2014年11月29日土曜日

茅ボッチ運びだして雪ヒラリ

11月15・16日の定例活動は、10月に刈り取った「茅ボッチ」の運び出し作業を、15名の会員、会友が参加して実施しました。初日は雪が降る中での作業となりましたが、それだけに参加者にとって忘れ難い経験となったようです。

二日目はすべての作業を終えた後、一年間の感謝の気持ちを込めて「山の口終い」を行い、今年のフィールドでの活動を終了しました。会員から寄せられた感想をご覧ください。
(2014.11.29 稲貴夫記)

           茅ボッチ運びだして雪ヒラリ

街中とはえらい違い。粉雪がふってきた。3週間前の茅刈りのときには抜けるような青空、
あったかい上ノ原だったのに。車が停まった原っぱの入り口で、萬枝さんが焚火を焚きつけている姿が見えた。まだ、赤い炎がみえず白い煙が少し。雪のせいでいつも柔らかな稜線をみせている
須原尾根もはっきりせず、もちろん上州武尊山の頂も。

焚火に近寄る。太い枝の下から炎がチロチロしている。濡れた枝、さむい中での火おこしは時間がかかるようだ。でも、ふだん見る焚火とは感じがちがう。薪は井桁に組まれるのがふつうなのに、萬枝さんは薪を平行においている。太さ15~20cm、長さ1m程度の細い丸太を上に積み、もえやすい小枝などが下にあってそこから炎が出ているようだ。どうやら、風は一方向に流れやすいとの、生活の知恵とみた。あり合わせのうちわ様のもので煽ぐと、すぐに大きな炎が丸太のあいだから吹き出してきた。

萬枝さんから、ボッチを運び出すための縄かけ方の指導を受ける。萬枝さんはムダ口を叩かない。腰縄にぶら下げた縄の1本をとり、その縄を坂の方向と垂直におく。「おいた縄が、ボッチの下端から50cmくらいの高さになるよう、ボッチを横たえるんだ」と。左膝でボッチを押さえ、左手で手前の縄を持ち右手でボッチの向かい側の縄を持つ。捻じる。たしか、2回程度だったと思う。よじった縄のそれぞれを固くまいた縄の下を通して、結ぶ。「結び方は一重で充分」と。雪がふり続いている。
草原のあちこちに散らばって立っているボッチに縄かけをし、眼見当で1ボッチ30kgくらいありそうな茅束を2ボッチ、あるいは1ボッチを肩にして、運搬車がとおるところまで引きずりおろす。起伏があるので下り坂一方ではないところもある。ボッチを下してまた、ハアハア息をつきながら散在するボッチを求めて坂を上る。傍目には、ソルジェニーツイン(ロシアの作家)の「イワン・デ二―ソヴィッチの1日」に出てくる囚人のように見えるだろう。仲間内で‘収容所列島だな’と笑う。

ボランティアの作った茅ボッチと、地元古老たちの作った茅ボッチは、重さも結束の固さも、ボッチ内の空間の大きさもまるで違う。それは、ボッチを肩に載せて実感する。工場生産の商品群の中で生活している我が身にとって、身体を使った仕事や手で物づくりをするのは、まさに千載一隅の機会(千載一隅のような4字熟語も若い世代には縁遠い時代かも)。いま、あらためて肉体労働のありがたさを知る。あけっぴろげな上ノ原の空間で、細胞活性化をしみじみと感じる。立って食べている弁当の中に、雪片がヒラリと舞いこむ。まだ、雪はふり積もる。
(川端英雄記)

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