムの役割や水没した集落などの話を地元の林親男さんから聞いた後、宿泊し2日目の上ノ原・森林散策、草木クラフトを体験して3日目にまとめをする2泊3日の日程です。

一方、受け入れ側の塾関係者は首都圏から7人、地元インストラクター9人、計16人が二人一組で1グループ14人~20人を受け持ちます。

地元インストラクター6名と首都圏インストラクター7名は、前日、青木沢集落~芦の田峠~平出集落の森林散策路のインストラクションポイントや危険箇所等を把握のため下見を行いました。
この後、首都圏インストラクターとIターンのIさんは、草木クラフトの茅編み材料となる茅をスグリ、切断して束にする作業を行いました。この作業が意外と大変で夜なべも覚悟しましたが何とか夕食までには終わりこれで準備は整いました。
 
安全と説明ポイントを下見

茅スグリ

出来上がった茅編み材料


 

当日は、やはり梅雨空、降雨も覚悟しなければならないような天気の中、9時の対面式後、草木クラフト、森林散策、草原散策、雲越家住宅、諏訪神社見学とそれぞれのグループごとに最初の課題から取り組み、全行程を終了したのは16時、この間、小雨程度の降雨はあったものの事故もなく無事に終了しました。
対面式
 

以下、私が担当したA組2班、5号車組のフィールド・ワークの様子です。

このグループが最初に取り組んだのは草木クラフトです。これは、岡田さんのアイデアと経験からプログラムに採用されたもので、昨年は4種類のメニューでしたが、今年は、ススキのミニすだれを作る「茅編み」と木の葉をアクリル絵の具でエコバックに染める「木の葉の模様染」です。茅編みの生徒たちは「習字の筆巻き」にするといって真剣に取り組み、出来栄えもよく、木の葉の模様染の生徒はメグスリノキ、コハウチワカエデ、シダなどデザインを考えながら取組み、世界に一つだけしかないマイバックが出来上がりました。
 
木の葉の模様染め

茅編み

シダの葉をデザイン
完成まじかの筆巻き


 

そのあと、バス移動で雲越家住宅を見学、茅屋根の特徴や雲越仙太郎さんの自給自足の暮らしぶりの説明を聞きましたが生徒たちには囲炉裏から上がる煙が目に染みたようです。

囲炉裏の煙が歓迎してくれた雲越家住宅



このあとの上ノ原草原では、ヤマウルシや蜂などについて注意を受けたあと、樹木や草原に住む動物や昆虫の話を聞きながら散策、ここでは小雨が降りましたが濡れることもなく約1時間の散策で草原の生物が豊富であることや草原を維持するための野焼きや茅刈作業について説明しました。

昼食後の諏訪神社は、時間の都合でバスの中から見て、屋根に使われている茅が上ノ原産であること、夏のお祭りは獅子舞神楽の奉納で賑わうことなどの説明になりました。

森林散策は、木沢集落を出発、集落、森林、畑がある風景の中で「森林のいろいろな働き」の説明を受けたあと武尊川に向かって散策をはじめました。途中、オニグルミの実がなっている姿を見て、落ちた殻からわかる二ホンリスやアカネズミの食べ方の違いのなどを解説しました。

水量も多く流れる武尊川に架かっている橋が少し傾いていたことから用心しながら一人ずつ渡り、その緊張が残っている間に、森に降った雨の行方、森林の水源涵養機能の説明をしました。
 
武尊川の橋
 

芦の田峠に向かう間は、あたらしい伐採・植林地があって林業のことを説明する絶好の場所です。伐採は悪いことでなく、適正に計画的に伐採して木材を利用しまた植林する循環が大事なことにふれました。。

芦の田峠の道祖神の前で、しばし休憩を取り、この間、尾島さんによる「森林は大気を守る」と題して「地球温暖化と森林」について約25分の緑陰講座が行われました。
 
緑陰講座
 

生徒たちにはすべてを理解することは無理かもしれませんが、今、世界的な問題でもあり自分たちの暮らしぶりに直結しニュースなどで頻繁に見聞きする話題として地球温暖化問題と森林の二酸化炭素吸収固定機能について解説しました。ここでは、その原動力である光合成をおこなっている実物の森林を見ながら聞くことの効果を考えて少し長く時間をとりました。

ここからの道は下り坂、足が早まりますが、途中には、森林土壌を学ぶには絶好のブナ林があります。前日仕掛けた紙コップの土壌生物トラップは残念ながらかかっていませんでした。このトラップは工夫の余地があるようです。ここでは、森林土壌の状態、色や手触り、においをかがせてキヤンパスの林との違いと土壌動物の話や森林土壌の特徴が水源涵養機能を高めていることを説明しました。


ブナ林では土壌の話を

途中にある、フジヅルのブランコ、炭窯、カラマツ・スギの人工林を見ながら平出集落に到着です。この間、2時間、ゴールに着きでホッとしたところで最後に、森林や草原で何を見たかを生徒たちに聞き、それぞれがあげたものを生産者、消費者(一次・二次)、分解者に分け、森林の動植物が豊かで、それぞれがつながって森林生態系を作っていることを説明してプログラムを締めくくりました。
 
フジヅルのブランコ
 
今年の生徒は、問いかけによく答えていましたが、全体的に声が小さい、もっと元気を出してほしいものです。また、一部の女子生徒と男子生徒4人はいつも固まって行動していましたが後ろのほうで聞いていることが多く、積極性が感じられなかったのは残念です。

麗澤学園中学の「自分プロジェクト」は、

・大きな志を以て真理を探究し、高い品格と深い英知を備えた人物

・自然の恵みと先人の恩恵に感謝し、万物を慈しみ育てる心を有する人物

・自ら進んで義務と責任を果たし、国際社会に貢献できる人物

の人物像を目指し、1年生から3年間を通した学習プログラムで、

・1年生は「自分と自然の関係を学ぶ、(樹木や森に学ぶ)」

・2年生は「自分と国家の関係を学ぶ(熊野、伊勢、奈良、京都などを訪ねる)」

・3年生は「自分と世界の関係を学ぶ(英国、ニュージランドなど海外訪問)」となっています。

生徒たち(子供たち)は未来からの留学生です。彼らの未来での存分の活躍を願って、塾としても、キャンパスでの樹木観察会とFWのプログラムに改良を加えながら対応しています。

対応いただいた地元および首都圏のインストラクターの皆さんに感謝申し上げます。

                                                    草野 記