2018年5月7日月曜日

車座講座 「火の文化と古代発火法」  講師 関根秀樹さん


 野焼の初日、夕食後、本年度最初の「車座講座」が吉野屋の大広間で開催されました。講師は古代技術史・民族文化研究家である和光大学の関根秀樹さん。「火の文化と古代発火法」について、関根さんが再現した古代の発火具を実際に使いながらの楽しい講座となりました。野焼きを安全に、そして効果的に実施するには火の扱い方が大きな課題ですが、火の文化について、その根源を学習する有意義な機会ともなりました。講座の概要は以下の通りです。
車座講座 関根先生
 

○古代発火具の概要

キリモミ(錐揉み)式などの古代の発火具の形状や材質、使用法は、関根さんの師である科学・技術史研究者の岩城正夫氏が、実験を積み重ねながら復元・再発見し確立したものである。

古式の発火方法を継承しているとされる伊勢神宮や出雲大社が神事の中で行っている火鑽り(ひきり)は、儀式として相応しい形に道具が大型化し、アレンジされたものである。特に伊勢神宮のマイギリ(舞錐)は弥生時代からのものと言われたりするが、実際には江戸時代後期に伊勢ソロバンの穴開けに使用していた舞錐を転用したものである。戦後、登呂遺跡から火鑽臼が出土し、別の所から出た舞錐の横木の一部に似た形の木片が見つかった際、伊勢神宮の舞錐と同じ発火具が登呂遺跡で使われていたという解釈が、反論があったにも拘わらずメディアにも取り上げられて独り歩きしてしまったのである。

○実演を交えながら

キリモミ式で火種ができるまでの世界記録は、私と、学生時代の同級生が持っている3秒である。摩擦式発火法の要点は道具そのものにある。道具の大きさや材質、その形状と加工法に緻密な工夫がなされており、これらの条件を満たす発火具であれば誰でも火を起こすことができる。「電気もガスもない昔は、火を起こすのも大変だった」というのは、現代人の勝手な固定観念にすぎない。

参加者も挑戦

○火の神話

古代の発火法は日本の神話にも反映されている。イザナミは最後に火の神カグツチを生んだことにより火傷で死んでしまうが、これは摩擦式発火具の記憶とともに、利便性と危険性をあわせ持つ火の二面性を表現している。

○山火事の原因は失火と落雷

山火事の原因として、「木と木が風で擦り合わさって火が起き火事になることがある」という人がいるが、特に湿度の高い日本では、これで火がつくことは絶対にない。昔、宮城県のゴルフ場で、ゴルファーが誤ってアイアンで草むらの石をたたき、火打石のように火花が出て枯芝に点火し、火事になったことはある。

関根さんは古代の発火具だけでなく、ブリキ缶二つを糸電話のように長いばねで結んだ不思議な楽器アナラボス、

 
不思議な音を出すアナラボス
 
回転させながら紐をもって振り回し風を切るような音を出すウナリ木、そして竹トンボなど、関根さん自作の楽器や遊具も準備いただき、それを実際に使っての楽しいひと時となりました。また、関根さんはブルース・リーより速い、と言われたヌンチャクの名手です。実際に演じている姿は、「ぴよぴよヌンチャク」で検索してユーチューブでご覧ください。(文責 稲)

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