2023年11月25日土曜日

活動報告 「茅出し」 -2年続けてつくば市の平沢官衙遺跡の屋根材を搬出-

 

今年の茅出しと山之口終も無事に終わりました。藤岡和子さんが青水のfacebookにその様子を掲載してくれましたので承諾をいただいて転載しました。

(1) Facebook

 

1118-19

茅出しは、上ノ原入会地の仕事納めです。1028日から刈り始め3週間、刈り取った草原に散っているボッチを、作業道や公道に集める体力仕事です。

仲間集い昼飯を食べていた頃に広がるは、息を呑む太陽に輝くボッチ風景。茅出し仕事の爽快感を存分に味わえそうと思われたのですが、、、。

いざ作業開始!

あれよあれよと天候が急変。粉雪が降り始め、徐々に綿雪吹き荒れる中の仕事となりました。それでも、みんなのやる気で1530分には、刈り取ったボッチを道に集めることが出来ました。ご苦労様です。

ボッチが立つ茅場に近づく怪しい雲


雪の降る中

寒さにも負けず茅出し

雪もやむ

翌日は、青空と雨が繰り返す冬がそろそろ始まるそんな気配漂う日。トラックにボッチを積み込みました。途中虹が現れ、その素晴らしさを味わう小休止もあり、無事に作業終了。

運び出されたボッチ

トラックに積み込む

虹🌈


今年の嫁入り先は、642ボッチ(3,210)すべて、古代筑波の正倉院『平沢官衙遺跡』の屋根材になります。

【山の口終い】

十二様へ、入会地の恵みを戴いた感謝と一年無事に作業できた御礼をお参りします。

山之口終い


そして直会へ、自然と人間と神が同じものを口にして清めます。

お供え・直会


すべては繋がっている

どれが勝るでもなく共存し

互いに慈しみ

来年も

孫の代へも

その先まで続いていく

上ノ原入会地でありますように

   和子

 

車座講座

 今回の車座講座は贅沢にも2つの話題で実施しました。

一つは茅の嫁入り先である「平沢官衙遺跡について」をつくば市文化局の石橋さん。平沢官衙遺跡は12月から工事が始まり、1月頃には見学会も行われるとのこと是非訪れたいものです。
 そして「嬬恋村の未来 -野鳥の会への期待-」を移住して3年間地域振興に尽力され今月で退任される上原さん。村の遠景、近景からの魅力を情熱込めて話されました。

石橋さん

上原さん

 

 茅出し数最終結果

トラックに積み込んで今年の茅刈数が確定しました

 ボランティ    660束(132ボッチ)

 茅刈衆(2人)1,300束(260ボッチ)

 合宿      1,025束(205ボッチ)

自伐組      225束(45ボッチ)

合計     3,210束(642ボッチ)


嫁入りボッチに祝い唄♪♬
晩秋の茅場風景

写真は、藤岡さん、笹岡さんに提供いただきました。 報告 草野



2023年11月12日日曜日

「2023茅刈実施報告」 ススキは生育不良でもボランティア・合宿・地元茅刈衆のチカラを結集

 記録にも記憶にもない今年の夏の異常な暑さと降雨の少なさの連続は、人々の生活にも大きな影響を与えたがこの異常気象は植物たち、上ノ原のススキにも影響して近年にない生育不良となり草丈、茎径ともに例年に比べ見劣りがする。雑草は繁茂し、ススキの色も今一で「地球はどうなってしまうのか」とススキが嘆いているようだ。                                   温暖化は急速に進んでいる。

シラカバと茅場とミズナラ林の紅葉


記帳台と後背林


  今年の茅刈は、茅場の中で比較的生育が良く、雑草が少なく、ススキがまとまっているところを探しながら刈る、自然の恵みに感謝しながらもススキの状態に心を痛めながらの茅刈となった。

 1028日、募集に応じて22名が上ノ原に集結、今年の参加者の特徴は、ヨーロッパからの留学生2人を含む東工大グループをはじめとした20代の若者が多く上ノ原茅場は活気に溢れた。

 始まりの式のあと雲越萬枝師匠の茅刈講習、その称賛される技術はもとより気の利いたジョークを交えた指導を聞くのを楽しみにしている。今年のジョークは作り上げたボっチを指して「これなら大阪万博に出しても恥ずかしくない」であった。いいなー。 

茅刈講習

ボっチを抱きしめる師匠

鎌研ぎ
   鎌研ぎ終わり、それぞれが刈り始める。                               生育のいい場所を探しながら茅を刈るのでなかなか能率が上がらない、1時間ほどで2ボッチ刈ったところで巡回してみるとやはり「茅が小さい」との声が多い。ついでに茅場全体を回り,茅刈合宿の時に入る比較的生育が良くまとまっている場所に目星をつけておく。そのあと2ボッチを作りあげたころで3時の休憩。広場にもどると岡田さんの野点の準備が出来ていて、お菓子と一緒にいただく。おいしいお茶を茅場でいただく幸せ。岡田さんいつも有難うございます。

野点で疲れが吹っ飛ぶ

作法にのっとり小首をかしげる


この後も巡回、1ボッチを刈ったころに本日の作業は終了。皆さんに出来高数に応じたボッチ券を配ってみると本日のボッチ数は60ボッチだった。 

ベテランが初心者を指導

              
刈れば日本の屋根が蘇る

 
本日の宿は料理に定評のある「とんち」。                                夕食後の車座講座は東工大学院生、平尾しえなさんの全国茅刈行脚などの話、上ノ原はもとより阿蘇、長野開田高原(カリヤス)、御殿場、大阪(淀川)、筑波、沖縄(ササ)などの全国で茅刈をしている強者、今回はヨーロッパの茅葺の話も含めて各地の茅場の特徴もあり大変勉強になる話題でした。建築が専門の彼女「家は買うものでなく作るもの」の言葉におおいに同感。

2日目、天候はまずまず。生育のいいところが把握できたのか能率が上がり、全体で70ボッチ。2日間で130ボッチ(650束)。ボッチ券で買えるお米、マメ、野菜などの地元産農産物が移動販売車で到着してたちまちのうちに完売。

今年の茅ボッチは昨年に引き続き、つくば市の国指定文化財「平沢官衛遺跡」の屋根の葺き替え用として嫁入り先が決まっている。目標の600ボッチ(3000束)にはまだまだだが条件の悪い中、皆さんよく頑張ってもらった。後は第1陣、2陣の合宿組、そして地元茅刈衆の頑張りで目標を達成することになる。

その茅刈合宿。第1陣は29日7人、30日(終日)6人、31日(午前中)3人が従事した。さすがベテランぞろい成果は100ボッチを超えた。第2陣は11月3,4,5日に6人が入り、これも100ボッチを超えたので合宿で200ボッチ(1000束)。

合宿第2陣のメンバー


きえすぎくん活躍


これに昨年2200束の実績を誇る雲越萬枝さん、渡邊勇三さんの地元茅刈衆が従事して上ノ原茅場には600ボッチ以上が林立し11月18,19茅出し・嫁入り日を待っている。

ボッチが立つ茅場



残っていた紅葉


合宿の帰りの夕暮れの茅場

  報告:草野                                             写真提供:清水さん、柳沼さん、藤岡和子さん。

 

2023年10月16日月曜日

活動報告 「草原と森の再生プログラム」 -山地崩壊箇所緑化用のススキの種を採集-

、三日前から急に寒気が押し寄せ、山々はまだ緑でも、上ノ原のススキ草原はすっかり秋の気配。107日、8日の「ススキの種採集とミズナラ林整備」のプログラムには、地元2名を含む会員会友16名が参加しました。

 初日は生憎の雨、ススキの穂は乾燥した状態で提供しなければならないため、作業を急遽、翌日実施予定の森林整備に切り換えました。

 北山塾長がチェンソーによる伐採の手順を示しながらミズナラを伐採、参加者は各自ノコギリを手にミズナラ等の伐採木の枝葉を伐る作業に従事しました。

  

塾長が伐採のお手本






                     
ミズナラの切株


                     
伐採木の枝葉処理



 枝葉の処理が一段落ついたところで作業を切り上げ、「藤原ぼん展覧会」を見学するため。集古館に車で移動しました。

 トチやホウノキ等の落葉広葉樹が豊富な藤原では、昔から木地師が様々な木製の生活用具を製作していましたが、それを「藤原盆」と呼びならわしていたということです。           かつては利根郡内の各家々で使われ、時には献上品にもなっていた「藤原盆」ですが、生活様式の近代化とともに、いつの間にか藤原盆の制作技術も途絶えつつあります。そうした中、その真価を再認識しようと結成された「藤原盆研究会」が、この展覧会を主催しました。放射状についた鑿の削り跡が藤原盆の特徴ですが、大きなこね鉢から小さな丸盆まで、大きさも形状も様々で、中には注ぎ口のついたものまであります。参加者は藤原の歴史を伝える生活用具にしばし見入っていました。

                      

集古館入口



展覧会パンフレット

 今回の宿は、公式行事では初めてお世話になる大沢荘。草野事務局長が風邪をひき不参加の為、車座講座は中止となりましたが、参加者は秋の夜長を満喫しながら、明日の作業に備えていたようです。

 二日目は朝から快晴で、絶好の穂刈り日より。それぞれハサミを持って、ススキの穂の刈り取り作業に取り組みました。初めて実施した昨年の反省事項は、〇茎は不要なので、茎は3センチメートル以内でカットすること、〇なるべく、茅刈りに適しない区域で、二人以上で作業すること、等々。

 ハサミでカットして、腰からぶら下げた土嚢袋にいれるという単純な作業ですが、作業に熱中すると、いつの間にかお互い離れ離れになってしまいがちです。また、土嚢袋でなく、通気性の良い洗濯ネットを使うなど、それぞれ工夫しながら作業に取り組みました。 

                      


茅穂刈






 


 11時頃まで二時間作業したところ、採れた量は11名で生重量約11キログラムほど。今年度目標の乾燥重量30キログラムには遥かに及ばないことから、昼食後、午後1時半頃までもうひと踏ん張りして、何とか合計15キログラム以上を確保。古民家の居間にブルーシートを広げて乾燥させ、後は北山塾長以下自伐林業グルーブに託して、藤原を後にしました。

                   


シートごと茅穂を車へ



古民家で広げて乾燥

 ススキの種の採集は今年で二回目。草原としての上ノ原の価値を高めてゆくために、さらに試行錯誤を重ねで、来年に臨みたいと思います。

  

作業の合間に



10月初旬の上ノ原
                                  報告 稲 貴夫

付記  茅穂は東京の種苗会社に納め、生物多様性を配慮した関東一円の山地崩壊地等の                        復旧(緑化)に郷土種として航空緑化等で播く種子となります。

 


2023年8月27日日曜日

活動報告「夏の上ノ原生き物調べ」

  基本的には8月の活動はお休みですが今年度は8月19日、20日植物中心の生き物調べを実施しました。森林塾青水が上ノ原の茅場再生に着手したのが2004年、来年は20年目になります。着手前と途中で何回か生き物調査を行っていますが、ようやく入会地として利用されていたかつての茅場らしい状態になったことから20年目に専門家による本格的な生き物調査を実施する方向にあります。そこで、来年に向けて会員でもその一端が担えるようにプレ調査を実施することになりました。
 今年の夏は異常な暑さが続いており「命に危険が及ぶ暑さ」とか表現されるほどです。また雨も少なくダムの貯水量も減少し続けております。
 その暑さのど真ん中、上ノ原は標高1,100mですので都心よりも5℃程度は低いはずですが下界が熱ければ天上も暑く、日の当たるところは30度、動きも緩慢にならざるを得ません。今回の参加者は親戚のおばちゃんの話を聞いて興味を持ち初めて参加した女性、そして会の活動を支援していただいているイオン環境財団の3名の参加を含めて16名、皆さん草花と涼を求めて参加していただいたようです。
 1日目の到着後、雷鳴が轟き、雲行きが怪しくなり、そのうちかなり強く降り出しました。雨の中の調査は気分的に嫌ですのでしばらくテントの中で西村さんに事前知識として上ノ原の植物について解説していただいていると雨が小降りになってきたので茅場をひとめぐりしながら実際の植物で解説をしていただきました。

小雨の中で植物の解説

そして今回期待した貴重種のオオナンバンギセルを探したところありました。自らは光合成をせずススキなどのイネ科植物の根に寄生している不思議な植物でススキの陰でうすい紅色を帯びた花が咲いていました。
 詳しくは オオナンバンギセル - Wikipedia を参照

オオナンバンギセル




これも貴重種スズサイコの花

 夕食後の車座講座はとても充実したものになりました。まず、北山塾長の森林塾青水のあゆみとこれからめざすもの、次に日光カヤボッチの会の飯村さんの土呂部草原の地形、気候植物、活動の特色、上ノ原との違いなど、そして締めが西村さんの上ノ原の生き物たちです。いずれもパワーポイントを使いながらの説明はわかりやすい内容でした。

この夜予定していた星空観賞会は曇り空のため残念ながら中止となりました。

 2日目、朝から太陽がジリジリと照りつけ気温はたぶん32度ぐらい。まずは全員で林道わきをルートセンサスしました。対象はアザミの種類とヒメジオン、シンボル昆虫のヒメシジミです。この調査は継続して実施しています。


 今年はヒメシジミが少なく残念ながら7月にも乱舞を見ることができませんでした。
 ススキの生育は雨が少なかったせいか順調でないのとやはり季節は1~2週間ほど早くなっているようです。
 そのあと貴重種Mの個体数調査とシカから守るために周りをシカ柵で囲む作業を汗だくで行いました。

ルートセンサス風景


シカ柵設置

やはりこの暑さ、体力的に長く続けることは危険なのでプログラムは此処で終了、残り時間を岡田さんの野点をいただいたりして過ごしました。
 以下、今の季節の上ノ原の草花たちです。

ツリガネニンジン


ヤマハギ

ノハラアザミ

ハバヤマボクチ

オトコエシ

写真は清水さんに提供いただきました。
                        報告 草野