2022年度と2023年度の二年にわたり、上ノ原で刈り取られた茅、合計凡そ六千束が、茨城県つくば市の平沢官衙遺跡に建つ、復元土壁双倉の茅屋根の葺き替え工事に使用されています。森林塾青水では2月4日に、つくば市の主催で実施された見学会に会員他11名が参加しました。
国指定史跡である平沢官衙遺跡は、奈良・平安期の筑波郡の郡役所跡で、昭和50年の県営住宅建設工事に際して発見され、その後発掘調査と復元整備工事が進められ、平成15年に、「平沢官衙遺跡歴史ひろば」として正式に開園しました。
史跡周辺の地域は日本百名山の一つ、筑波山の参詣道の入口にあたる古くからの観光名所です。参加者は午前中つくば駅に集合し、市営バスの「つくバス」に揺られて史跡西側の北条地区に移動、昼食前に、かつて醤油製造業を営んでいた「宮清大蔵」という江戸時代末に建てられた登録文化財の建物を見学してから、歩いて平沢官衙に移動しました。
写真 復元建物群の遠景 後方に筑波山が見える
史跡に到着すると、昨年の茅出しに参加いただき、車座講座で遺跡についてお話しいただいた、つくば市文化財課の石橋充課長より、今度は実際に現場を見ながら解説いただきました。
写真 石橋課長より遺跡全体の説明を聞く
三棟ある復元建物は、かつて稲を保存していた正倉で、萱葺きの土倉双倉の右側は校倉造り、左側には板倉造りで復元されています。参加者は校倉造りの木組みの実際を、模型を使って体験することができました。
写真 模型を使って校倉の木組みを体験
続いて、実際に屋根に上がり、現場で茅葺き工事の現場を見学しました。茅葺き文化協会の事務局長であり、(株)里山建築研究所のスタッフとして現場の施行管理を担当している上野弥智代さんと、工事に従事している職人さんから話を伺いました。今回の工事には上ノ原のほか、地元つくば市の高エネルギー加速器研究機構はじめ、県内数か所から茅を調達しているとのことです。
一番気になるのは、上ノ原産の茅の「品質」ですが、いろんな太さの茅が混じっていても、それぞれ使う場所によって適した太さは異なるので、現場で選別して「適材適所」で使っているとのことでした。「刈る側」としては、一本一本の太さにあまりこだわること無く、萬枝師匠の言うように、穂の付いた真直ぐの茅を刈り、雑草を極力取り除いて、定められた太さにしっかりと束ねることが大切だと理解しました。
写真 葺き替え工事中の土倉全景
写真 職人さんから葺替工事の説明を聞く
写真 茅葺に使う道具や材料も現場に展示
写真 茅葺屋根の軒下 下側が霞ヶ浦の細いシマガヤ、上側が上ノ原のカヤ
写真 高床の床下に茅を保管
史跡全体の整備は令和8年度まで続くとのことですが、土倉の茅葺き工事は、令和7年3月竣工予定です。その時は、大勢でお祝いに駆け付けたいと思います。 (文責・稲)
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