2021年12月23日木曜日

下流域部会活動報告:茅刈交流(生石高原・高野山)

 

 去る12月5日、草野事務局長以下森林塾青水の有志6名は、和歌山県・生石高原で行われた茅刈りイベントに参加し、主催者である「むすび屋弥右ヱ門茅葺きプロジェクト」のメンバーと交流の機会を得ました。茅刈りの他、世界遺産の視察等を通して学ぶことも多かったツアーのあらましを報告します。

1日目(12月3日)

一行は南海電鉄の橋本駅に集合し、レンタカーで高野山へと向かいました。平安時代はじめ、弘法大師空海は峰々に囲まれた海抜九百メートル、総面積三十三万坪の高野山に、信権密教の霊場を開きました。我々はまず、高野山真言宗の総本山である金剛峯寺を拝観、他に金堂などの伽藍や高野山の地主神を祀る御社(みやしろ)、空海の御廟である奥之院などを二時間ほどかけてめぐりました。

高野山金剛峰寺


金剛峰寺の庭園


三鈷の松

 2日目(12月4日)

 午前中、丹生都比売神社を参拝。神社のあるかつらぎ町天野は、十三年前に森林文化協会が実施した「にほんの里百選」選定地の一つ。神社では昇殿参拝の後、社務所で宮司の丹生晃市さんより興味深いお話を伺うことができました。

・丹生都比売神社の歴史は古く、『日本書紀』神功皇后紀に登場する紀伊國の天野祝(あまののはふり)が当社の神官であったこと。

・高野山はもともと丹生都比売神社の神領地で、空海を高野山に導いたのが祭神である丹生都比売大神であること。

・以来、同社は真言密教の守護神として位置付けられ、こうした神仏関係が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産に登録されたこと。

・楼門とともに重要文化財に指定されている本殿は、春日造りとしては日本最大であること。

話題は丹生都比売神社と高野山との深い関係から、杉の巨木が生い茂る境内林管理の問題まで及び、古代から現代に至る時代を越えたお話でした。

本殿鳥居と太鼓橋

本殿と後背林

高野山との関係をわかり易く説明いただいた丹生宮司さんと

 その後は生石高原への途中にあるリトリート施設、デュニヤマヒルへ。小高い丘の上に土や植物、石など自然の素材を使って建てたセルフビルドの施設が立ち並ぶ不思議な癒しの空間であり週末にはコンサートや演劇が催されているようです。             

そしていよいよ生石高原へ。                          

高野山や天野の里への道と同じく、曲がりくねった山道を上がって突然開けた山頂部が生石高原です。この日も「茅葺きプロジェクト」のメンバーは作業をしていたので、我々は頂からの風景を楽しんだ後に現場へ移動。プロジェクト取り纏め役の豊原さんや和歌山大学の学生さんと一緒に茅束を運び出しました。

生石高原風景


寒風が吹き寒かった

 

この日は紀美野町の農家民宿「四季の宿きみの」。移住組のリタイア夫婦が営んでいる宿で、夕食は山海の新鮮な素材を使った逸品。お酒も美味しくいただきました。

 3日目(12月5日)

三日目はいよいよ茅刈り本番。この日は地元ロータリークラブによる茅刈りを我々がお手伝いする形で実施。参加者は全部で三十数名。最初に草野事務局長が茅刈りのやり方を説明。その後、3班に別れそれぞれに2名のメンバーが付いて指導しながら茅刈りを進めました。

ここでは刈った茅は結束器を使って束ね、一束ごとにロープで結束するという方法であり、ボッチは作らないが、一束は上ノ原よりひとまわり大きい。3時頃に作業は終了し、この日の成果は66束。

和歌山ロータリークラブから大勢の参加者


茅刈指導


茅束

参加者一同


茅の結束

後片付けの後は、途中夕食の食材の買い出しをしてから、今日の宿であるは「志高庵」に移動。高志庵は豊原さんが代表をつとめる「古都里」が運営する古民家ゲストハウスで、「茅葺きプロジェクト」の活動拠点でもあります。

このプロジェクトは、四年前に和歌山大学の「わかやま未来学副専攻」プログラムから生まれたもの。これは県内企業やNPOなどと協働して、地域の課題に実践的に取り組む教育プログラムで、その目的は、過疎などの深刻な地域課題の中で、逆に豊かな自然環境と文化資源を活用して、「わかやまの未来を切り拓く若者」を育成すること。

その協働メンバーである豊原さんが学生と共に取り組む茅葺きプロジェクトの目下の目標は、志高庵のあるかつらぎ町志賀地区に、地域の魅力を結集、発信する茅葺き屋根のおむすび屋さんをつくることです。そして、その茅を生石高原から調達しながら、その美しい景観も守っていくことで、協働の関係を築いてゆこうとするものです。

この日の夕食は台所で学生と一緒に作ったものを総勢12人でいただきました。学生さんとの未来思考の話が弾んだ楽しいひとときでした。

古民家ゲストハウス志高庵

むすび屋弥右ヱ門茅葺PTのメンバーはみんな情熱家


むすび屋弥右ヱ門茅葺PTが造った茶室

最終日(12月6日)

最終日は、天野産の酒米のみで地酒を醸造している酒蔵「初桜酒蔵」を見学して、ツアーを終了しました。

初桜酒造の銘酒


 様々な出会いと気づきに満ちた充実した四日間を過ごすことが出来ました。

                   報告 稲

                   写真 草野 藤岡

 

2021年11月23日火曜日

茅出し 山の口終い

 今年最後の活動は茅出しです。10月30,31日に刈った茅ボッチを道路端まで曳きだして集積、トラックに積み込む作業です。

 茅刈で刈った茅ボッチはイベント刈、合宿刈り、茅刈衆を合わせて約800ボッチ(4000束)になっています。ところが、今年はコロナ感染症の影響で文化財修復の予算がことごとく後回しにされているようで納品先の町田工業さんのところが茅束の在庫を抱えたままということで新たな引き取り先をさがすことになりました。日本茅葺文化協会の上野さんの斡旋で千葉県鴨川市で古民家修復を計画している一般社団法人「小さな地球」という団体が一部を引き取っていただけるということになりました。

 今回の参加者は20名、現地に到着後山之口終いの神事を行い早速ボッチの曳き出しです。
茅ボッチは11月9日の上ノ原一帯に吹いた突風で大方が倒れましたが、茅刈衆と自伐林業&藤岡チームが起こしてくれたおかげで良く乾燥して軽く、茅の成長も良く、刈り手の腕も上がって運びやすい茅ボッチとなっており比較的短時間に曳き出しが終わりました。

山之口終い神事

重労働の曳き出しですが今年は少し楽でした


 3時には野点もおいしくいただきました。快く引き受けていただいた駒井さん、西山さん、美坂さん有難うございました。

お茶の時間


 到着したトラックに積み込みましたが高速を走ることから予想より少ない荷姿となってしまいました。

1日目の積み込み


この日の宿は樹林、夕食の後、場所を遊山館に移し車座講座です。語り部は河辺さんでタイトルは「ミツバチのはなし」渋谷にあるビルの屋上で養蜂をしてはちみつを生産されている河辺さんが愛情たっぷりに育てながら観察し、撮影した沢山の写真を使い賢く社会性をもつミツバチの生態をわかり易く解説してくれました。参加者の皆さんは初めて聞くことばかり、すっかりミツバチのとりこになってしまったようです。
 2日目は、トラックの到着まで2時間ほどの余裕があったので、みんなで茅場の後背林「ゆるぶの森」を散策することにしました。すっかり葉が落ちて明るくなった森の中を落ち葉を踏みしめてその音も楽しみながらゆっくり歩きます。この森はミズナラ、コナラ、ミズキ、トチノキ、シナノキ、オオヤマザクラ、イタヤカエデ、ブナなどの多様な樹木、藤原崩れ、黒ボク土、キノコ、湧水、動物の痕跡、林業・木材などのインストラクションのネタ満載です。今回は茨城自然博物館の小幡さんが同行されて植物ネタを解説してしていただき中味の濃い散策となりました。そのおかげでこの森の豊かさを再認識しました。

落ち葉を踏みしめて

シナノキの種を飛ばしてみる

シイタケも生えていました

落ち葉を並べてその違いを

熊棚

 

熊の爪痕

ブナの殻斗

美味しいブナの実を探す


 昼前に小さな地球の代表の林さんが運転するトラックが到着して積み込み。小さな地球に嫁入りさせた茅ボッチは1日目が80ボッチ、この日が115、合計195(975束)となりました。

2日目積み込み



 小さな地球と青水はやっている内容がよく似ていて親しが持てる団体です。これからも交流していくことになるでしょう。早速来年9月に茅葺をする計画があるので嫁ぎ先を訪問することにしましょう。

 上ノ原には、萬枝師匠が、「いい茅でみんなの腕も上がった」とお褒めいただいた茅ボッチが3000束残りました。残りは例年通り町田工業さんに引取っていただくようお願いしています。



                             文責 草野

 









2021年11月10日水曜日

2021茅刈 実施報告

  原因がはっきりしないものの新型コロナウイルス感染者が急激に減少して、やや安心安全な日常が戻ってきた感がある10月30,31日と茅刈を実施しました。

 当日は絶好の茅刈日和に恵まれ、上ノ原の紅葉が相変わらずの美しさの中で日帰りを含めて34名が参加(初参加3名)。久しぶりの懐かしい顔ぶれもありました。

上ノ原の紅葉とススキ



 まずは、スタッフや経験組に倣いながら自分が使う鎌を研ぎ、始まりの式を終えて雲越萬枝師匠の指導により茅の刈方、ボッチのつくり方の茅刈講習会。レビューのために萬枝さんの指導のポイントを挙げておきます。

鎌研ぎ


萬枝師匠の講習 ボッチづくり

 ①群生して茅の穂が出ている育ちのいいところを狙い、そこに向かって刈進む。②キツネガヤは刈らない。刈る前にオミナエシ、ハギ、ヨモギなどの雑草(ゴミ)をあらかじめ取り除いておく。③刈るときは抱え狩り(稲刈りのようなつかみ狩りでは能率は上がらない)④二抱え(個人差あり)ぐらいで一束にして、ほかのやわらかそうな茅で縛る(縛り方の説明は難しいので省く)。⑤縛る場所は根から穂を除く全長の65%ぐらいの高さで縛ると束が立ちやすい。⑥束が一つでも自立できなきゃダメ。⑦5束を一ボッチにするとき丈夫そうな束を斜面の下の方に置き、斜面の上方から抱きかかえて同じ束の茅(身内)をクロスさせて前で結ぶ。⑧穂のところも手前からクロスさせて身内結び。⑨最後に各束を少し広げて安定させる。以上であるがこれは文章で説明するのは難しい。実際に見てやってみるしかない。この講習を受けて、参加者はそれぞれ散らばって茅刈。塾のスタッフの同行や、見回ってアドバイスしました。

茅の中に潜っていい鎌音でひたすら刈る 


 今年のススキは生育が良くまとまっていて刈りやすいので品質の良い茅束が期待できます。

 15時には役場の高橋さんの差し入れのリンゴをおいしくいただき、16時に終了。

 この日の宿はロッジ「とんち」相変わらずの美味しい料理でした。

 夕食の後は、西村幹事の車座講座「奄美大島・徳之島・琉球の世界自然遺産登録の経緯と効果」についてわかり易い解説がありました。

 2日目 今年は茅刈検定の受検者がなく皆さん早速茅刈に従事。正午前に終了。

 それぞれに作った茅ボッチ数に応じてボッチ券を渡し、それを使って野菜などを買い求める参加者で移動販売車の周りは盛況でした。

地物の新鮮な野菜などがあって移動販売は大盛況


 2日間の茅束の数は134ボッチ(670束)となり、用意したボッチ券が足りず急遽、幹事に渡した券を買い上げて間に合わせました。

 このあと11月2日まで例年通り有志6名が古民家に合宿して茅刈を続け80ボッチ以上を刈りました。

ボッチが立つ風景

自慢のボッチ 


                    文責:草野


 



2021年10月8日金曜日

上ノ原でリトリート体験~ミズナラ林の間伐とキノコの駒打ち~

  今年度はコロナ禍でこれまでまともな活動が出来ない日々が続いていたがなぜか感染者数が激減し緊急事態宣言も解けたことで、10月2日、3日と久しぶりの上ノ原行きとなった。
 今回のプログラムのメインであるリトリート体験は、本来9月に予定されていたのであるが、10月のミズナラ林整備と合体して実施された。

 リトリート(Retreat)とは、柳沼さんの在宅講座No.2021・1で紹介されているとおり。語源は、撤退・退去・隠れ家など、つまり、日常からの一時的なエスケープ。”立ち止まり”自分を見つめなおす言動。大事な要素は「非日常」「体験」「振り返り」であり、今回は里山の自然体験によって眠っている五感や身体感覚を開放し、その際の気付きを言葉にする内省対話プログラムである。初日、上ノ原に集まった仲間は13人、2日目は町内の移住組(初参加)の2人を加え15人。

 指導は、会員の井上さんと柳沼さん。これまで上ノ原でリトリートを何回か実施されている。二人から「ここにきていきなり涙ぐむ参加者がいる」ときいてびっくり。そして期待が高まる。都会に暮らす人は過緊張・過情報で疲れて、コロナ禍がそれに拍車をかけている。

 はじめに、芝草の上で車座になり、今日、ここで何をしたいか「意図」を思い浮かべ、一人づつ発表する。皆それぞれ思いを述べる。私は「秋の植物を愛でる」を意図にした。そのあと、冥想して自分の身体の感覚を観察するボディスキャン。大地と大空と自分を繋ぐようなイメージ。冥想していると尾骶骨から根が生え、つむじからジャックの豆の木が伸びていって空に繋がった感覚になった。このボディ(マインド)スキャンは使える。首筋を上ノ原の風に撫でられてその心地よさに眠りそうになる。近くの虫の声も遠くの音も拾う。そして、近くの森の中に入り自分が気に入った木によりかかるように言われその場で冥想。此処では木の根がどうなっているか、梢がどうなっているかスキャンする。

 その後、それぞれが前と5m以上の感覚をあけ、茅場を歩いて柞の泉へ。途中解説や説明はない。出来るだけ自分を見つめるための孤独の境遇と思いを超然とする”孤高の人”の雰囲気が求められる。

広場で車座で意図を述べ合う

めいめい気に入った木によりかかり、根、梢に思いを馳せる

シラカバの妖精

 木馬道を回り炭窯のところで「これからはこれまでで一番気にいたっところで一人で過ごしてください」と言われ、私は広場のリンドウのところでしばらく過ごす、が、じっとしておれない性格が災いして茅場の中を歩く、木の実を拾うなど自分が一番したいことをして過ごした。

 みんなが広場に集まると今日の成果、自分の変化を言葉にするよう言われ夫々の発表の中に、「いつも作業をやることばかり考えているがこんなのんびりした過ごし方は新鮮」との感想があった。

 2日目も秋晴れの好天気、今日はミズナラ林で伐採作業と組合あせたリトリートである。   すでに何本か伐採され、下層のササを刈った場所で瞑想。伐採で出来たギャップと更新の関係を聴きながら自分をその中に置き、芽生え・育つイメージをもつボディ(マインド)スキャン。
伐採で出来たギャップで意図を述べ合う

 そのあと、少し移動して新米杣人の柳沼さんが北山さんの指導を受けながらミズナラをチェンソー伐採するデモンストレーション。そして、伐採されたミズナラをチェンソーでの玉切体験に5人の強者が挑戦した。


柳沼杣氏の奮闘


玉切りに挑戦


この日は、キノコもの駒打ち体験も予定されていたが時間がなく取りやめて、広場に帰り総括の感想を述べあう。
木洩れ日の中、感想を述べ合う尾骶骨が土の中に

   ゆったりした2日間を過ごした「リトリート」というより「ユトリート」体験に大満足。井上さん、柳沼さん、北山さん素晴らしいプログラムを有難うございました。

 塾が整備してきた「ゆるぶの森」と茅場の新たな使い方が見つかった。作業を組み込んだ森林塾青水らしい「リトリート」を今後展開できるように本格的に取り組んでみたい。

 最後に久しぶりの訪れた上ノ原がいかに素晴らしいところかその風景、植物、動物の写真を掲載ておきます。

 文責 草野

広場とミズナラ林

ビューポイントから茅場を望む

ツタウルシがいち早く紅葉

オオヤマホクチは奇妙な姿

ススキは茅刈を待っている

森の中で見つけたマユミの輝き

ミズナラのどんぐり

ヤマブドウ、夜の酒の肴に

甘くサクランボの味のウワミズザクラ

リンドウ復活(歓喜)

オミナエシ

アキノキリンソウ

アザミとヒョウモンチョウ

まだ幼いヤマアカガエル