気になっていた天気予報は両日とも降雨とのこと。この2,3年初雪に見舞われ雪の中で茅ボッチをかつぎ出す姿はまるで収容所の捕虜の過酷な作業と言えるような「茅出し」となっていました。
今年は、日程を1週間早め11月14,15日にしたので雪こそないものの、やはりお天気には恵まれないようです。自然には逆らえない、無理はしないがどんな天候でもできる範囲でやるのが山仕事です。今回は首都圏からの参加者14名、地元の茅刈衆4名、町田工業3名、それに地域振興をテーマにしているゼミ学生のお手伝いをいただきました。
10月24,25日に塾の定例活動で参加者が刈った茅ボッチ、地元藤原の茅刈衆4人刈った茅ボッチが上ノ原に林立する風景はもうしばらくそのままにして楽しみたいところですが、この茅ボッチには次の大事な使命が待っています。
木枯らしに耐えた茅ボッチが林立する上ノ原 |
それにはトラックに積み込める作業道脇まで担ぎ(引き)出し、町田工業さんに買い取ってもらって、加工して重要建物文化財などの屋根茅に利用されることです。「茅出し」は茅ボッチが世に出て新たな価値を生むため重要な作業なのです。
雨具を着けて、びしょ濡れの作業を覚悟しましたが、幸いにも小雨模様の中での作業となり、あらかじめ地元の方にまとめていただいていたボランティアが刈ったボッチの引き出しから始めました。
作業は、ボッチを倒し、腰に当たるところ付近を一広ぐらいのビニールひもで縛り、2ボッチの穂先をかついで挽きずり出します。下りのところはいいのですが上りは重みが2倍ぐらいに増します。おまけに前日からの雨で水分を含み、木枯らしに倒れていた乾燥が不十分なボッチはかなりの重量です。
倒して縛って |
穂先をもって引きずり出す |
道路端に集積 |
ボランティアが刈った茅ボッチは役場の大芦倉庫にストックするため、町田工業のダンプトラックで運びました。茅刈りの時の集計では88ボッチだったのが、積み込んでみると98ボッチ(490束)、どうやら、目玉をつけて擬人化したため、いつの間にか増えてしまったようです。
ボランティアが刈った茅ボッチは倉庫へ |
倉庫でストック、スグリで色男(女)にします |
今年は、4人の村人に茅刈りをしてもらいましたので、800ボッチ(4000束)を超える数があり、茅の生育状態もよく例年に比べて、背が高く質の良い茅ボッチです
2日で終わるかと心配もしましたが、参加者に地元NPOのKさんたちの炭焼きの様子の見学をさせようと15時半に本日の作業は終了としました。
窯出し 熱い!! |
今回の宿は、温泉が引湯されているロッジ「たかね」。重量労働に疲れた体を癒し、夕食後は、ご主人を語り部にした車座講座となりました。
テーマは「藤原の山河・自然に魅せられて」。
ここのご主人は、奥利根の山河、自然をこよなく愛しておられ、自らも「俺の病は奥利根病」とおっしゃっています。現在68歳ですがこれまで幾度となく、利根川源流遡行(注)を挙行され、昨年の9月の活動の際は、67歳の誕生日に3日間かけて利根川の最初の一滴出るところまでいかれたお話を聞きました。また、奥利根山岳会に所属され「利根の山なら任せてよ」とおっしゃる山男でもあります。さらに、営林署の現場職員として40年以上勤務して山づくりに従事された方でどんな山仕事でもこなされるまさに奥利根の山のプロといえます。奥利根の山や川、動物、これまでの様々な経験や藤原の暮らしについて語っていただき、特に、「利根川源流遡行」(注)を語る際には、山のプロとしての山への愛情やたくましさがあふれていました。
奥利根の魅力を語る |
注)利根川の源流は群馬県の最北端の大水上山(1,831m)であり、この山の南面にある三角形の雪渓(通称「三角雪渓」)が源頭である。ここに至るには、利根川の最上流にある八木沢ダムから、沢を遡上すること3日を要し、また困難なⅣ級以上の滝が連続し、沢登りとしては難易度としては最高度のグレードとなる。
2日目は、雨も上がり、遅れを取りもどせると喜んだものの窯出しが見られるとの情報が入ったため取り掛かりが遅れたことや思った以上に遠距離の引き出しとなって
11時になっても相当のボッチが残ってしましたが、皆さん精力的にやっていただき無事12時には全部のボッチを運び出すことが出来ました。
町田工業のトラックに積まれて中之条に行く茅ボッチを見て大事な娘を嫁に出す気持ちになってしまいました。
町田工業のトラックに積まれて中之条に行く茅ボッチを見て大事な娘を嫁に出す気持ちになってしまいました。
今年の、茅刈り実績は、
地元4人衆の分 5060束(1012ボッチ)
ボランティア分 490束( 98ボッチ)
合計 5550束(1110ボッチ)
となりました。
この後は山の神様(十二様)に作業の終わりを報告し、収穫と無事に終了したことに感謝する、「山之口終い」神事を茅刈り衆の一人であるBさんの采配で行い、お神酒で献杯しました。
この日は野焼きから茅出しまで年間の活動の中で一番、喜びを感じる時です。山の神様のおかげで自然の恵みである茅が収穫できしかも無事に終了することが出来ました。ホッとするとともに大自然への感謝とご協力いただいた皆様に心から御礼申し上げます。
山ノ神に仕事じまいの報告と大自然の恵みをいただいたことに感謝 |
参加者の皆様、黙々と重労働に耐えていただきありがとうございました。
いい汗をかいた後のいい笑顔 |
このあと、看板はずし、炭窯で出来上がった白炭を少し分けていただき解散となりました。
草野記
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