去る12月5日、草野事務局長以下森林塾青水の有志6名は、和歌山県・生石高原で行われた茅刈りイベントに参加し、主催者である「むすび屋弥右ヱ門茅葺きプロジェクト」のメンバーと交流の機会を得ました。茅刈りの他、世界遺産の視察等を通して学ぶことも多かったツアーのあらましを報告します。
1日目(12月3日)
一行は南海電鉄の橋本駅に集合し、レンタカーで高野山へと向かいました。平安時代はじめ、弘法大師空海は峰々に囲まれた海抜九百メートル、総面積三十三万坪の高野山に、信権密教の霊場を開きました。我々はまず、高野山真言宗の総本山である金剛峯寺を拝観、他に金堂などの伽藍や高野山の地主神を祀る御社(みやしろ)、空海の御廟である奥之院などを二時間ほどかけてめぐりました。
高野山金剛峰寺 |
金剛峰寺の庭園 |
2日目(12月4日)
午前中、丹生都比売神社を参拝。神社のあるかつらぎ町天野は、十三年前に森林文化協会が実施した「にほんの里百選」選定地の一つ。神社では昇殿参拝の後、社務所で宮司の丹生晃市さんより興味深いお話を伺うことができました。
・丹生都比売神社の歴史は古く、『日本書紀』神功皇后紀に登場する紀伊國の天野祝(あまののはふり)が当社の神官であったこと。
・高野山はもともと丹生都比売神社の神領地で、空海を高野山に導いたのが祭神である丹生都比売大神であること。
・以来、同社は真言密教の守護神として位置付けられ、こうした神仏関係が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産に登録されたこと。
・楼門とともに重要文化財に指定されている本殿は、春日造りとしては日本最大であること。
話題は丹生都比売神社と高野山との深い関係から、杉の巨木が生い茂る境内林管理の問題まで及び、古代から現代に至る時代を越えたお話でした。
本殿鳥居と太鼓橋 |
本殿と後背林 |
高野山との関係をわかり易く説明いただいた丹生宮司さんと |
高野山や天野の里への道と同じく、曲がりくねった山道を上がって突然開けた山頂部が生石高原です。この日も「茅葺きプロジェクト」のメンバーは作業をしていたので、我々は頂からの風景を楽しんだ後に現場へ移動。プロジェクト取り纏め役の豊原さんや和歌山大学の学生さんと一緒に茅束を運び出しました。
生石高原風景 |
寒風が吹き寒かった |
この日は紀美野町の農家民宿「四季の宿きみの」。移住組のリタイア夫婦が営んでいる宿で、夕食は山海の新鮮な素材を使った逸品。お酒も美味しくいただきました。
三日目はいよいよ茅刈り本番。この日は地元ロータリークラブによる茅刈りを我々がお手伝いする形で実施。参加者は全部で三十数名。最初に草野事務局長が茅刈りのやり方を説明。その後、3班に別れそれぞれに2名のメンバーが付いて指導しながら茅刈りを進めました。
ここでは刈った茅は結束器を使って束ね、一束ごとにロープで結束するという方法であり、ボッチは作らないが、一束は上ノ原よりひとまわり大きい。3時頃に作業は終了し、この日の成果は66束。
和歌山ロータリークラブから大勢の参加者 |
茅刈指導 |
茅束 |
参加者一同 |
茅の結束 |
後片付けの後は、途中夕食の食材の買い出しをしてから、今日の宿であるは「志高庵」に移動。高志庵は豊原さんが代表をつとめる「古都里」が運営する古民家ゲストハウスで、「茅葺きプロジェクト」の活動拠点でもあります。
このプロジェクトは、四年前に和歌山大学の「わかやま未来学副専攻」プログラムから生まれたもの。これは県内企業やNPOなどと協働して、地域の課題に実践的に取り組む教育プログラムで、その目的は、過疎などの深刻な地域課題の中で、逆に豊かな自然環境と文化資源を活用して、「わかやまの未来を切り拓く若者」を育成すること。
その協働メンバーである豊原さんが学生と共に取り組む茅葺きプロジェクトの目下の目標は、志高庵のあるかつらぎ町志賀地区に、地域の魅力を結集、発信する茅葺き屋根のおむすび屋さんをつくることです。そして、その茅を生石高原から調達しながら、その美しい景観も守っていくことで、協働の関係を築いてゆこうとするものです。
この日の夕食は台所で学生と一緒に作ったものを総勢12人でいただきました。学生さんとの未来思考の話が弾んだ楽しいひとときでした。
古民家ゲストハウス志高庵 |
むすび屋弥右ヱ門茅葺PTのメンバーはみんな情熱家 |
むすび屋弥右ヱ門茅葺PTが造った茶室 |
最終日(12月6日)
最終日は、天野産の酒米のみで地酒を醸造している酒蔵「初桜酒蔵」を見学して、ツアーを終了しました。
初桜酒造の銘酒 |
様々な出会いと気づきに満ちた充実した四日間を過ごすことが出来ました。
報告 稲
写真 草野 藤岡
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