塾のメンバーと協力いただくインストラクターは15名で、そのうち7名は1週間前にキャンパスを下見してどのようにインストラクションするかを検討してこの日に臨みました。
麗澤中の樹木観察のインストラクションのポイントは「五感を使う」こと。「五感」とは「視覚」「味覚」「触覚」「嗅覚」「「聴覚」のことですが、これをキャンパスの樹木や自然観察をしながら体験させます。
視覚は樹木、花、虫、土壌などを目でみることなのでこれが観察の大部分です。
味覚は、葉っぱや花蜜などを口に入れてみなければなりませんが今の子供たちには抵抗があります。もちろん、何でもかんでも口に入れさせられません。触覚は木の肌などに触れさせることですがこれもなぜか直ぐにはできない。嗅覚は、花や葉っぱの良い香りは問題ないがドクダミや土の臭いは躊躇しておっかなびっくりである。難しいのは聴覚、聞こうとすれば風にそよぐ葉の音、虫の羽音、鳥の声などであるがこれを聞き取れる子は感覚がすでに鋭いといってもいい。樹木の肌に耳をくっつけると
梢を渡る風の音(水があがる音ではない)が聞こえるはず、生徒達に、五感を使って
観察しながら「ほかの大事な感覚を使おう」と呼びかけてみました。見たもの、きいたもの味わったものがなぜそうなのだろう。他との違いはなんだろう、これからどうなるのだろうと思いを巡らすことで五感で感じたものが生きてくる。見ていても見えない、聞いていても聞こえない状態のままにしない。
五感を使った樹木観察をアカメガシワで再現してみましょう。
アカメガシワ(写真)
視覚 : ① 若い葉が赤い色している
②よく見ると葉の上をアリがたむろしている
③葉柄が長い
これらから次のことを考えさせる
・赤いのはなぜ?
・赤い葉で光合成はできているか(少し上級)
・アリは何をしている?
・葉柄が長いことのメリットは?
味覚 : 若い葉を食べさせてみる(山菜のひとつ)
・味はないが柔らかい
触覚 : 赤い葉を触らせる
・ザラザラした毛がある これは何? 何のためにある?
聴覚 : 耳を澄ませて長い葉柄で揺れる葉の音を聞かせる
・サラサラという葉が揺れる音が聞こえる
・なぜ揺れる易いようにしている?
嗅覚 : 葉っぱをもんで嗅がせる
・さわやかな香りがする。何の香り何だろう?
五感を使う時、知覚、つまり「考えさせる」まで誘導してパイオニア樹種である
アカメガシワの成長戦略を説明する。
早く成長しなければならないパイオニア樹種にとっては葉は光合成をする大事なと
ころ、毛(星状毛)は若いおいしいをだべる虫や未だ未熟な若い葉の組織を強い紫
外線から守っている。
葉に密線をもってアリを呼び寄せて、毛虫などを捕捉させている。
長い葉柄は葉が重ならないで光を浴びられる。長い葉柄はは風に揺れやすく葉の
裏の二酸化炭素を入れ替えている。
パイオニア樹種の生存戦略から森林遷移を説明することもできるし、葉を食器や食物をつつむのに使った人間の暮らしとの関係まで説明が可能である。
麗澤学園のキャンパスは広大で東京ドームの10倍の広さのなかに多様でたくさんの樹木や草花、灌木から大木まであり自然豊か、ミニ森林もあり森林土壌が存在しミニ森林生態系も存在しています。したがって、微生物、土壌動物などの分解者、それを捕食する小動物、鳥類がいてミニ森林生態系が出来ている。蛇やトカゲも見られる、神宮の森のようにオオタカがいてもおかしくない。
朝下見の時に見た蛇「ヒカギリ」(体長20cmの大人) かまれたらその日限りで死ぬというので名前がついたようだが毒蛇でない |
動物や鳥や風が運んだと思われる樹木があちこちに見られ、稚樹のそばには母樹があり、自然のダイナミックで繊細な動きが感じられる。五感を使ってこのことが感じられるようになってほしい。でもことは簡単ではない、ニッケイを食べない、林の中に入りたがらない、虫に触れない、土壌を手に載せようとするとひっこめる子がいる。それでも段々と抵抗がなくなり進んで土に触り、葉っぱの分解の様子やそれを営む虫を見つけて手で慈しむ子が出てきたり、教室に帰り、振り返りの時間に観察で集めた葉っぱなどをイラスト風に張ったグループも出てきたのはうれしい。
教室での振り返り |
生徒たちの作品 |
それぞれの葉の特徴をとらえた作品 |
今年のキャンパスはエゴノキ、ホオノキなどの花が良く見えて、それを訪れる昆虫が多くてとても助かった。
エゴノキの清楚な花 たくさんのハナバチが訪花していた |
めったに見られないホオノキの花(雌雄異熟の雄花の状態) この付近には高貴な香りが漂う |
模型で風を使った種が飛ぶ様子を体験 |
10月には紅葉の中でスケールが大きいみなかみ藤原の自然の中で、湧水や沢から水と森の関係や樹木、森林土壌、動物の存在痕跡から森の営みを体験してもらいます。
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