2024年9月28日土曜日

土呂部の草原で、茅ボッチづくり 

 森林塾青水の活動もコロナ前の状態にほぼ戻ったといってもいいでしょう。

野焼きも思う存分出来て、月一の活動も順調、その証の一つとして平成28年を最初に5回を数えた日光市土呂部の「日光茅ボッチの会」のフィールド訪問が久しぶりに実現しました。

 今回の訪問は、9月21,22日、雨模様が心配されましたが日光茅ボッチの会の飯村孝文代表をはじめメンバーの皆さんの温かいおもてなしもあって2日間を乗り切りました。。

 初日は、青水のメンバー15名が東武日光駅に11時に集合、レンタカーと自家用車に分乗して向かうも途中は霧の中を土呂部へ、昼頃に到着、民宿「水芭蕉」でお弁当をいただき、早速、レインコートを着けてカッパ(草原)の大曽根採草地に向かいました。途中、ビールの苦み、香りの「原料となるホップ(セイヨウカラハナソウ)の薄緑色の丸い姿のカラハナソウが以前と同じように出迎えてくれました。

丸い形がいい感じのカラハナソウ

              

カラハナソウを持ち帰ってビールに入れてみました

 カッパにつくと飯村さんから土呂部草原の成り立ちや保全の方法、ボッチの作り方などの説明を受け、ボッチづくりに取りかかりました。

             

飯村代表の説明

ボッチづくり

          

ボッチの姿
     

             

力作ボッチ
 

          

カッパ広場とボッチ

 上ノ原のボッチはススキだけで作り用途は屋根茅ですが、ここのボッチは、牛の飼料になるので木本類を除けば雑草が混ざってもよく作りやすい、青水のメンバーは手慣れた様子で作っていきましたが、小雨もあって蒸し暑く事前に機械刈りしてあったエリアのボッチを作り終える頃は汗びっしょりとなっていました。

 その後、飯村さんの案内でこのカッパの周囲を散策して、草原にある植物を解説していただきました。この日に解説いただいた植物は沢山あったのですが記録したものでは、アキノウナギツカミ、ヤナギタンポポ、アキノキリンソウ、ウメバチソウ、アキノタムラソウ、コウリンカなど(説明いただいた植物はこれの2、3倍はあったでしょう)。

土呂部集落が望める展望台デッキ

          

ウメバチソウ

土呂部集落 現在の住民は19名とか


 今回のお宿は、民宿「水芭蕉」に先客があったため、1kmほど離れたキャンプ場「ドロボックル」のコテージ3棟に分宿、まずは下流の日帰り温泉施設で汗を流したあと、キャンプ場のバーベキュー施設で食事、水芭蕉のお弁当やイワナの塩焼きなどがとても美味しくて夜遅くまで話がつきませんでした。

イワナの塩焼き


 2日目はあいにくの朝から雨、ボッチづくりは諦めて、オホッパ採草地に向かいました。

オホッパ採草地に向かう前に位置などを説明


途中、クロビイタヤの自生地でその特徴などを聞き、4種のカエデ類、サリフタギ、ルリミノウシコロシなどを見ながら目的地に着きました、ここでは植物の維持増殖のための科学的方法を得るための草地の管理試験の様子を説明いただきました。

 ここを引き上げるころには本格的な降雨になり道路を雨が川のように流れていました。

クロビイタヤ

カエデ5種類 手前からクロビイタヤ、カジカエデ、イタヤカエデ、ミツバカエデ、
オオモミジ

                
               雨の中のオホッパ採草地

 日光化やボッチの皆さんのお見送りを受けて土呂部を出て途中のそばや「大滝」で昼食を終える頃には雨も上がりました。

このように天候には恵まれませんでしたが飯村さんはじめ日光茅ボッチの皆様のおもてなしがいっぱいの楽しく結い意義な訪問となりました。日光茅ボッチの会の皆様本当にありがとうございました。

写真は笹岡さんに提供いただきました。

報告・文責 草野



2024年9月14日土曜日

諏訪神社大祭にて6年ぶりに獅子舞奉納

 地元住民の北山塾長から 「今年の諏訪神社のお祭りには獅子舞が奉納されます」とのお知らせをいただいたのが7月の幹事会、6年ぶりの獅子舞奉納の復活、この間、コロナ禍や担い手不足による休止となっていた。諏訪神社の獅子舞は藤原集落の上区、中区、下区が当番で行うしきたり、上・下区の担い手不足で休止され、今年は若者人口が多い中区の当番で6年ぶりの奉納が実現した。中区の皆さんのご苦労に頭が下がる思いである。

 諏訪神社のお祭りには藤原中の人々が集まる、ふるさとを離れた人も久しぶりに帰郷する。青水の活動でほぼ1月に1回の頻度で藤原を訪れても離れた方はもちろん在郷の方も普段忙しくてなかなか逢えない。懐かしい人やお世話になった方にお祭りの日ならば会える。復活と聞いて、何が何でも駆けつけようと決めて清水初代塾長と川端顧問に声をかけたら待ってましたとばかりに賛同を得た。そして塾の若きエース藤岡和子副塾長も参加して塾から4人が前日の8月7日に藤原を訪れた。

この日は「パル」に宿泊、久保さんがバーベキューで歓迎してくれて思い出話や塾の課題を話し合う宵が更けていった。

8月8日、お祭り当日、まずは上ノ原に行き、ススキの生育具合などを見てから諏訪神社へ。

ススキの花

                 

野ブドウ


少しばかりの御寄進を奉納、やはり、思ったとおりお世話になった方や懐かしい方の顔がある。皆さんの顔が明るい、久しぶりの賑わいにうれしくなる。

 この獅子舞がはじまったのは古く、建久2年(1191年)に源頼朝の家臣によって伝えられたという記録が残っている。この獅子舞が奉納される舞台はもともと地方歌舞伎が演じられていた歌舞伎舞台の茅葺きに青水が上ノ原の茅を寄進している。その屋根にも木や草が生えて少し朽ちている。そろそろ葺き替え時かもしれない。

              

幟旗がはためく境内

 
屋根の植物たちも観客

 お祭りは神事のあと10時から司会の口上に始まり、獅子舞の幕の合間に幼稚園児のダンス、日本舞踊、歌謡曲などの芸達者な村人たちの余興が入り賑やか、獅子舞は「国久保」「耶魔懸り」「吉利」の3幕、一幕が30分から50分および暑い中での汗だくの熱演である。桟敷席から「いいぞ-」の声、拍手。そして沢山のおひねりが飛ぶ、伝統芸能、芸達者のオアフォーマンス、懐かしい人々、そしてにぎわい、やはり、祭りはこうでなくては・・・。

          
花笠と太鼓・鐘




獅子舞 「耶魔懸り」右端が北山塾長



住民の方のパフォーマンス


桟敷席
                

             
お世話になった方に久しぶりの対面
 報告・文責 草野

2024年8月31日土曜日

8月活動報告 植生調査  ―専門家チームと一緒に上ノ原の植物を調査―

 

817日、1814名が参加して上ノ原の植物調査を行いました。

森林塾青水が上ノ原茅場の再生活動に着手して2024年が20年目の節目の時、記念事業として着手時に調査した生き物、特に植物相がどのように変化しているかを調べるために本格的な植物調査を本年の事業計画に盛り込んで実施しています。 

調査は、幹事の西村さんを塾の担当者として茨城県霞ケ浦環境科学センターの小幡さんの協力を仰いで実施しています。これまで春の調査を行い、今回は夏の調査になります。今回は小幡さんの仲間の飯田さんと栗原さんに同行していただきました。

この専門家チームに募集に応じた会員や一般参加者が加わり一緒に調査して記念事業を盛り上げようという目論見です。

一日目、午前11時半頃上ノ原に到着、先行して朝から調査を行っていた専門家チームの帰りを待って広場で待機、朝食後、調査を続ける専門家チームとは別行動で「ゆるぶの森」に入りミズナラなどの直径成長測定器(デンドロメータ-)の設置、ブナの稚樹のは発生調査、センサーカメラのデーター回収を行いました(別途稲事務局長報告)。

             

ブナの巨木にデンドロメータを設置

           

  

          


この日、私にとっては衝撃的なことを目にしてしまいました。

上毛高原から旧水上町に入り湯桧曽付近利根川両岸に沢山の樹木が赤茶けて枯れている用に見えます。特に、垣間見えた谷川方面がひどく、まるで紅葉しているような様子は、この時期としては異様な風景です。藤原ダムを過ぎてもその風景が続き、ついには藤原の入り口集落のダム湖の上も程度こそ少ないものの集団的に赤茶けています。この時期、ミズナラなどの多いみなかみで葉の変色(枯損)する状態は「ナラ枯れ病」を疑わざるを得ません。

  ナラ枯れ被害:林野庁 (maff.go.jp)

ナラ枯れ病は、ミズナラなどブナ科の樹木が枯れる森林病害虫で九州から東北までほとんどの地域で被害が急速に広がっていてカシノナガキクイムシが媒介する病気です。

このナラ枯れがまさか標高の高い上ノ原までは侵入していないだろうとの思惑が外れ、広場から見る「柞の泉」の上部に赤茶けた樹木が2カ所見えたときには大きなため息が出ました。

               

ナラ枯れ被害と思われる樹木の枯れ(ゆるぶの森奥)

            

被害木、茅場の隣接地

そこでこれを確かめるべく星見さんに同行してもらい調査することにしました。茅場に近い増井試験地のところのミズナラの被害木はすぐに到達することが出来て写真のようにカシノナガキクイムシの糠のようなフラス(糞と木くずが混ざったもの)が確認され、穿孔跡もあります。樹木の葉枯れの状態からまずナラ枯れ病による被害に間違いありません。

被害木(茅場隣接地)

               

被害木(奥地)

                 
フラス

               

穿孔跡
被害木

        

                

そばにあったキツツキの巣作り跡

そしてもう1カ所の現場探しは難航しました。この箇所は「ゆるぶの森(塾の管理地)」から外れていてかなり遠く。森に入ると被害木は見えなくなります。広場から見た柞の泉のからの方向と距離を頼りに急傾斜でガレ場、時には獣道をたどりながら登ること40分、ようやく到達、被害木はいずれもミズナラで3本ありました。これもフラスや枯れの状態からナラ枯れ病だと推定しました。フラスのサンプルを採取して下山しましたが。どうしてここまでカシノナガキクイムシが飛来したのか。多分上昇気流に乗り到達したのではないかと思います。

ナラ枯れの脅威をひしひしと感じましたがこの付近には中径級のブナが集団的に生育していたのを確認できたのは収穫でした。

この日の気温はかなり高く少し歩くだけで汗びっしょりで専門家チームの調査が一段落したあと十郎太沢で冷やしたスイカやキュウリ、トマトで身体を冷やしました。

今回の宿は別荘地にあるホテルサンバードの一棟貸し温泉付きコテージ、

夕食は、バーベキューを楽しくいただきました。

2日目は、専門家チームが残りの調査を終えたあと、小幡さんのガイドで上ノ原の今の季節の植物を歩きながら解説してもらいました。様々な植物がある上ノ原、その違いと見分け方を丁寧に教えてもらい、上ノ原の植物相の豊富さに今更ながら感心するとともに報告書が楽しみになりました。

               

植物の解説

           

オオナンバンキセル

           

コオニユリ

 そうこうするうちに藤原湖マラソンを無事に完走した稲さん夫妻が帰ってきました。

 さて、本日の昼食は念願の十郎太沢の流水を使った「流しそうめん」。北山塾長が用意した孟宗竹を使い、コテージで茹でたそうめんを、樋に流しながら麵ツユでいただきました。冷たくて大変美味しい流しそうめんでおなかがいっぱいになりました。来年もやりましょう。

                

流しそうめん

 写真は清水さんに提供いただきました。

 報告・文責 草野

 

 

2024年7月27日土曜日

茅場の防火帯整備に参加して 樹木医 有田和實(浦安市在住)

 7月の定例活動の防火帯整備を終えて有志で現地学習会を行いました。訪問地は新潟県柏崎市高柳町の荻ノ島茅葺き集落と十日町市のブナ美人林ほかです。3日間にわたる活動を初参加の有田さんが紀行文風にまとめていただきました。有田さん。ありがとうございました。(草野)

7月13日の茅場防火帯整備に初めて参加しました。数年前から、清水英毅様や川端英雄様からお誘いを受けていましたが、体調不良でなかなか出歩くことが出来ませんでした。   今回、心臓手術から2ケ年が経過し主治医から外出の許可が得られ、皆様方の事業に参加することが出来ました。

上毛高原駅からレンタカーで上ノ原に向かうにつれ、緑のトンネルを抜け、渓流を眼下に見ながら素晴らしい自然の中に引き込まれていきました。

茅場につき、初めて見る茅場の雄大さや樹林に圧倒され、初めての私には何をお手伝いしてよいやら? 清水様と相談し、茅場全体の視察点検と皆様の活動状況を記録することにしました。

作業服に着替え作業準備に取り掛かり、晴天の中で早速刈り払い作業が始まりました。

作業準備中ー刈払機の調整

昔の若者?が草刈り場所に散り、慣れた手つきで防火帯を刈払いはじめました。1mほどに伸びた茅と雑草を汗を流しながら一生懸命に作業している姿はとても美しく感じました。草に交じってタニウツギが多く繁茂していました。人が歩いている部分には外来種のヒメジオンが多く咲き乱れているので、清水・有田ですべて抜き取り処分を行いました。汗をかき喉の乾いた時の救いは、水源から流れ出る泉で喉を潤した時でした。

刈払いの勇姿

            
               

              


作業後は、「ロッジ・たかね」で温泉に入り、美味い夕食を頂き、食後は車座講座(交流会)でお互いの考え等を出し合い楽しい一日を終えました。

 二日目は、前日の作業の続きと、清水・有田で茅場内外の点検や動植物の観察を行いました。茅場の中には、貴重種の生育地があり、会員の保護成果で白く可愛い花が咲き、シジミ等の蝶が群舞。すると突然、保護ネット外にカモシカが現れ、ジーと私たちをのぞき込む様子はとても可愛く数分間のお見合いをしました。

草原でカモシカとお見合い

            
          


    

貴重種に訪花したルリシジミ

    


                
ホタルブクロ

            
クマイチゴ

                 
                
ヒメシジミ


              

トリアシショウマ

              
オカトラノオ


         
ミヤマオダマキ
                
ヤマブドウ



午前中で予定していた防火帯刈りを終え、「ロッジ・たかね」で美味しいカレーライスを頂きました。食後は、裏山の旧炭焼き小屋周りの素晴らしいブナ林を散策。是非、この見事なブナ純林を村の観光・教育の目玉として一般の来訪者に案内し、ブナの自然林を紹介しては・・・との意見が飛び交いました。

               

ロッジ・たかねのカレーライス

            

ロッジ・たかね裏の炭窯のあるブナ林(仁三郎山林)

 二日目の午後からは小雨模様になり、新潟県に移動し「荻ノ島茅葺集落」の視察と「ブナ美人林」の視察を行いました。

 「荻ノ島茅葺集落」は、縄文時代から続く環状集落で、耕作地(田んぼ)を中心に数件の茅葺の家屋が囲んでいます。「荻ノ島松尾神社」を中心に数百年続いた集落も、数件の茅葺住宅が残るのみで、一部は屋根が崩落している状態でした。

         

荻ノ島茅葺き集落

荻ノ島茅葺集落から僅かな移動で高柳町に移動し「高柳町じょんのび村(ファームハウス)」のコテージに宿をとりました。宿舎から小雨降る中を徒歩でつり橋を渡って本館に移動して、温泉に浸かり豪華な夕食を頂きました。昔の集落を観光用の体験型施設にリニューアルしたもので、現代の若者向けに数件のコテージも建てられ、コテージの周りの樹林にはブナ林が多く残っていました。夕食後は、コテージで地酒を傾けながらの懇親会を開き、大いに胸襟を開きこれからの「森林塾・青水」について語り合いました。

        

ファームハウスでの懇親会

翌朝は、朝風呂に入り浴場脇の食堂で、地元食材をふんだんに調理した美味しい朝食を頂きました。

 最終日(三日目)は、十日町市にある「ブナ美人林」の視察に出かけました。小雨降る「ブナ美人林」は、素晴らしいブナの純林でよく整備され、散策にはとてもやさしい観察林でした。小雨が降りしきる樹林は「樹幹流」を見ることが出来ました。

       

ブナ美人林

 清々しいブナ美人林を後に帰路に向かい途中の昼食は、そば処「まるにし」で新潟県特産の「へぎそば」をおなか一杯頂きました。六日市IC近くの道の駅「クロステン」でお土産を買い、1530には無事上毛高原駅で解散となりました。

 今回の参加は初めてでしたが、自然豊かな上毛高原の自然に触れることが出来、また、経験豊かな皆さんと触れ合うことが出来、満足…満足でした。次の機会にも是非参加をしたいと心待ちしております。

              報告 草野(文責)が一部写真を省略しています。