2019年10月27日日曜日

上ノ原の広場の看板リニューアル

上ノ原の茅場の広場の看板を修復しました。
この看板は、上ノ原着手と同時に設置されたもので15年間広場で上ノ原を紹介し続け、時には積雪の深さの指標となりました。地元水上工房製で頑丈な作りですが15年もたつと塗料もあせて、屋根には腐れも出てきたことから塗りなおしと補修を水上工房にお願いしたところ、茅刈イベントの前に完成して、より凛々しくなって広場に戻ってきました。
 修復に要した費用は、会員の池田忠子様のご芳志を充てさせていただきました。
 池田様は、野焼きのころ「会のために自由に使って」と申し出て下さり、幹事会でどのように使うかを検討したところ、気になっていた看板の修復費用の一部に使わせてもらうことになりました。茅場らしい姿を取り戻した上ノ原の文字通りの看板娘としてこれからも見守っていくことでしょう。
 塾は皆様の温かいお心に助けられて15年間継続することができ、これからも活動を続けていきます。

化粧直しした看板娘
 
タルチョと飲水思源手拭と看板

                                         草野記
 


茅刈技術研修・茅葺き講座を開催

森林塾青水は、2003年、当時の水上町と無償借地契約を交わし2004年から「上ノ原茅場」の茅場再生作業に着手したので2019年は、ちょうど15年目となる。そして、折しも3月に文化庁の「ふるさと文化財の森」に指定された。これは、文化財建造物の保存修復のために必要な資材を安定的に供給することを目的とする取り組みであり。茅葺屋根の材料を供給してきた上ノ原は、それにふさわしい新たなステータスを得た。そこに一般社団法人日本茅葺文化協会からイベント共催の申し出があり、今年の茅刈は、この二つのことを記念して、品質向上・技術伝承を狙いに規模も大きくして「茅刈実技研修・茅葺き講座」と銘を打って令和元年10月19日、20日の両日に実施した。 
 例年ならば紅葉真っ盛りのはずであるが、今年の季節はかなり遅れて、シラカバが少しばかりの黄葉、オオヤマザクラが赤味を出している程度でカラマツもみどりであり。気候変動をもろに感じさせる茅場風景となっている。ススキは、尾花がそれなりのたれ具合であるが葉や茎はまだみどり色、刈った茅のクオリティーに影響することは確実である。

今年のこの時季の茅場風景、シラカバは黄葉

カセンソウがまだ咲いている

アケビもあり秋の様子も

風馬(祈祷)旗、タルチョを掲げて歓迎準備




 この日上ノ原に青水の募集に応じた参加者26名、茅葺文化協会の応募による参加者11名、みなかみ町鬼頭町長をはじめとする役場関係者、関東森林管理局赤谷ふれあい推進センターの佐藤所長、イオン環境財団、地元・町田工業茅刈衆約10名、総勢約50名が参集して、今にも振り出しそうな天候をにらみながら実施された。
みなかみ町長のあいさつ

 はじまりの式のあと、地元および町田工業の茅刈衆の指導のもと茅刈講習会を行う。
 今年は品質向上がテーマの一つであるので、束の大きさ、雑草を混ぜないこと、茅を使った伝統技術の結束、倒れないボッチの作り方をお手本も示しながらポイントを繰り返し丁寧に指導してもらった。
萬枝師匠の茅刈講習(倒れないボッチの作り方)

頼もしい師匠の笑顔


 そのあと、茅場の方々に散らばり指導を受けながらの茅刈を行う
深い茅の中で鎌の音が響く


雨は降りだすのを待ってくれているようで約2時間の作業を行い、休憩の合図で広場に集合してもらうと同時に降り出してそのままやむ気配がない。「この雨はやまないな」という雲越萬枝師匠の観天望気で作業中止を決断。少し早めに宿に引き上げる。
 夕食時の「ロッジとんち」の食堂はほぼ満杯、そのあとの車座講座(パネルディスカッション)「茅場と茅葺の現状と課題」と交流会の様子は稲さんの報告に譲るとしてこれまでにない有意義なものとなった。
 その夜は強い雨が降り続いたようであるが朝になるとあがり、6時半の雲越家での早朝講座(ワークショップ)「茅葺屋根の特徴と茅の使われ方」(稲さん報告)が終えて朝食のころは青空も見えるほど回復した。
 2日目は全員で茅刈であるが、昨日の講習を成果を試す「茅刈検定」の受験者10名を募集したところ6名が受検を申し出て、検定が始まった。
茅刈検定の受験者は飲水思源ハットを着用

鎌の音も検定の対象

若い茅葺職人も挑戦、見事茅刈士補に


 茅刈検定は青水独特の検定でこれまで4回ほど実施され7名の茅刈士補を輩出している。検定は基礎知識、安全作業、基礎技術、技術向上、技術志向の観点からの18のチェック事項が水準に達しているかどうかを1時間の作業で判定し、18項目達成で茅刈士、14項目以上で茅刈士補の称号が与えられる。今回は最高17項目、最低12項目でレベルが高く5名の方が茅刈士補に認定された。
 茅刈は、11時半まで行われ、バッサバッサの鎌の音、汗を拭き、時には腰を延ばし、ボッチに抱き付き縛るのに奮闘する姿が茅場のあちこちで見られた。概算であるが参加者が刈ったビッチ数は65ボッチとなった。
カヤボッチの立つ風景

自分のボッチの前で

物産館の出張販売


 参加者には刈った1ボッチに応じて「飲水思源地域通貨200ボッチ券」が配布され、藤原物産館の出張販売で地元のお米や野菜を買い求めていた。
 このあと、講評、振り返りを行い、今回の記念イベントを終了した。
 
このイベントではみなかみ町役場、日本茅葺文化協会、地元茅刈衆、町田工業の皆様に絶大なご協力をいただき成功裏に終了することができましたこと改めて御礼申し上げます。 
               写真の大部分は清水さんからの提供です。 
                           草野記
 

 
 

2019年10月5日土曜日

憧れのシオジ大木に逢えた


 群馬県上野村での森林セラピー体験に参加して是非とも見たい樹と訪れたい場所があった。 見たい木は「シオジ」。
 シオジは、モクセイ科 トネリコ属でアオダモやヤチダモの仲間である。
九州ではシオデと呼ばれ 漢字表記は 柾樹、 柾+〇(木偏に壽)
冷温帯の渓流沿、いわゆる渓畔林を構成する。本州四国に分布し群馬県利根村が北限、生育地としては秩父山地が有名であるが群馬県上野村北沢渓谷(国有林)のシオジ原生林は国の天然記念物、秩父は車で1時間程度なので上野村は秩父山地に接している。
 シオジは樹高が高く30m超となる。幹は通直で完満、直径1.5m以上 単幹性(株立ちしない)葉は奇数羽状複葉で小葉は79枚、雄株と両性株がある、翼を持った種子は風で飛ぶが遠くへは飛ばない、稚樹は耐陰性が強い、
 材は建築(建具 床柱)家具 テーブル バット 楽器 ピアノ外板 木工品(漆器)いわゆる銘木となる。

サワグルミ、カツラと混交する傾向がありアワブキ、フサザクラ、チドリノキが下木層にある林相となりスズタケは少なくなる。

これだけの予備知識を持って上野村神流川源流の中之沢へ。

 シオジは奥多摩などで幼木や幼齢木は見ているが大木にはこれまで出会えていない、前橋営林局(関東森林管理局)の勤務時代に上野村の国有林のシオジの大木の話を聞いて一度は見たい憧れの樹である。本当は北沢渓谷の原生林を見たかったが、片道3時間と聞けば二の足を踏んでしまう。

さて、中之沢のシオジ。落差20mのオボロカヤの滝の対岸に大木があった。対岸に渡るのは少し難儀だが、ここまで来てそばに行かないのは折角逢った愛しい人の体温を感じないで帰るようなもの。ガイドさんに許しをもらって大木のそばへ、
堂々たる風貌のシオジの大木
 
樹肌
 
触るとふかふかの苔に癒される
 樹高は35mを超し胸高直径も100cmはある。樹皮は浅黒く荒い。思った通りの樹であり胸がキューンとなりおもわず抱きついてしまった。株の周りをまわってみるとふかふかの良い土壌、これだけの樹高を支えるので根も深く広く張っているだろう。シオジと混交する樹も下木も地表植生も予備知識のとおりである。稚樹の発生も確認。葉っぱは高くてとても取れないが稚樹で確認、シオジに逢えて感激の森林セラピー体験。

 

 

そして行きたい(いかなければならない)場所は、日航機墜落事故の520人の犠牲者を祀る「慰霊の園」、
 
墓石に刻まれた520名の名前、事故の記録と当時を振り返るビデオを見ると今更ながらに悲しみが襲ってくる。この方々はまさかの突然の死に直面して何を思っただろう。この方々の生きたかったとの想いと、犠牲者の救助に奔走し、心から嘆き悲しみ、遺族を慰め、そして事故を繰り返してはならないとの上野村村民の想いがひしひしと伝わってくる。自分の生き方を見つめてしまう場所であった。

                                      草野記