―大川「森里海連環」と利根川「流域コモンズ」―
6月4日。東日本大震災の被災地、気仙沼・西舞根の水山養殖場に足を運んだ。畠山重篤さんの牡蠣養殖筏70基の全てが壊滅した現場だ。まだまだ山積する瓦礫の山に言葉を失う。
難を逃れた杉山の間伐材で作った養殖筏1基が浮かべられていたのが唯一の光明だった。
養殖場に続く標高25㍍の高台にある畠山邸に向かう。疲れも見せず笑顔で迎えてくれた奥さまに、11年ぶりの再会のご挨拶。舞根集落は52戸、うち44戸が津波で家を流された。でも、みんな「舞根湾の見える小高い所に移りたい。海で生きる元の暮らしに戻りたい」と仰っている由。「海は怖いけど怨んではいない。海で生きていくしかない。何年かかっても必ず再生します」。キーパーソン畠山さんが、海に生きてきた集落の人々の気持ちを要約してくれた。
翌5日。室根村の植樹祭の会場・矢越山へ。気仙沼湾や舞根湾を潤す大川の水源だ。今年で23回を数える「森は海の恋人」植樹祭。鎮魂と復興を祈願して、全国から志を同じくする老若男女1200人が集った。
今年はとても無理と諦めていた畠山さんを、水源地・室根集落の皆さんが「準備は全てやるので、今年は客人として是非来てくれ」と説得されて開催となった次第。正に、上下流交流の絆の証であり、森里海連環そのものと言えよう。畠山さんの開会挨拶
に曰く「今年は、植樹祭終了後の交流会に海の幸を振る舞えなくて申し訳ない。来年は、必ず持ってきます」と。種牡蠣から2年かかるカキは無理としても、ホタテやホヤ(海のマンゴ!)は大丈夫。心にしみる言葉だった。
植樹作業を終えて、15年前(第7回)にナナカマドやホウノキの苗木を植えた場所に足を運んでみた。想像以上の成育ぶりで、背の低い文字通り「ひこばえの森」が、わずか15年でこんもりとした「柞の森」になっていた。太陽と雨水と大地、巧まざる自然の力の偉大さを実感した。
大川の水源地は岩手県一関市室根村、河口は東に隣接する宮城県気仙沼市。全長25㎞の短い流域だ。一方、利根川の水源は群馬県みなかみ町藤原集落、河口は千葉県銚子市。全長322㎞で流域には200をこえる市町村がある。でも、水源や水の恩恵に与っている点や流域のみんなで支えるべき環境資源であることに違いはない。「森里海連環」も「流域コモンズ」も、自然の恵み(生態系サービス)に感謝し大切にしようという実践理念『飲水思源』を共有する。
森は海を海は森を恋いながら 悠久よりの愛紡ぎゆく 熊谷龍子
2011.6.6(清水)
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