2019年3月16日に上の原の茅場が文化庁の「ふるさと文化財の森」に認定された。これは、全国の文化財を修復するために必要な資材を安定的に供給するための制度で、木材や檜皮,茅,漆などの産地全国76カ所が設定されており、上ノ原を含む4カ所が新たに設定されている
新たなステータスを得た上ノ原で「令和」を目前にした4月29日、「平成」最後の野焼きが無事に終了した。
春になって、藤原は4月3日の4月としては記録的な53cmの積雪、10日前後にも低温と降雪により上ノ原の雪解けは進まなかった。固まった雪の表面を重機でかく乱することによりその後の気温の上昇で雪解けは急速に進む
10連休の真っ最中の4月27日、前日入りして、今年の野焼箇所のBブロック(町道と林道に囲まれた区画)や常設防火帯を見回ると、残雪は思ったより少なく野焼面は充分に確保できるが地面やススキの湿りが大きい。雪によるススキの倒伏状態もいつもより激しいようだ。それでも28日の好天の予報に乾燥が進むと判断して、仮設防火帯を縦に2本、横に1本作り6小区画に区分することにして、刈払機で地面をこするようにして刈り、可燃物を焼失面に掻き込み地面を露出させる作業にとりかかった。ほどなくすると雪が降りはじめ一次吹雪模様でうっすらと積雪する中、17時近く、誰かの「まだやるの」の声がかかるころ仮設防火帯がほぼ完成した。
「参加者の中に神官の方はいませんか~」 一年の安全と収穫を祈る山之口開 |
雪が舞う中の防火帯刈り |
28日は、晴天、気温も高い。一度上ノ原に行き、準備作業をしているところに参加者の一人から「新幹線が動かない、復旧の見通しも立っていない」との緊急連絡、とりあえず、上毛高原に行くと、変電所の停電事故で運行停止、それからの小一時間は参加者に在来線に切り替えるように連絡するのにてんやわんや。
それでも12時半ごろには全員が揃い、はじまりの式、山の口開き、ミーティングを行い作業開始。作業は常設、仮設防火帯からの可燃物のかき込みとウツギなど除伐、ついでに遊ぼう(棒)パン用の棒の採取である。15時には作業もおわり、藤岡さんが午前中に仕込んだパン生地を棒に巻き付けて焼く、遊ぼうパンと岡田さんの野点を楽しんだ。
野焼きの前の作業 可燃物掻き寄せ |
灌木除去 |
遊ぼう(棒)パンでもぐもぐタイム |
今回の野焼きのゲストは多彩な顔触れと多くの初参加者で賑わった。そのなかの一人が塾メンバーの尾島さんがネパールですっかり気に入って招へいした好青年、トレッキングガイドのSubushさん。彼は、2週間の滞在中、桜の季節の会津やみなかみでアウトドア―を体験して、前日入りで野焼の作業を手伝ってもらった。勤勉な性格で力持ちで実によく働いてくれた。参加者も好感を持ってくれたようだ。
会津の桜を楽しんだスバスさん(右) 野焼きで太鼓を披露するスバスさん |
国立環境研究所の西廣先生は二人の韓国からの留学生、茨城自然博物館の小幡さんは、同僚と森林総合研究所の研究者を同行、岐阜大の津田先生は大学院学生を同行、日本自然保護協会の朱宮さんは家族を同行、そのほか、昆虫と植物の相関関係を研究テーマにする大学院生もいてアカデミック色が強く出ていた。
初参加者も多く、中でも子供たちと、親と、夫婦で、家族一緒で参加したグループがほほえましい。一度参加した人がお友達を同行するケースも増えたのはとてもうれしい。北山さんのPRも効いて地元藤原の方の見学者も多くあった。
若者が薪割挑戦 なかなかの腰つき |
今回は、毎日新聞の記者の方も取材に来ていただいて5月4日の朝刊の特集に掲載された。
その夜、宿泊参加者44名に、みなかみ役場高田課長ほか2人、共愛学園前橋国際大学の学生サークル藤原集落応援隊6人も加わった大人数で行われた交流会は、みなかみユネスコエコパーク、ふるさと文化財の森をメインテーマの大いに盛り上がった。
さて、29日、好天に恵まれ、ネパールの祈りの旗「タルチョ」がまるで黄色いハンカチを模したようにはためく中の野焼本番である。
タルチョ(馬風旗)がたなびき安全を祈る |
「タルチョ(風馬旗)」とはチベットの五色の祈祷旗のことで、寺院や橋などによく飾られている。 青・白・赤・緑・黄の順に並んでいてそれぞれが天・風・火・水・地を表し、木版印刷により願い事や六字大明呪と呼ばれる仏教の呪文や、虎、麒麟、鳳凰、龍などが描かれていて経文が書かれている場合は風にはためく度に読経したことになる。今回は、尾島さんにネパールで直接購入してもらった。
地面やススキの湿り気は相変わらずだが幸いに気温も上昇気味、4者協議のGoサインも発せられ、着火隊、ジェットシュター隊、レーキ延焼防止隊が揃って、9時20分ごろ、カラマツ林に隣接して面積が一番広い小区画①から着火、林道わき上部を帯状に焼き、Aブロックへの延焼を防ぎ、常設防火帯、仮設防火帯に沿って同じく帯状に焼き、区画の斜面下真ん中あたりに火を着けて一気に燃やしていくつもりだったが、やはり湿り気が多く、火力が弱いので薄い落葉は焼けるがススキの稈(かん)が焼けずに残ってしまう、いつもの舞い上がるような炎も少ない。安全だが迫力がない、それでもススキの稈がはじける「パチパチ」という音が聞こえているので野焼の効果は十分にあるだろう。
安全な作業のためミーティング |
帯状に焼失面を作る |
湿っていて炎が上がらない |
未黒野出現 |
②~⑥と縞焼き法で次々と焼いていき縞焼き法を実践確認する。出動してくれた消防団の放水の出番もなく11時には鎮火を確認して平成最後の野焼き気も無事に終わった。
この日は、支援をいただいているイオン環境財団の方が視察され、塾の活動と人脈を評価してもらうととともに藤原地域に触れあっていただいた。
イオン環境財団の方々 |
今年の野焼きを表現すると「ミディアム」であったものの、比較的広い面積(推定2.4ha)の野焼きを仮設防火帯と小区画縞焼き法の効果を実践で確認できたこと。 多様な参加者があって人のチカラが塾の運営のチカラとなることことを確信できたことである。
10連休の真っ最中にもかかわらず全面的な協力をいただいたみなかみ町役場、出動いただいた藤原消防団、大勢で押し寄せ、面倒なことをお願いした吉野屋さんに心から感謝いたします。
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