2022年10月10日月曜日

活動報告「茅穂採種とミズナラ林整備」

 今年も10月になって、これから秋本番、上ノ原茅場は紅葉と草紅葉になり収穫の時期を迎えます。その前に、ススキの穂(種)を採取する作業を活動として今年初めて実施しました。

 ことの発端は、さかのぼること3~4年前、ヘリコプターの会社に勤めていた時、災害地を一緒に回った緑化技術者の友人から航空緑化の資材として上ノ原のススキの種の採取の話があり、その友人が種苗会社の技術者を連れて上ノ原を訪れ、友人は一緒茅刈もしました。その後音沙汰がなかったのですが今年の8月中旬にメールで種採取の打診がありました。その訳は、かなり以前から生物多様性・生態系保全に影響する輸入種制限・国内種の使用遵守をかなり強く叫ばれていたですが国内種の確保がむつかしいことやコストの関係で輸入種に頼った施工が行われていました(輸入種と言って日本の種を中国などで栽培したものであり、海外で栽培することで現地のものと交雑して遺伝子の攪乱がすでに起こっていることも問題とされている)。それがコロナの影響で中国や東アジアなどとの往来がむつかしくなり、加えてアメリカの干ばつの影響で緑化植物の種子輸入が困難となったことで「日本でも種子を採る」という気運が高まったようです。このように施工地の近場で採取された種を使い生態系や生育に影響を及ぼさないようにすることを「郷土種緑化(植栽)」といいます。

「航空緑化」は、急峻、大規模・広範囲、道路がないなど機械や人力で緑化が困難な山腹崩壊地や山火事跡地をヘリコプターを使い緑化する方法で、バケットという大きなバケツのようなものに、ススキ、ヤシャブシ、ウツギなどの種子、肥料、接着剤、着色剤と植生基材(どろどろの液状のもの)を混合したものを散布して植生回復により土砂流出防止を図る工法で「国土強靭化」に貢献する災害復旧工事です。ススキは、貧栄養のやせ地でもいち早く発芽・生育し、土砂の移動を抑え、樹木の種子の生育基盤を作る大切な役目を果たします。

このような山腹崩壊地が航空緑化の対象地

ヘリに緑化資材を積み込む地上基地
左奥が緑化する崩壊地

ヘリにぶら下げたバケット

ススキは、風媒花で8月~9月にかけてその個体の2mぐらいの範囲で受粉し、その後結実しますが受粉率は約3割とされ、同じイネ科のイネは自家受粉するので受粉率は90%になるのに比べて自家受粉しないススキはかなり低いようです。結実した種は熟すると綿毛で風に乗って新天地に運ばれます。受粉・結実していないものは綿毛のままススキの穂に(枯れ尾花)状態で残ります。なので、枯れ尾花の種は「しいな」ということになります。

10月初めの上ノ原のススキ




熟したススキ

この風景がいい
9月初旬の活動の際に花が咲き穂が赤くなっているのを確認していますので10月の初旬なら熟しているだろうと今回の活動で採種を試みました。

ススキの種の付き具合

ススキの綿毛と種

試みという意味は、本格的には来年からになりますので、今年は採取時期・方法を検討するとともに1日どのくらい採種可能かの「行程調査」を行い、データをもとに1kg当たりの売り渡し価格(買い上げ価格)を設定(交渉)することにしました。1日目に、全員で茅穂を採取することにして、百均で買ったハサミで茅穂を刈り、腰に下げた土嚢袋に入れていきます。1時間もすると袋が重くなりました。同時に参加者の中から若・壮・老(男女)の代表を選人して1時間の採取量を測定しました。その結果、生総重量で5.34kg、平均1.07kgとなりました。

代表5人の収穫

茅刈でススキ全体を収穫の対象として見ていましたが、茅穂に注目するとまた違った風景が見えます。青空をバックに穂を見上げるようにチョキチョキ。その音もいい響きです。背の高いススキの時はすこし苦労しますがその代わりいい穂が取れます。穂の採取は道路から離れていて茅刈をしないところ、屋根茅に不向きな低いススキが生えているところを選びます。こうして11名が採った茅穂は約15kg、これは生重量ですので乾燥させると半分ぐらいになるでしょう。これを古民家に運び1昼夜乾燥させ、次の日に段ボールに詰めて種苗会社送りました。

古民家で乾燥


種苗会社からの連絡によると少し湿り気はあったが、種の付き具合も問題ないとのこと。採取時期、方法はこれで何とかなりそうです。上ノ原のススキの種が関東周辺の「郷土種」として崩壊地の復旧に貢献する目途がつきました。同時に今まで無価値だった茅穂が「茅場の恵み」となり、集落の現金収入ひいては茅場の保全に繋がりまそうです。4年前の種まきが芽を出しました。この後の生育に乞うご期待。

 2日目は、「ゆるぶの森」のミズナラ林整備を行いました。

北山塾長が「抜き切り」をする際に思った方向に安全に伐倒するために必要な、ロープ作業を指導しましたがなかなかうまくいきませんでした。その後、安全性確保、材の利用、将来の生育を考慮した選木の方法の指導、実際に手ノコを使い伐採する方法などを指導してもらいました。

手ノコ伐採
10月の好天に恵まれた新しい試みの作業もうまくいき、いよいよ10月末は茅刈です。

報告 草野 今田和子さんの写真を一部拝借しました。


 

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