5月22日(土)千葉県にあるR学園中学部1年生167名が樹木観察会を行い、そのお手伝いをしました。
今回の樹木観察会は7月に予定されている群馬県みなかみ町の「奥利根水源の森林」および上ノ原で行うフィールドワークへ向けての事前学習として位置付けられ、学園キャンパス内で自然・樹木観察の視点や方法を学ぶものです。
その目的は「樹木の様々な特徴を理解し、奥利根でのフィールドワークに活用する」としています。
この観察会は、N大学生物資源科学部の学生40人が事前調査から本番までを企画・実行、森林塾青水はYさんを筆頭に、S塾長、Oさん、Mさん、それに小生、Yさんの仲間である森林インストラクターSさんとYさんの8人がアドバイサーとして当日の観察会に就きました。
観察会は生徒4クラス(A~D)の1クラスを1班10名ぐらいの4班に分けて16班で編成され、学生が各班2名、青水スタッフが各クラスに2名就きました。
生徒全員と指導者の学生、青水の顔合わせの後、各班はそれぞれコモンホールで「葉っぱ」を使った導入部から観察会が始まりました。
ここでは、8種類(ソメイヨシノ、クスノキ、ニッケイ、ヒイラギナンテン、カリン、イチヨウ、ユズリハ、イロハモミジ、)の葉を使って、「これを同じ仲間と思うものにグループ分けしてみましょう」と呼びかける。指導者側のねらいとしては形、大きさ、葉脈、臭いなどの共通点と違いを発見し分けてくれればその後の展開である樹木を見る目を養うにつながる「つかみ」の部分と位置付けています。
しかし、子供たちは、「葉っぱ」をあれこれ弄り回すがグループ分けに関心はない様子、はじめから観察のポイントを教えればそれなりの答えが出るのであろうが、子供たちが自主的に発見してくれることがなによりである。ざわざわした雰囲気の中、学生からの「この葉っぱを見てどう思う?」との呼びかに、生徒たちから出た回答は、「きもい」「かわいい」「おしゃれ」!! いかにも今時の子供?だが、これに対する突っ込みは用意されていなかったようで、そばで聞いていた私は「惜しい」とつぶやいてしまった。子供たちが発した何気ない言葉に「何が?どこが?なぜ?」と突っ込みを入れ、直観的な感想から「違いや、同じところ」が引き出せたかもしれない。
共通点や違いでなく、なんとなく分けられた葉を前に、ユズリハの名前の由来、クスノキの3行葉脈や匂い、ニッケイから作られる香辛料シナモンのこと、イロハモミジの形を説明するが反応はいまひとつ。時間をもてあました学生からアドバイスを求められ、生徒たちの顔を見ながらクスノキには「ダニ部屋」がありダニを飼っている(共生関係?)ことや葉っぱを破り香りを嗅がせてみる。また、ニッケイをちぎり一人の生徒にかじらせると顔をしかめて大げさな反応、「不思議な味でしょう」と振ると、他の生徒たちも恐る恐るかじり始めた。
その後、キャンパスに出て、10種類の樹木を見て回りながら光合成のしくみ、気孔の役割、葉を包んだビニール袋に水がたまっている様子を見せて、植物が蒸散していることを実際に分からせる、根と幹と葉の役割などを説明しながらメモを取る野外学習が進んでいく。
この日は直射日光が強く気温が高い夏日となって生徒達はバテ気味。
それに、途中、ブナの前でクラス単位で共通の話をするため各クラスが集中したこともあって、時間配分が予定通りいかず何度かの待ち時間ができ、他のグループと遭遇する、するとそこでまたはしゃぐなど生徒達の集中力が途切れる。特に女の子達は観察会そのものに興味がないようで引き気味なのはこの年頃によくあるテレなのか。
樹木の葉の付き方や、木肌の違い、根と幹と葉の関係などにはあまり関心なく、ヤマモモの雌の木と雄の木の話などには喰いついてくる、また、光合成や蒸散についてはあらかじめ知識があるのか的確な答えが返ってくるところをみるといわゆる勉強には強い。
暑い中、休憩の時間、木陰に入れて「なぜ木陰が涼しいか」打ち水効果を例えに蒸散によって気化熱で涼しくなること、木の中の水と大気の水の循環の説明をしてみる。また、光合成を行う葉っぱはでんぷん工場でもあり、酸素製造工場でもあるなどを説明するがむつかしいことをやさしく、やさしいことをわかりやすく説明することが、いかに大変かを思い知ってしまう。
さて、野外での観察会を終わり昼食の後は、クラスごとのまとめの時間である。
ここでは、観察した樹木のうちのブナ、クロマツ、ヤマモモ、アオキについて同じところ、違うところ
をまず個人ごとにまとめ次に班ごとにまとめて発表する。
様々な答えが活発に出ていたが指導者側の狙いである特徴の違いなどはあまり出てこず、光合成をする、蒸散をしている、二酸化炭素を吸っている、酸素を出すなどいわゆるお勉強の答えが多い。しかし、その中に、「木は根を持っている」「動かない」など予想しなかった回答があって驚く。
生徒達が理論的に考えたわけではないだろうが、樹木がなぜ光合成や蒸散をするのかに素朴な疑問を持ちそれに対する漠然とした答ではないだろうかと、好意的に捉えることもできる。
だからこそ樹木は種子の散布や自分を保持するために、様々な知恵を駆使している。樹木の不思議さ、森の不思議さ、自然の不思議さにつながっていくのではないだろうか。
これについては、まとめの中で触れておいたが7月の奥利根で更に興味を持って体験学習してくれることに期待がもてます。
この樹木観察会の反省すべき点は導入部のもち方、樹木観察の動線をよく考えること、事前打ち合わせ・下見など技法の面で改善することもあるが、まず、生徒達に学習の一環であることをわからせるため、場合によっては厳しい態度をとってもいいのではないかと感じました。
この日、学生たちはイラストを用意して紙芝居風に解説するなど工夫を凝らし熱心に指導しているのを見て若者たちも「なかなかやるわい」と思った一日でした。
幹事 草野 洋
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