2024年3月21日木曜日

雪原トレッキング 雪降る中 -今年も氷筍が我々をお出迎え-

 

2023年度最後のプログラム、雪原トレッキングを3月9、10日の両日、  会員、会友16名の参加のもとに実施しました。

『茅風』71号掲載の「藤原だより」の通り、今年は異常に雪が少ないのですが、3月に入ると一転して雪の日が続き、プログラムは2日間とも、雪が舞い散る中での活動でした。

やはり今年は雪が少ない

1日目、上ノ原の入口まで車で着いた一行は、スノーシューやカンジキを履いて、「メイプル・ウォーター」の採取口を取り付けておいたイタヤカエデの所まで歩き、タンクに溜まった樹液を採取しました。

一日目、雪の中でかんじき、スノーシューを装着

カエデ類は、氷点下でも細胞が凍結しないよう、夏の間に貯めたデンプンを糖分に変えて厳しい冬を乗り切りますが、雪解けの頃には春の芽吹きに備えて、盛んに大地から水を吸い上げるために、細胞内の樹液を導管に流しだします。そのため、この時期に木に穴を開け採取口を挿し込んでおくと、微量の糖分が溶けた樹液が採取できます。これを40分の1ほどまで煮詰めたのがメープルシロップです。

メイプル・ウォーターを採取したイタヤカエデ

 今回は条件が悪いのか採取量は少しだけでしたが、「ゆるぶの森」の豊かな恵みの一端に触れることができました。

その後、藤原スキー場に移動して、この夜、五年振りに開催される「藤原雪まつり」の会場を彩る雪灯りを設置する作業をお手伝い。バケツに雪を詰めて、雪原にひっくり返してバケツをはがせば、雪の円錐台の出来上がり。そこにスコップで穴をあけてランプを置けば、立派な雪灯りの出来上がりです。その中でも、藤岡和子会員制作の龍の雪像は中々の力作。

みんなでつくった雪灯り

会場入り口で出迎える龍の雪像

 その後、並木山荘に戻って夕食の後、雪まつりを見学するため再び藤原スキー場へ。久し振りに「GOROPIKA」のファイアーショーを堪能し、最後は雪原の夜空に打ち上がる大輪の花火を楽しみました。

 GOROPIKAの熱演
  

  二日目も天候は雪。車の屋根には、昨夜からの雪が積もっていました。

 大幽洞を目指す雪原トレッキングには12名が参加しました。

 宿からコースの入口まで車で移動し、スノーシューに履き替えた後、北山塾長をリーダーに、若手のメンバーが交代で新雪に覆われた雪原をラッセルしながら進みました。大幽洞を目指して、ゆっくりでも着実な歩みです。

大幽洞へは、ここからが本番です


大幽洞まで最後の登りをラッセル

大幽洞までもうすぐ

 

 出迎えてくれた氷筍は、今年は暖冬のためか幾分、細く小さめでしたが、洞窟の奥でキラキラ輝きながら青水の一行を歓迎してくれました。

氷筍が出迎えてくれた

奥の方には、結構できていました


 帰路は、最初の急坂を滑り降りた後は、往路で踏み固めて来た道を戻ったので、歩みはスムーズ。無事に、往路2時間、復路1時間の雪原トレッキングを終えることができました。

 (報告:稲)

 

一方、大幽洞トレッキングを棄権した残留組4人は藤原集落の雪の中の暮らしを見ようと師入、青木沢、湯の小屋の集落を尋ねました。いずれの集落も雪の中で眠ったように静まり返っていて、豪雪地帯の冬の暮らしの厳しさを実感しました。最後に湯の小屋温泉で凍れた身体を温めて宿に帰りました。

雪の中の青木沢集落

(報告:草野)

 


2024年2月10日土曜日

つくば市・平沢官衙遺跡で楽習会 上ノ原産の茅による葺き替え工事を見学

  2022年度と2023年度の二年にわたり、上ノ原で刈り取られた茅、合計凡そ六千束が、茨城県つくば市の平沢官衙遺跡に建つ、復元土壁双倉の茅屋根の葺き替え工事に使用されています。森林塾青水では24日に、つくば市の主催で実施された見学会に会員他11名が参加しました。

国指定史跡である平沢官衙遺跡は、奈良・平安期の筑波郡の郡役所跡で、昭和50年の県営住宅建設工事に際して発見され、その後発掘調査と復元整備工事が進められ、平成15年に、「平沢官衙遺跡歴史ひろば」として正式に開園しました。

史跡周辺の地域は日本百名山の一つ、筑波山の参詣道の入口にあたる古くからの観光名所です。参加者は午前中つくば駅に集合し、市営バスの「つくバス」に揺られて史跡西側の北条地区に移動、昼食前に、かつて醤油製造業を営んでいた「宮清大蔵」という江戸時代末に建てられた登録文化財の建物を見学してから、歩いて平沢官衙に移動しました。

写真 復元建物群の遠景 後方に筑波山が見える



史跡に到着すると、昨年の茅出しに参加いただき、車座講座で遺跡についてお話しいただいた、つくば市文化財課の石橋充課長より、今度は実際に現場を見ながら解説いただきました

写真 石橋課長より遺跡全体の説明を聞く



三棟ある復元建物は、かつて稲を保存していた正倉で、萱葺きの土倉双倉の右側は校倉造り、左側には板倉造りで復元されています。参加者は校倉造りの木組みの実際を、模型を使って体験することができました。

写真 模型を使って校倉の木組みを体験



続いて、実際に屋根に上がり、現場で茅葺き工事の現場を見学しました。茅葺き文化協会の事務局長であり、()里山建築研究所のスタッフとして現場の施行管理を担当している上野弥智代さんと、工事に従事している職人さんから話を伺いました。今回の工事には上ノ原のほか、地元つくば市の高エネルギー加速器研究機構はじめ、県内数か所から茅を調達しているとのことです。

一番気になるのは、上ノ原産の茅の「品質」ですが、いろんな太さの茅が混じっていても、それぞれ使う場所によって適した太さは異なるので、現場で選別して「適材適所」で使っているとのことでした。「刈る側」としては、一本一本の太さにあまりこだわること無く、萬枝師匠の言うように、穂の付いた真直ぐの茅を刈り、雑草を極力取り除いて、定められた太さにしっかりと束ねることが大切だと理解しました。

写真 葺き替え工事中の土倉全景



写真 職人さんから葺替工事の説明を聞く



写真 茅葺に使う道具や材料も現場に展示



写真 茅葺屋根の軒下 下側が霞ヶ浦の細いシマガヤ、上側が上ノ原のカヤ



写真 高床の床下に茅を保管



史跡全体の整備は令和8年度まで続くとのことですが、土倉の茅葺き工事は、令和73月竣工予定です。その時は、大勢でお祝いに駆け付けたいと思います。 (文責・稲)

 




 

2023年11月25日土曜日

活動報告 「茅出し」 -2年続けてつくば市の平沢官衙遺跡の屋根材を搬出-

 

今年の茅出しと山之口終も無事に終わりました。藤岡和子さんが青水のfacebookにその様子を掲載してくれましたので承諾をいただいて転載しました。

(1) Facebook

 

1118-19

茅出しは、上ノ原入会地の仕事納めです。1028日から刈り始め3週間、刈り取った草原に散っているボッチを、作業道や公道に集める体力仕事です。

仲間集い昼飯を食べていた頃に広がるは、息を呑む太陽に輝くボッチ風景。茅出し仕事の爽快感を存分に味わえそうと思われたのですが、、、。

いざ作業開始!

あれよあれよと天候が急変。粉雪が降り始め、徐々に綿雪吹き荒れる中の仕事となりました。それでも、みんなのやる気で1530分には、刈り取ったボッチを道に集めることが出来ました。ご苦労様です。

ボッチが立つ茅場に近づく怪しい雲


雪の降る中

寒さにも負けず茅出し

雪もやむ

翌日は、青空と雨が繰り返す冬がそろそろ始まるそんな気配漂う日。トラックにボッチを積み込みました。途中虹が現れ、その素晴らしさを味わう小休止もあり、無事に作業終了。

運び出されたボッチ

トラックに積み込む

虹🌈


今年の嫁入り先は、642ボッチ(3,210)すべて、古代筑波の正倉院『平沢官衙遺跡』の屋根材になります。

【山の口終い】

十二様へ、入会地の恵みを戴いた感謝と一年無事に作業できた御礼をお参りします。

山之口終い


そして直会へ、自然と人間と神が同じものを口にして清めます。

お供え・直会


すべては繋がっている

どれが勝るでもなく共存し

互いに慈しみ

来年も

孫の代へも

その先まで続いていく

上ノ原入会地でありますように

   和子

 

車座講座

 今回の車座講座は贅沢にも2つの話題で実施しました。

一つは茅の嫁入り先である「平沢官衙遺跡について」をつくば市文化局の石橋さん。平沢官衙遺跡は12月から工事が始まり、1月頃には見学会も行われるとのこと是非訪れたいものです。
 そして「嬬恋村の未来 -野鳥の会への期待-」を移住して3年間地域振興に尽力され今月で退任される上原さん。村の遠景、近景からの魅力を情熱込めて話されました。

石橋さん

上原さん

 

 茅出し数最終結果

トラックに積み込んで今年の茅刈数が確定しました

 ボランティ    660束(132ボッチ)

 茅刈衆(2人)1,300束(260ボッチ)

 合宿      1,025束(205ボッチ)

自伐組      225束(45ボッチ)

合計     3,210束(642ボッチ)


嫁入りボッチに祝い唄♪♬
晩秋の茅場風景

写真は、藤岡さん、笹岡さんに提供いただきました。 報告 草野



2023年11月12日日曜日

「2023茅刈実施報告」 ススキは生育不良でもボランティア・合宿・地元茅刈衆のチカラを結集

 記録にも記憶にもない今年の夏の異常な暑さと降雨の少なさの連続は、人々の生活にも大きな影響を与えたがこの異常気象は植物たち、上ノ原のススキにも影響して近年にない生育不良となり草丈、茎径ともに例年に比べ見劣りがする。雑草は繁茂し、ススキの色も今一で「地球はどうなってしまうのか」とススキが嘆いているようだ。                                   温暖化は急速に進んでいる。

シラカバと茅場とミズナラ林の紅葉


記帳台と後背林


  今年の茅刈は、茅場の中で比較的生育が良く、雑草が少なく、ススキがまとまっているところを探しながら刈る、自然の恵みに感謝しながらもススキの状態に心を痛めながらの茅刈となった。

 1028日、募集に応じて22名が上ノ原に集結、今年の参加者の特徴は、ヨーロッパからの留学生2人を含む東工大グループをはじめとした20代の若者が多く上ノ原茅場は活気に溢れた。

 始まりの式のあと雲越萬枝師匠の茅刈講習、その称賛される技術はもとより気の利いたジョークを交えた指導を聞くのを楽しみにしている。今年のジョークは作り上げたボっチを指して「これなら大阪万博に出しても恥ずかしくない」であった。いいなー。 

茅刈講習

ボっチを抱きしめる師匠

鎌研ぎ
   鎌研ぎ終わり、それぞれが刈り始める。                               生育のいい場所を探しながら茅を刈るのでなかなか能率が上がらない、1時間ほどで2ボッチ刈ったところで巡回してみるとやはり「茅が小さい」との声が多い。ついでに茅場全体を回り,茅刈合宿の時に入る比較的生育が良くまとまっている場所に目星をつけておく。そのあと2ボッチを作りあげたころで3時の休憩。広場にもどると岡田さんの野点の準備が出来ていて、お菓子と一緒にいただく。おいしいお茶を茅場でいただく幸せ。岡田さんいつも有難うございます。

野点で疲れが吹っ飛ぶ

作法にのっとり小首をかしげる


この後も巡回、1ボッチを刈ったころに本日の作業は終了。皆さんに出来高数に応じたボッチ券を配ってみると本日のボッチ数は60ボッチだった。 

ベテランが初心者を指導

              
刈れば日本の屋根が蘇る

 
本日の宿は料理に定評のある「とんち」。                                夕食後の車座講座は東工大学院生、平尾しえなさんの全国茅刈行脚などの話、上ノ原はもとより阿蘇、長野開田高原(カリヤス)、御殿場、大阪(淀川)、筑波、沖縄(ササ)などの全国で茅刈をしている強者、今回はヨーロッパの茅葺の話も含めて各地の茅場の特徴もあり大変勉強になる話題でした。建築が専門の彼女「家は買うものでなく作るもの」の言葉におおいに同感。

2日目、天候はまずまず。生育のいいところが把握できたのか能率が上がり、全体で70ボッチ。2日間で130ボッチ(650束)。ボッチ券で買えるお米、マメ、野菜などの地元産農産物が移動販売車で到着してたちまちのうちに完売。

今年の茅ボッチは昨年に引き続き、つくば市の国指定文化財「平沢官衛遺跡」の屋根の葺き替え用として嫁入り先が決まっている。目標の600ボッチ(3000束)にはまだまだだが条件の悪い中、皆さんよく頑張ってもらった。後は第1陣、2陣の合宿組、そして地元茅刈衆の頑張りで目標を達成することになる。

その茅刈合宿。第1陣は29日7人、30日(終日)6人、31日(午前中)3人が従事した。さすがベテランぞろい成果は100ボッチを超えた。第2陣は11月3,4,5日に6人が入り、これも100ボッチを超えたので合宿で200ボッチ(1000束)。

合宿第2陣のメンバー


きえすぎくん活躍


これに昨年2200束の実績を誇る雲越萬枝さん、渡邊勇三さんの地元茅刈衆が従事して上ノ原茅場には600ボッチ以上が林立し11月18,19茅出し・嫁入り日を待っている。

ボッチが立つ茅場



残っていた紅葉


合宿の帰りの夕暮れの茅場

  報告:草野                                             写真提供:清水さん、柳沼さん、藤岡和子さん。