2022年11月15日火曜日

麗澤中学校奥利根水源の森林フィールドワーク ~上ノ原茅場入会の森~

  1026日清々しい秋晴れの空に紅葉輝く日、麗澤中学校1年生の『自分(ゆめ)プロジェクト』奥利根水源の森林フィールドワークに、森林塾青水メンバー数人がインストラクターとして関わってきました。

 自分(ゆめ)プロジェクトとは、麗澤中学・高等学校6年間を通じて麗澤教育が大切にしている『感謝の心』『思いやりの心』『自立の心』を育てるプロジェクトです。キーワードは自分そして夢。将来に向かって生きる中で困難にぶつかったとき、しっかりとした目標・夢・志が再びチャレンジする自分の支えとなります。プロジェクトでは、様々な体験や実践を通じて、自分のことを真剣に考え、関心・適性・能力を探り、自己理解を深めていきます。その第一歩が、奥利根水源の森林フィールドワークです。5月に行われた学校内での五感樹木観察会も、秋に行う水源の森でのフィールドワークに向けた意識付けのため実施しています。

 ところが、成長過程にある子どもたちにとって大切な『自分(ゆめ)プロジェクト』の体験分野フィールドワークが、新型コロナウイルス感染防止対策のため、2年間の中止を余儀なくされました。開催に向けた感染対策を練り、今年ようやく満を持して再開です。

 今年の1年生は、小学5年生(10歳)からコロナ社会で生活しています。この2年間で環境は大きく変わりました。オンライン授業やリモートワーク、黙食や個人食などの社会情勢がもたらすリアリティの損失。それは、子どもたちを取り巻く教育・遊び・生活に至る日常全てに影響を与えてきました。そんな状況の中、コロナ前とまったく同じプログラムを行うのは、自分(ゆめ)プロジェクトが目指す教育に添えないと思いました。「五感で感じましょう」「自由に表現しましょう」という自己理解を深める投げかけに、今の環境がストップをかけてしまうと考えたからです。そういった現状と、5月に行った五感樹木観察会での子どもたちの様子を踏まえ、秋のフィールドワークのテーマを『リアリティ~直に触れ感じる~』としました。リアリティを深く体感するには、『癒し』がポイントになると考え、癒し教育の第一人者徳島大学などで教鞭をとるTOEC代表伊勢達郎氏が書かれた本を参考に、解放と自由意志(楽しい遊び)を重点にしたプログラムを構成しました。 

*** 癒しとは、気づきであり、自分がありのままで生きるためのきっかけである。

 直感的に脳がシフトする中にある、自然を含めた全体性の中に生きることの気づきである。***

                          =本より抜粋= 

 癒しプログラムは、遊びと学びを分けない、心身全体に働きかける遊学であることが前提です。そのためには、全プログラムを、ひとつの流れに組み立てることが鍵となります。そこで、コロナ前から行っていたプログラム、茅葺き屋根古民家見学・茅刈り体験・自然観察の3つに絞り、各々タイトル付け、全てが繋がりひとつの流れと感じるようにしました。また、ひとつひとつのプログラムの時間を長くし、ゆったりとした時間の中で全身で体験できる時間を取りました。 

 

自然と暮らし~雲越家住宅古民家見学~60

自然と仕事~茅刈り体験~80分

自然を感じる~観察・遊び・ヒーリング~130

 ここで、今回のフィールドワークの特徴となった『自然を感じる』プログラムを紹介します。 

 <導入=人=>  

自分を感じる(呼吸を感じる)

相手を感じる(背中合わせになり相手の呼吸を感じる) 

相手との関わりを感じる(押す・もたれる) 

シェアリング

<ゆるぶの森・草原散策>

自分の暮らす街と上ノ原の比較

自分の暮らしと自然に寄り添う暮らしの比較(薪炭林・茅場利用)

暮らしの水はどこからくる?水源の泉

シェアリング

<自然と自分>

導入で行った人とのワークを自然物を相手に行う

好きな自然物を選ぶ

五感を働かせて相手(自然物)の呼吸を感じる

自然物と押す・もたれる

シェアリング(相手が人の場合、自然物の場合の比較など)

<視覚を封じた目隠しトレイル> 

 樹木間を一本のロープでつなぎ、手探りでロープの端までたどる

  インストラクターは、導入をプログラムの始めに行うことを必須とし、他のワークをどのタイミングに組み込むかは、各自インストラクターに委ねました。インストラクターも、子どもたちとのリアリティな関わりの中で、伝えたいことや、気づいて欲しいことが湧き上がってくるよう、時間の余白を作り、マニュアルではない構成に努めました。そういった一瞬一瞬の集合が互いに関わることで、生きた体験となりました。

 フィールドワーク当日のそういった体験の数々、子どもたちの様子について、ここで多くは語りません。子どもたちひとりひとりが感じることで、その時がありのままの自分の学びであり、気づきであり、癒しになっていたからです。是非、このブログをお読み下さっているみなさまも、掲載している写真から想像を膨らませ、子どもたちが体感した秋の上ノ原へ行ってみて下さい。上ノ原の風を今、感じませんか。

  それでも出し惜しんでいると思われるかもしれないので、ほんの少しだけお伝えします。散策途中ある地点に着きました。

「はい。ここで荷物を降ろして遊びましょう」

そう子どもたちに呼びかけた時の解放した表情や声は、それはそれは希望に満ちたものでした。

「友だちは押したら直ぐ返してくれるから楽だったけど、樹は自分が頑張ってやらないと(意識を向けないと)返してくれない」

そう感想を伝えてくれた子。学校ではおとなしい子が、蔓をのぼり自分の背丈まで上がった姿に驚いている子。 

 友情を確かめ合ったり、知らなかった友だちの姿に気づけたり、水源の水が美味しかったり、風が吹き木々は揺れ木の葉が舞ったり、ネズミの巣穴前にドングリが同じ向きで並んでいたり。そういった小さな気づきや小さな関わりが、自分(ゆめ)プロジェクトの一歩ではないでしょうか。

 マイナスなことばかり浮かんでくるコロナ社会ですが、このフィールドワークにとっては、より深く里山文化上ノ原を体験するプログラムに練り直し、実践する良い機会となったと感じています。また来年、どんな子どもたちに出会えるのか今から楽しみです。


 当日の子供たちの生き生きした様子の一部を見てください。

茅刈指導の様子

                              
岩の上で瞑想する女の子

水源の一つ柞の泉で


お互いの背中で押し合って立ち上がる


           
草原の向こうに谷川を望み歓声

ブドウつるにぶら下がる

木登り

目隠しトレイル

背中を合わせて冥想、友達を感じ
落ち葉の音、風などそして自分を感じる

なんでも遊びにしてしまう





        報告 幹事 藤岡和子

 

 

 

 

 

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