2019年10月27日日曜日

茅刈技術研修・茅葺き講座を開催

森林塾青水は、2003年、当時の水上町と無償借地契約を交わし2004年から「上ノ原茅場」の茅場再生作業に着手したので2019年は、ちょうど15年目となる。そして、折しも3月に文化庁の「ふるさと文化財の森」に指定された。これは、文化財建造物の保存修復のために必要な資材を安定的に供給することを目的とする取り組みであり。茅葺屋根の材料を供給してきた上ノ原は、それにふさわしい新たなステータスを得た。そこに一般社団法人日本茅葺文化協会からイベント共催の申し出があり、今年の茅刈は、この二つのことを記念して、品質向上・技術伝承を狙いに規模も大きくして「茅刈実技研修・茅葺き講座」と銘を打って令和元年10月19日、20日の両日に実施した。 
 例年ならば紅葉真っ盛りのはずであるが、今年の季節はかなり遅れて、シラカバが少しばかりの黄葉、オオヤマザクラが赤味を出している程度でカラマツもみどりであり。気候変動をもろに感じさせる茅場風景となっている。ススキは、尾花がそれなりのたれ具合であるが葉や茎はまだみどり色、刈った茅のクオリティーに影響することは確実である。

今年のこの時季の茅場風景、シラカバは黄葉

カセンソウがまだ咲いている

アケビもあり秋の様子も

風馬(祈祷)旗、タルチョを掲げて歓迎準備




 この日上ノ原に青水の募集に応じた参加者26名、茅葺文化協会の応募による参加者11名、みなかみ町鬼頭町長をはじめとする役場関係者、関東森林管理局赤谷ふれあい推進センターの佐藤所長、イオン環境財団、地元・町田工業茅刈衆約10名、総勢約50名が参集して、今にも振り出しそうな天候をにらみながら実施された。
みなかみ町長のあいさつ

 はじまりの式のあと、地元および町田工業の茅刈衆の指導のもと茅刈講習会を行う。
 今年は品質向上がテーマの一つであるので、束の大きさ、雑草を混ぜないこと、茅を使った伝統技術の結束、倒れないボッチの作り方をお手本も示しながらポイントを繰り返し丁寧に指導してもらった。
萬枝師匠の茅刈講習(倒れないボッチの作り方)

頼もしい師匠の笑顔


 そのあと、茅場の方々に散らばり指導を受けながらの茅刈を行う
深い茅の中で鎌の音が響く


雨は降りだすのを待ってくれているようで約2時間の作業を行い、休憩の合図で広場に集合してもらうと同時に降り出してそのままやむ気配がない。「この雨はやまないな」という雲越萬枝師匠の観天望気で作業中止を決断。少し早めに宿に引き上げる。
 夕食時の「ロッジとんち」の食堂はほぼ満杯、そのあとの車座講座(パネルディスカッション)「茅場と茅葺の現状と課題」と交流会の様子は稲さんの報告に譲るとしてこれまでにない有意義なものとなった。
 その夜は強い雨が降り続いたようであるが朝になるとあがり、6時半の雲越家での早朝講座(ワークショップ)「茅葺屋根の特徴と茅の使われ方」(稲さん報告)が終えて朝食のころは青空も見えるほど回復した。
 2日目は全員で茅刈であるが、昨日の講習を成果を試す「茅刈検定」の受験者10名を募集したところ6名が受検を申し出て、検定が始まった。
茅刈検定の受験者は飲水思源ハットを着用

鎌の音も検定の対象

若い茅葺職人も挑戦、見事茅刈士補に


 茅刈検定は青水独特の検定でこれまで4回ほど実施され7名の茅刈士補を輩出している。検定は基礎知識、安全作業、基礎技術、技術向上、技術志向の観点からの18のチェック事項が水準に達しているかどうかを1時間の作業で判定し、18項目達成で茅刈士、14項目以上で茅刈士補の称号が与えられる。今回は最高17項目、最低12項目でレベルが高く5名の方が茅刈士補に認定された。
 茅刈は、11時半まで行われ、バッサバッサの鎌の音、汗を拭き、時には腰を延ばし、ボッチに抱き付き縛るのに奮闘する姿が茅場のあちこちで見られた。概算であるが参加者が刈ったビッチ数は65ボッチとなった。
カヤボッチの立つ風景

自分のボッチの前で

物産館の出張販売


 参加者には刈った1ボッチに応じて「飲水思源地域通貨200ボッチ券」が配布され、藤原物産館の出張販売で地元のお米や野菜を買い求めていた。
 このあと、講評、振り返りを行い、今回の記念イベントを終了した。
 
このイベントではみなかみ町役場、日本茅葺文化協会、地元茅刈衆、町田工業の皆様に絶大なご協力をいただき成功裏に終了することができましたこと改めて御礼申し上げます。 
               写真の大部分は清水さんからの提供です。 
                           草野記
 

 
 

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