2024年6月20日木曜日

活動報告「森林整備でリトリート」

  6月の活動は「森林整備でリトリート」である。1516日、上ノ原で汗を流して心身ともにリフレッシュするプログラムに20名が参加しました。

今回の森林整備のメニューは、天然更新箇所の除伐。10年前に一斉皆伐した後に天然更新して藪状になった落葉広葉樹林の有用樹の育成を促すために不要な木を切除する作業です。

この報告は、事務局長の稲さんと一部別行動をとった草野の合作です。

この時季の上ノ原の風景

【リトリート】

まずは井上さんと柳沼さんのコーチングでスタート。「上ノ原入り会いの森という素晴らしい自然の中で日頃の心身の疲れをとりましょう。そして、この2日間の行動の中で意識してほしいといいながら渡された封筒には「お題」が入っていました。私への課題は「私の思い込みとは何か?」どうやら参加者全員の「お題」はそれぞれ違うようです。さすが最近、人間を研究しているという井上さん、何か心の中が見透かされたような的確な「お題」、皆さん困ったような顔をしながらも大切なことだと意識したようでした。

木陰でコーチング

お題

【森林整備】

リトリートによる導入が終わると、一同は森林整備の作業現場に向かいました。作業を行った場所は、草原に隣接する、かつては草原であった二次林を伐採すると、一旦草原に戻るのか否か、実際の遷移の状況を検証するため、増井元幹事がドクター論文の課題のために10年前に皆伐した試験エリア。その後、草原には戻らずに年毎に様々な樹種が生い茂ってきたため、今度は百年後の立派なミズナラ林を目指して、除伐作業を昨年から実施しています。

北山塾長は作業の前に除伐作業の目的を解説した上で、ウルシなどへの対処法、 ミズナラやクロモジ等の残すべき樹種について解説した上で、残してほしい樹木に赤リボンを結び付けて、目印としていきました。参加者は続いて、斜面を注意深く移動しながら、横に張り出した枝にブドウ蔓が絡まり合った形の悪い木など、それぞれが除伐の対象だと見定めた樹木をのこぎりで除伐していきました。

今回は子供に自然体験させる場所を探していたお父さんに付き添われた小学2年生の男の子が参加しました。ハードルが高いかと思われた今回の作業ですが大いに興味を示し、嬉々としながらのこぎりで樹木を伐採していました。

天然林除伐①
天然林除伐②

【希少種の手入れ】

この日は別動隊が希少種の手入れを行いました。希少種を特定して目印をつけ、周りのススキを切除して光が当たりやすいようにしていきます。一度に急激な変化を与えないようにするため5割程度を切除して1ヶ月後の7月の活動時にさらに調整することにしました。

希少種はどこだ


【「ゆるぶの森」散策】

2日目は除伐作業の前に、「ゆるぶの森」を散策する時間を設けました。今回は上ノ原が初体験の参加者も多く、ところどころ立ち止まりながら、食い入るように北山塾長の説明に耳を傾けていました。

「ゆるぶノ森」散策

【森林整備余話】

その後、1日目に引続き、除伐作業を実施しました。作業が終わって全体を見渡すと、ミズナラなど残すべき樹木の周囲が刈払われて、以前より明るくなりました 。除伐を継続することによる年ごとの遷り変り、そして五十年後、百年後のミズナラ林の姿を想像するだけでも、流した汗が快く感じられました。

 今回は千葉県鴨川で森林整備作業を行っている東京工業大学の学生5人が参加していました。普通の森林整備と違い、伐る木を自らの決断で選ぶという緊張が伴う初めての作業に最初は戸惑ったようでしたがこのような作業はなかなか経験できないことがわかったようでやりがいを感じたのか楽しそうな様子でした。

今回、この中に「ブナ」の若木が見つかりました。直径5cmぐらいで高さは3m~4m程度の将来性を感じる立派なブナです。このブナを見たときどこから来たのか疑問がわいてきました。①ネズミなどの小動物が運んで来たという説、どこかにまだ見ていないブナがあれば別ですがこの森の種をつけるブナのところまでかなり遠い。②落葉広葉樹林の中で細々と生きていたブナの苗が伐採を契機に旺盛に生育したという説 ③伐採する前の埋没種の発芽・育成説、さてどれだろう。この森はダイナミックに動いている。まだまだ「ゆるぶの森」の全容が見えていないのかも・・・。このほか今回は、ハリギリ(センノキ)、イヌエンジュ、アオダモなど有用な樹種を改めて確認しました。

 この作業ではどの木を残すか迷います。50年先100年先の姿を想像しながらするとやりやすいというか自分の決断が納得しやすい。このことは、私にとって「植林するとき50年後のこの山の姿を追い浮かべて植えなさい、そうすれば楽しいし、どこにどんな植え方をすればいいかが自ずとわかる」と先輩に教えられた山仕事の極意で、山仕事をする際の「思い込み(こだわり)」なのです。

「思い込み(こだわり)」はポジティブな「思い込み(こだわり)」とネガティブな「思い込み(こだわり)」があり、ネガティブな思い込みは行動を自縛して、他とのトラブルになりやすく迷惑を及ぼすがポジティブな思い込みは生き方や指標自分をとなり自分を鼓舞する。思い込みは決して悪いことばかりではないな、自分がそれをどう使うかであろうとリトリートのとのまとめの時に「お題」の回答が見つけられました。

リトリート終わりのコーチング

この時季の花 タニウツギ 
写真は清水さん、稲さんに提供いただきました。

                        報告:稲・草野


         

2024年6月1日土曜日

五感で植物観察レポート  千葉県麗澤中学校

森林塾青水は5月25日麗澤中学校1年生にキャンパス内で樹木観察会を行いました。以下のレポートはインストラクターの今田和子さんがFaceBookに投稿されたレポートです。
 児童たちの観察力が素晴らしくそのときの様子が生き生きと表現されています。草野

  

1年生の『ゆめプロジェクト』春のプログラム ”五感で植物を知ろう” のインストラクターとして、森林塾青水メンバーと有志13名で行ってきました。      お受験を突破した12歳~13歳。今年はどんな子どもたちと学べるのでしょう。

 ここからは、青水の幹事藤岡が担当したグループのレポートとなります。 我がグループ18人、広場でご対面。                              はい!この木を五感で感じてみよう! グループのシンボルツリーに到着するなり、葉っぱを採って嗅いでいる「うーん?」揉んでごらんとアドバイス。 「わぁ!サクラの香り~」 「いい匂い」 「食べていいですか~?」 噛って ぺっぺ  美味しい ごっくん  その様子を見て交雑したエドヒガンザクラだと伝える。  シンボルツリーは、遊歩道まで根を張り、タイルを押し上げ、ぼこぼこしている。幹から大分離れた根っこの証拠。 「えー!ここもサクラですか~!」        園路から外れた学校の裏手へ。そこは、朝、私が見つけたとっておきの教材。伐根された大木の下部が3つ転がっている場所。 固い木質の一部がパフパフのスポンジ状になっている。触って感じる箘の力。株の内部は空洞に。目で見る虫の力。株の裏にまわる。直根、髭根、根っこと根っこの間に石が挟まって。取れな~い!根っこの力。                                   【フカフカの土壌】 ヒノキ、スギ、サワラ、ツバキ、サカキ、ネズミモチ、ユズリハ、アオキ、ヤツデ、ハラン、リュウノヒゲ......。常緑の林の中へ。 カラカラ枯れ葉のパリパリパリ カラカラ枯れ枝ポキポキポキッ 一歩入った瞬間から分解のリズム さあ!枝を拾って土に刺してみよう! 「あれ?先生みたいに入らない?こっちに刺してみよう!」 僕は場所を変えて再チャレンジ 「うわぁ!!こんなに刺さったよ。」 何かに気づいた表情を浮かべた僕 「ここはさっきより微生物が沢山いるてことかぁ。」 目を輝かせて叫ぶ僕。 土壌動物が通る孔は、土の中の空気の通り道になる。空気が土壌に入ると、微生物が活発になり、有機物の分解が速くなる。                                    【学校の樹木から思い出す】 さあ校内を五感でどんどん知っていこう!アジサイは、葉が虫に喰われて葉脈しか残っていない。どうして?ナツツバキの蕾は、銀色ベルベットの宝石 年輪て何で出きるのかな? 樹皮って大切?要らない? 歩けば歩くほど 見て、嗅いで、聴いて、触って、味わって 五感を使えば使うほど なんで?なんで? 学校はなんでだらけだ~ トイレ休憩中の女子トークを盗み聞き。 「小さい頃、公園に赤い実がなる木があって、友達と食べてみたら甘くって、おいしかったから全部食べちゃたらさ。次の年、無くなっちゃったんだよね。全部食べちゃったからかな?」 みんなちがってみんないい。譲り合いの話をした直後の会話。頬がゆるむ。                                   2時間の植物観察も終わりに近づく。今日どうだった?聞いてみる。 「楽しかったー」 「すごく楽しかった~」 「楽しかったです。」 18人みんないい顔で答えてる。 いつもの授業の3倍の時間。よく集中力落ちなかったなぁ。リアル学びの大切さを実感する。教える側からの一方通行の学びでなく、問いかけて一緒に考えて 、新しい『なんだろう?』が生まれて また考える。 木の根っこで 箘の力 どこから分解されているのかに触れた。年輪を見て、どうして出きるのか考える。中が空洞なのに実をつけるオオバボダイジュを見て、樹皮の大切さを知った。イヌシデの若い種を2つで飛ばすか、1つで飛ばすか比べてみる。2つの方が鳥みたいだけど.... 答えは自分で これから学び取っていこう まだ若い知識の種を マンリョウのように熟していこう 今日の楽しいがきっと 原動力になる 今日の子どもたちに次会えるのは10 群馬県みなかみ町上ノ原入会地 今から楽しみ。

シンボルツリーを囲んで五感を働かす


倒木の根っこ 根の観察

生態系の一員、虫を発見

自作のイラストでクイズ

オオバボダイジュの花



木材腐朽菌のキノコ


生育する場所の違いを説明するイラスト

記憶に残ることをメモ(記録)


2024年5月13日月曜日

2024野焼き  -これまでの鬱憤を晴らすような大規模で迫力ある野焼き-

  森林塾青水の野焼きは従来から4月末に行われてきました。かつては残雪の白、炎の赤・オレンジ・黄色、灰色の煙、未黒野(すぐろの)黒が見られる雪国の遅い春の風物詩でした。            ところが年々積雪量が少なくなり周りに残雪のない野焼きとなって久しく。ここ最近は、2023年は野焼き講習会のみで本番は降雨のため中止、2022年は前日の雨(みぞれ)で野焼きはできたものの欲求不満の野焼き、2021,2020年はコロナ感染拡大で中止を余儀なくされ、4月27日、28日に好天に恵まれ4年ぶりの本格的な野焼きを行うことができました。

 この実施報告は、山の口開け、前々日の防火帯切り、前日の予行練習まで仕切った稲新事務局長、北山塾長を補佐し交流会・車座講座を仕切った藤岡和子副塾長、そして幹事として野焼きを堪能できた尾島幹事の報告と今年は前線を離れ後方支援にまわった草野がまとめを担当、清水、笹岡顧問が撮影した写真を拝借して編集した合作報告書です。(草野)

コロナ禍による3年間の中断を挟み、2年前から再開した上ノ原での野焼きですが、一昨年は野焼き当日は晴の予想でしたが、前日からの雨の影響が心配されました。そこで、地面に張り付いた茅をレーキで毛羽立てるなど、少しでも燃えやすくする対策を施して火を入れましたが、野焼きの効果については、あまり期待できない結果となりました。また昨年は、野焼き当日は雨が予想されたため、一日目に「野焼き講習会」として実施しましたが、やはり本番は雨で、計画していた茅場の野焼きは叶いませんでした。           

最近、茅の生育が雑草に負けている箇所がみられることもあり、本来の効果が期待できる野焼きの実施が、青水にとっての課題になっていました。そんな中、運を天に任せつつも、野焼きの予備日を設けた上で、事前準備にも万全を期して臨んだのが、今年の野焼きです。        

まず、藤岡和子、松澤、稲の幹事3名が、26日に上ノ原に前乗りし、午後から6ブロックに分かれた今回の火入れ予定地の周囲を刈払う作業に従事しました。予定地は、十郎太沢の東側で、全体の約三分の二にわたり、また茅が寝ているため、3人での作業量には限界がありますが、明日の作業がスムーズに行われることを念頭に、防火帯となる箇所を仮払い機で刈っていきました。

防火帯刈り払い


そして迎えた一日目の朝、3人の他に自伐林業を営む島袋さん、昨夜から途中車で仮泊して駆けつけた藤岡貴嗣新幹事も加わり、北山塾長以下6人でテントの設営や道具類の運搬など、参加者を迎える準備に取り掛かりました。

今回の参加者は、一日目33名、二日目40名。昼前から参加者が集まり始め、それぞれ受付、昼食を済ませたあと、最初に山の口開け神事を十二様の前で行いました。北山塾長が明日の野焼きをはじめ、一年間の作業の安全を祈って祝詞を奏上したあと、全員でお参りし、お供えしたお神酒を頂きました。

山の口開け神事


続いての始まりの式では、北山塾長に続いて、来賓のみなかみ町の阿部賢一町長が挨拶、青水の活動への期待の言葉が寄せられました。

阿部みなかみ町長の挨拶


続くオリエンテーションでは、今回の野焼きエリアと防火帯整備について説明があり、早速参加者は、手にレーキや熊手を持って作業に従事しました。

レーキで可燃物を寄せる


予行練習

3時に作業を切り上げ、クロモジ茶で喉を癒やしたあと、野焼き講習会を実施しました。これは、明日の本番に備えて、野焼きが初めての参加者にも、野焼きの手順やジェットシューターの使い方などを体験してもらうためのもので、広場の北側のエリアで行いました。

予行練習 小幡さんと北山塾長の野焼きコンビ


野焼きの熟練者である小幡和夫新会員が、火入れのポイントや道具の使い方などを解説、続いて、消火用の水タンクを積んだ軽トラとジェットシューター隊が配置に着いた後、バーナーで点火して行きました。講習会は特に問題なく終了。全員、明日の本番に期待を抱いて、一日目の上ノ原での作業を終えました。

また、この日は視察のために上ノ原を訪れていた(公財)社会貢献支援財団の黒川さんにも、初めての野焼きを体験頂くことが出来ました。(報告:稲貴夫事務局長)


気温20度オーバー、風弱し、これまでにない大面積を焼く

前々日と前日に4〜5m巾の防火帯を作り、茅場全体の2/3程を6区画に区切る

 司令は菅生沼などで野焼き経験豊富な小幡先生と北山塾長

ガスバーナーを持つ着火隊、ジェット・シューターを背負った消火隊が揃う

 勿論、みなかみ町藤原地区消防第4分団の消防ポンプ車と消防隊員も

焼くのは1区画ずつ、着火の基本は風下から、斜面上から

そこから区画の縁に沿って火付けスタート

火は徐々に燃え進み区画の中心に向かう、9時過ぎ、火入れスタート

私はまだ残っていた防火帯を作っていて、斜面上部から一番遠くに煙が昇るのを見る

順調に進み、しかも焼け残りなし、今までで最高の面積であるのに

私が関わり始めた十数年前は雪が残っていて、重機で雪をどかしてから雪間を焼いた

だから防火帯は不要だったが、雪の下だった茅は焼け残りもあった

温暖化を実感する。(報告:尾島キヨ子幹事)

 写真は一部説明は草野がつけました。

野焼き本番



煙の色から乾燥具合がわかる

残り火


 野焼き状況の詳細は藤岡和子副塾長がFaceBookに投稿されたので拝借して掲載します。写真は一部と説明は草野がつけました。

🔥野焼き~上ノ原入会地~🔥
野焼きは、草原維持の大切な里山生業のひとつ。戦後、高度成長とともに、衰退してきた入会地の里山文化と、生物多様性を取り戻し、次世代に繋いでいくには、、、。
『飲水思源=ゴクンと飲んだその水の源に思いを馳せる』
森林塾青水の活動に加わって早10年。ここまで、私が続けてこれたのは、『ご縁』と茅刈り仕事を知ったから。今亡き長老に習った10年前、ザッザと鎌鳴る長老の腰つきがかっこよくて、長老みたいに刈りたくて。それから毎年刈っているけど、長老には、まだまだ遠く、悔しくて、でも楽しいし、しつこく食らいついているだけなんだけど、、、。
話を野焼きに戻して
実は、5年ほどほぼ焼けてないんです。
2020年、21年新型コロナウイルスのパンデミックで中止。翌年、前日の豪雨の影響で、まだら焼き。昨年は、本番日がどしゃ降りで中止。無念の連続。昨秋の茅刈りでは、茅刈り職人萬枝さんもぼやくほど、ススキ以外の草が増えていました。
取り返せるか!!
上ノ原野焼きは、草原約12haを3分割し、1年1区画、3年で1周りで、焼いています。今年は、2年分の約8haを焼き払う計画を立てました。
4/26
私を含む3人が、事前準備防火帯草刈りのため現地入り。焼かずに積もった枯れ草、雪国ならでは倒れた草、侵入木の低灌木、夏の草刈りと違い至難の技。汗だくです。翌朝も朝からブン回しましたが、2年分の防火帯をみんなが集まる前までに、刈りきることはできませんでした。
4/27午後1時
入会地の仕事始め。十二様にご挨拶。塾長の祝詞が草原に渡り、山の口開け神事を恙無く執り行いました。
そして、野焼きの準備に戻ります。残りの防火帯草刈りの他、刈り草を燃焼帯に入れ込む作業を行います。山火事や、大事故に繋がらないようにするための大切な仕事です。あらかた終えたところで、練習を兼ねて小規模焼きました。
【野焼きの鉄則】
午前に焼く
気象の法則、午後風が強くなるから
4/28
野焼き本番。快晴です。地元消防団も到着し、火点け役4人、ジェットシューター10人、レイキ約20人役割分担。野焼きの指揮は、流域連携で交流のある茨城の小幡さんにお願いしました。約8haを6ブロックに分けて縞焼き開始。私は、火点け役の一人、夫は、ジェットシューターの一人として働きます。
数本の枯れ草に火を点ける
瞬く間に炎が走る
風を生み
炎と煙が時と場を譲りながらも共鳴する
ともに舞う
小幡さんの匠なちょっとした焼き技が光り、野焼きという広大な生業を成功に導いていく鍵となる過程を、火点け人として間近で感じられたこと。それはそれは、特別な時間でした。点から線となり面となる炎。熱風が肌を刺す。炎は、風を生み、生まれた風が炎を押し、立ち込める煙は、上昇気流にのり、天に昇る。炎もさることながら、煙も、末黒野も圧巻の景色を創りだすのです。
今、待ったなしの地球。急速な気候変動にどう立ち向かっていくか。質の良い茅の供給へ。生物多様な草原・薪炭林へ。再始動です。
野焼き前の上ノ原


縞焼き法


  

      
未黒野



子供たちと未黒野


 発足20年節目の野焼き本番前の宿の吉野屋における車座講座は、筑波大学大学院修士課程を、この3月に修了された飛詰峻氏の研究課題『茨城県つくば市の茅場におけるススキの現在量および質に関する研究』の発表です。飛詰氏と青水の出会いは、2021年9月に行われた草原サッミトで知った、和歌山大学の学生によるプロジェクト『むすび屋弥右エ門の茅葺き』の屋根を葺くススキの茅刈り指導としてお声がかかったことがきっかけです。この年の12月、青水有志6人が生石高原の茅刈りに出向いた時の、プロジェクトメンバーの一人でした。このプロジェクトに関わったことで、茅についてもっと知りたくなった飛詰氏は、翌年、和歌山大学を卒業後、筑波大学でススキ茅について研究を始めます。小貝川の野焼きで、流域連携している小幡和男氏(今年の野焼き指揮官)と、筑波大学は、強くつながりがあるようで、近年同大学研究者が度々上ノ原を訪れるようになっています。そしてまた、2021年の茅の嫁入り先『小さな地球ゆうぎつか茅葺き』で出会い、一昨年の茅刈り、昨年の野焼き茅刈りと参加してくれている、東工大学の学生とも飛詰氏は、繋がっていたのです。

 ブログで、車座講座の内容を筆者がお伝えしても、本人ではないため、薄っぺらなご報告になってしまいますので、割愛させていただきます。それよりも嬉しかったことは、この夜、いろいろな視点から茅を研究する学生が、複数大学から偶然集います。そして、彼らは、茅を介してすでに仲間であったのです。どうやらここでの話から、学校を超えた何かが始まりそうです。大変盛り上がった車座口座に懇親会。草原ネットワークは、人のネットワークでもあるのだと感じた夜です。

交流会


飛詰さんの車座講座


(報告:藤岡和子副塾長)

消防団も出動


延焼させない決意を背中で語る




今年の野焼き、これまでの鬱憤を晴らすかのような3ブロックローテションの2倍と規模も大きく、よく燃えてました。しかし、反省点もあります。                                 

 それは、規模を大きくするためには防火帯などの事前準備が必須ということです。幹事4名が前々日入りしましたが恒久防火帯の刈り払いを終わらせることが出来ず、かなりの重労働だったようです。参加者が到着してからの仮設防火帯(区画防火帯)は前日だけでは終わらず当日に持ち越しました。また、刈り払いの程度に疑問のあるところもありました。幸いに風も弱く、消防団の事前水まきや水タンクの設置でジェットシュターの水の補充も手際よく行われたので延焼などは起きませんでしたが、従来の規模と違う場合は事前に周知して前々日入りの人数を増やすなど規模なりの準備に万全を期すことが大事だと感じました。また、一部立木の枯れ枝に火が移りくすぶるところがあったので区画終了後の見回り隊の必要性を感じました。(報告:草野)

東工大塚本研究室提供のドローン撮影

燃える様子をドローン撮影(本当は動画ですがここでは静止画像)





 









   




 

2024年3月21日木曜日

雪原トレッキング 雪降る中 -今年も氷筍が我々をお出迎え-

 

2023年度最後のプログラム、雪原トレッキングを3月9、10日の両日、  会員、会友16名の参加のもとに実施しました。

『茅風』71号掲載の「藤原だより」の通り、今年は異常に雪が少ないのですが、3月に入ると一転して雪の日が続き、プログラムは2日間とも、雪が舞い散る中での活動でした。

やはり今年は雪が少ない

1日目、上ノ原の入口まで車で着いた一行は、スノーシューやカンジキを履いて、「メイプル・ウォーター」の採取口を取り付けておいたイタヤカエデの所まで歩き、タンクに溜まった樹液を採取しました。

一日目、雪の中でかんじき、スノーシューを装着

カエデ類は、氷点下でも細胞が凍結しないよう、夏の間に貯めたデンプンを糖分に変えて厳しい冬を乗り切りますが、雪解けの頃には春の芽吹きに備えて、盛んに大地から水を吸い上げるために、細胞内の樹液を導管に流しだします。そのため、この時期に木に穴を開け採取口を挿し込んでおくと、微量の糖分が溶けた樹液が採取できます。これを40分の1ほどまで煮詰めたのがメープルシロップです。

メイプル・ウォーターを採取したイタヤカエデ

 今回は条件が悪いのか採取量は少しだけでしたが、「ゆるぶの森」の豊かな恵みの一端に触れることができました。

その後、藤原スキー場に移動して、この夜、五年振りに開催される「藤原雪まつり」の会場を彩る雪灯りを設置する作業をお手伝い。バケツに雪を詰めて、雪原にひっくり返してバケツをはがせば、雪の円錐台の出来上がり。そこにスコップで穴をあけてランプを置けば、立派な雪灯りの出来上がりです。その中でも、藤岡和子会員制作の龍の雪像は中々の力作。

みんなでつくった雪灯り

会場入り口で出迎える龍の雪像

 その後、並木山荘に戻って夕食の後、雪まつりを見学するため再び藤原スキー場へ。久し振りに「GOROPIKA」のファイアーショーを堪能し、最後は雪原の夜空に打ち上がる大輪の花火を楽しみました。

 GOROPIKAの熱演
  

  二日目も天候は雪。車の屋根には、昨夜からの雪が積もっていました。

 大幽洞を目指す雪原トレッキングには12名が参加しました。

 宿からコースの入口まで車で移動し、スノーシューに履き替えた後、北山塾長をリーダーに、若手のメンバーが交代で新雪に覆われた雪原をラッセルしながら進みました。大幽洞を目指して、ゆっくりでも着実な歩みです。

大幽洞へは、ここからが本番です


大幽洞まで最後の登りをラッセル

大幽洞までもうすぐ

 

 出迎えてくれた氷筍は、今年は暖冬のためか幾分、細く小さめでしたが、洞窟の奥でキラキラ輝きながら青水の一行を歓迎してくれました。

氷筍が出迎えてくれた

奥の方には、結構できていました


 帰路は、最初の急坂を滑り降りた後は、往路で踏み固めて来た道を戻ったので、歩みはスムーズ。無事に、往路2時間、復路1時間の雪原トレッキングを終えることができました。

 (報告:稲)

 

一方、大幽洞トレッキングを棄権した残留組4人は藤原集落の雪の中の暮らしを見ようと師入、青木沢、湯の小屋の集落を尋ねました。いずれの集落も雪の中で眠ったように静まり返っていて、豪雪地帯の冬の暮らしの厳しさを実感しました。最後に湯の小屋温泉で凍れた身体を温めて宿に帰りました。

雪の中の青木沢集落

(報告:草野)