2020年7月11日土曜日

7か月ぶりの上ノ原で防火帯整備&植物調査ほか



 自粛生活を強いられたコロナ禍、525日に緊急事態宣言が解除され、619日には、県外への移動自粛も解除になったことから、745日、昨年111617日の茅出し以来ご無沙汰していた藤原・上ノ原での活動を再開した。いつもの年であれば野焼で始まる活動が今年は防火帯の刈り払いとなってしまった。


 私は、3日に前日入りして北山さんとみなかみ町役場を訪問、鬼頭町長、宮崎副町長、金子生活水道課長、高橋環境政策室長と面談、塾長交代のあいさつと森林塾青水の最近の動きと課題について報告した。特に、ニホンジカが増えていることを受けて、町との連携のもと対策を行う必要があること、貴重な植物の保護について意見を交換した。


 そのあと、上ノ原に直行、夏の草原の風景と清々しい空気を味わうとコロナで縮こもっていた心と体が一辺に解放された。免疫力が蘇ったような気さえする、この日のために前倒しで仕事を処理し、休暇を取ってきた甲斐がある。これが上ノ原の魅力である。早速、草花とススキの生育状況を見て回った。両方とも順調で草花は昨秋より増えていることを確認、ヒメシジミもナワシロイチゴやアザミに群がっている、思わず「そんなに密になっていいの」とつぶやく・・・。上ノ原の自然は世間の禍をよそにいつもの通りの賑わいである。
この時季の茅場風景

 

 

前日入りで、参加者のためのある準備をしておくことを決めていた。それは今回が今年初めての作業であり、山之口始めの神事を行うので「茅の輪」を作って参加者とともに無病息災を祈ることである。茅の束を丸く繋いで円を作ればいいのだが「芯」が必要である、ホームセンターで園芸用の鉄製門型支柱を2本買い、ビニールパイプを切ってジョイントに使い円形にすることで簡単に作ることが出来た、茅束を括りつけ茅の輪が完成、十二様の前に設置して、明日からの作業が梅雨時であり雨は仕方がないが強く降られないように祈った。
 
出来上がった茅の輪
 
 
 土曜日朝のニュースで線状降水帯の発達でわが故郷の熊本芦北が大変な状況であることを知った。幸いに実家の無事が確認できたので参加者を迎えに出発。

 防火帯整備は機械を使い重労働であるので例年は参加者が少ない活動であるが、今回は会員限定でも15名にのぼり、再開を待ち焦がれての参加がわかる。今回の活動は、感染防止に配慮して除菌スプレーなどを準備、3密を避けて、乗車も定員の半分、宿にも一部屋の人数を配慮いただき、参加者には食事時の大声・大笑いの自粛をお願いして交流会も中止しなどの感染防止対策をとった。

 初日は、朝食時に雨が強くなったもののその後は時折の小雨、茅の輪をくぐっての山之口始めの神事を皮切りに防火帯刈り払い、植物調査を実施。
 
茅の輪くぐり

山之口始め神事

 

刈り払いは、沼田市在住の斎藤会員(茅刈士補)があらかじめ出役して刈払っていただいたおかげで全線を一日で完了。
 
防火帯刈り払い
 
 

植物調査は、36人で水飲み場からカラマツ林までの林道沿いの往復をラインサーベイ、対象はシンボル昆虫のヒメシジミ、外来種のヒメジオン、代表的な花のアザミの個体を数える、毎年同様な調査を継続している。今年は、ヒメシジミ257匹、ヒメジオン26個体、アザミ325個体であった。
植物調査
ヒメシジミのペア


植物調査
 
ノアザミ

もう一組の調査隊はよく似た植物の見分け方を現物と見比べながら学習してもらった。
 
作業が終わって
 
この日の宿は「ロッジたかね」源泉かけ流しの温泉付き民宿である。この日は日本自然保護協会の出島さん、萩原さん、群馬県林業試験場の主任研究員で獣医師の坂庭さんが日程を合わせて合流、夕食後、ニホンジカ対策講座を開催。自然保護協会は、「上ノ原のシカの誘因捕獲による低密度管理」についてレクチャー、坂庭さんはシカの生態や密度管理について学術的に解説され。参加者の質問に懇切丁寧に答えていただきとても有意義な講座となった。
上ノ原のシカ害(剝皮食害)
 
  2日目は、630分から早朝講座、宿のご主人の持山において北山さん達が自伐林業スキームで搬出路を開設したものを視察した。美しいブナ林やカラマツ林の中に縦横無尽に開設された搬出路は軽トラが走行できる搬出路だが遊歩道としての利用も可能で観光資源としても期待される。
美しいブナ林

ブナ大木

自伐林業の説明
 上ノ原での本日の作業は、萩原さんの指導のもと、シカを誘因するための3鉱塩を置く場所3ヶ所の決定、上ノ原のライブカメラの設置、よく似た植物の調査の継続である。

シカの誘因は、シカが好む鉱塩を地面において、それを撮影できるところにセンサーカメラを設置、シカが鉱塩がそこにあることを認知して足繁く通うようになったことがカメラで捉えられたら、くくり罠を仕掛けることになる。注意すべきは林縁部であること、獣道でないこと、罠の見回りに便利なことを考慮する必要がある、ほかの獣がかからないシカだけを狙う方法である。
 
シカ対策センサーカメラの設置

鉱塩の設置

鉱塩とセンサーカメラ

 
 この日、南側、中央部、北側の3ヶ所に設置した。
ライブカメラは会員の民宿吉野屋の主人(元電気工事職)吉野一幸さんが主体となって南側の茅場全体と谷川岳が臨める場所にあるスギの木に設置、ソーラパネルを電源に1時間ごとの静止画を送り、ホームページで見ることができる
http://www.commonf.net/


 
ライブカメラの設置
 

 早速、その日の10時からの画像が見られている。素晴らしい景色が毎日見られ、入込者の監視もできて貴重な動植物の保護にもつながるので北側にももう一台ほしくなった。
今回は、再び増え始めた東京及び近県の感染者の状況もあって気を使った活動となったが今後の活動もWithコロナを意識したあらゆる感染防止を伴った活動にならざるを得ない。
今回、久しぶりに2泊3日で森林・草原に親しんだ。2泊3日の森林浴をするとNK (ナチュラルキラー )活性が増強し免疫能が1か月間持続するとされているが、消化できなかった仕事の処理のため日曜日に仕事場に立ち寄って、帰宅が遅くなってしまったので効果は半減しただろう。
もったいない。
最後にこの時季の上ノ原の植物たちの賑わいの一部を紹介。
ナワシロイチゴとヒメシジミ
 
モミジイチゴ(紅葉苺:黄苺)
 

ヤマアジサイ

ホタルブクロ

クマイチゴ(熊苺)
トラノオ

ウワミズザクラ


 
                      文責 事務局長 草野
 

                       

1 件のコメント:

  1. 有難うございました。二度読ませていただきました。皆さんの楽しそうな様子が眼前に彷彿とします。

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