2015年9月17日木曜日

活動報告 ミズナラ林の整備と初秋の藤原探訪 車座講座「藤原茶飲み昔語り」

 

 9月の定例活動は、1213日、12名参加、両日とも初秋らしいさわやかな天気だけど身体を動かすと大汗をかくような気温の中行われました。周囲の山々の紅葉はまだ早く、上ノ原のススキの穂はツンと上を向いて穂は赤味を帯び、風に舞う綿毛は未だできていません。これが10月には垂れ下がり、招くような尾花となります。


赤味を帯びた若い穂 生育はいまひとつか?
○上ノ原のススキ

 ススキは全体的に元気がないように感じられ、心配しているススキの生育不良は今年も続いているようです。それに、ススキ以外の草の繁茂が激しくなったように感じるのは気候のせいなのか、富栄養化しているのか、その反対に長年の利用による衰退か、土壌分析をするなど早急な原因分析が必要です。 

 

○ミズナラ林伐採・材運搬・散策

今回の作業は、伐採と伐採木の玉切りと管理道までの運び出し。

伐採は、昨年の試験地伐採箇所の隣接地を55200本伐採する段取りでしたが伐採手が草野だけでしたので思うようにできませんでした。それでも、ニューチェンソーを駆使してミズナラ、ミズキ、ハウチワカエデなど20本ほどを伐採・玉切りしました。このうち2本はKさんが伐採しました。初体験ながら想定した方向に倒れました(お見事)。
初体験の伐採木が倒れる瞬間 お見事!
 

 搬出は、昨年に伐採して残っていた材を運びやすい長さに玉切りし管理道脇まで運ぶ作業です。1年以上たって乾燥しているとはいえ、径20cmの重量物もあります。皆さん、抱えたり、肩に担いだりの重労働です。黙々とやっていただき全体の半分程を運び出しました。これは、NPOが作った石窯の炭焼き材として使います。10月には初窯で上ノ原白炭が生産されます。残りの大径材などは薪ストーブの薪として使います。重労働の割には達成感今ひとつだったかも・・・。
重労働でも黙々と
 

 重労働なのであまり長い時間は体の負担になります。力が残っているうちに切り上げて、木馬道を散策した後、秋の夕日に赤く染まったススキ草原を後にしました(マユミの赤い実が鮮やかでした)。
マユミの鮮やかな赤い実
今年はハバヤマボクチが自己主張

熟せばおいしいツノハシバミもまだ青い
 

 

○車座講座 藤原茶のみ昔語り

今回は車座講座「藤原茶飲み昔語り」でした。語り手は民宿の女主人です。傘寿を過ぎてなお矍鑠とした語り手は、昭和初期の比較的穏やかな時代から戦中・戦後の食糧難・物資不足の時代、ダム開発などで藤原が大きき変わった高度経済成長時代、その後の過疎化に拍車がかかった時代など藤原の変貌ぶりを見てこられました。

 講座は、昔日の青木沢集落のこと、青木沢峠道のこと、藤原の伝説、藤原の四季と暮らしのこと、趣味である押し花のこと、当時の営林署の評判、青水に対する評価などを草野が質問してその回答という形で語っていただきました。

 詳細は追って聞き書きとしてIさんにまとめていただきますが、印象に残ったものを記載しておきます。

語り手は、藤原の青木沢集落で生まれ育っておられます。子供時代通学路として使った青木沢峠道(青水が再生)を一緒に歩いていただいたことがあり、その時の感想と大雪の中の峠道の通学は大変だったでしょうとの問いかけに「40年ぶりに歩いて懐かく、歩けるようにしていただいてよかった。雪の中の生活、皆さんそうおっしゃるけど、こんなもんだと思って暮らしてきたのでそれほど苦になりませんでしたよ」と予想に反した答えが返ってきました。そうですね、自然を受け入れた生活でないと厳しい中では生きられないですよね。私たちの今の生活は自然に打たれ弱く不満や不平が多すぎますね。反省させられました。また、雪道の通学には雪踏みなど両親や集落の大人たちの子供達への愛情あふれる支えがあったことを語る顔には周りの人々への尊敬の念があふれていました。

 両親や兄弟の絆が強く、家族文集も出されておりみなさん教養に富んだ方のようです。家族が助け合って暮らしてきたエピソード、藤原は子供の教育に熱心でみんなで助け合って学校や子供たちを守ってきたことなど村人や隣近所の人々に対する愛情がひしひしと伝わる語り口でした。ここでは昔の貴重な写真などを見せてもらいました。

  亡くなったご主人は材木の伐採搬出の杣頭もされていて索道での材木の出し方を手ぶり身ぶりで説明されました。索道での伐採搬出は大変危険な作業ですがご主人が杣頭時代には一件の事故もなかったとか、仕事に厳しいきちっとした人だったようです。このとき、ご主人が買い集められた材が民宿の普請材料に使われていて藤原で佳い材が出ていたのがうかがわれます。

 押し花は、相当、勉強や研究をされたようで、NHKの婦人百科のコンテストにも入選されたとのことです。たくさんの作品を見せてもらいましたが草花の特徴を捉えて作品のどの部分に使うか発想力の素晴らしさがわかる作品でした。 

 自然とともに暮らす知恵、人に対する愛情があふれる語りは約1時間半続き、参加者からの質問ににこやかに答える御顔には赤味が差しその魅力にひきこまれた参加者は夜遅くまでその余韻に浸っていました。 林さんはとても魅力的な歳の取り方をされています。私はあのような歳の取り方ができるだろうか?あこがれます。

車座になって




魅力的な歳の取り方をされている語り手

 ○早起きは値千金

2日目は、皆さん5時の早起きで、昨夜の語りに出てきた青木沢集落を実際に見て、語りがよみがえってきました。そのあと、上流に鎮座する武尊神社に参拝し、名瀑裏見の滝を散策しました。遊歩道には栃の実がたくさん落ちていて、栃餅に挑戦するという某参加者が動物に先駆けて拾っていました(リスさんお先に)。

現在の青木沢集落の一部


裏見の滝 残念ながら裏から見れない

 

 今回も県道刈り払い奉仕もしました。

稲が色づき始めた初秋の藤原の素晴らしい景色と人情に満喫した2日間でした。

今回の活動の様子を群馬県森林ボランティア支援センターのスタッフが取材されました。下記のURLに掲載されています。

群馬県森林ボランティア支援センターのあいさつ

http://www.morinowa.pref.gunma.jp/report_p/   4コマ目

写真は、笹岡さんに提供いただきました。

                                            草野記

 

 


 


2015年9月7日月曜日

藤原諏訪神社例大祭 -祭りは続き、地域も続く-


 藤原諏訪神社の祭りに行ってきました。この祭りはこれまで盛夏の817日に催されていましたが、今年は96日(日)に行われました。8月は、民宿などが忙しく参加しにくく、都会に出ている人もお盆で帰ったすぐ後で帰郷しにくいという理由があったようです。なんでも、以前は9月のこの時期に行っていたようで夏祭りと思っていましたが秋祭りだったのですね。

 当日は、11時半ごろに諏訪神社につきましたが既に祭りは最高潮、四場うちの二場の獅子舞が終わり地元出身の演歌歌手が歌っているところでした。境内には大勢の観客がいて顔見知りもたくさんいます、しかし、20年前に観たときには桟敷席はほぼ

満席だったのですが今回は当時の3分の1程で、時の流れを感じました。

 
 
 
賑わいが戻った諏訪神社
 
 
 
桟敷席から威勢のいい掛け声(ヤジ?)やおひねりが降ってくる
 

塾からの神饌料を納め、いつもお世話になっている民宿の女将さんたちと話していたところ、町田工業の町田社長と出会い、そこに区長さんが寄ってきて、神社の修理にお世話になった二人を紹介したいとのことでした。

そうです。平成24年北側、25年南側の2回に分けて行われた諏訪神社の屋根替え用の茅は上ノ原産でボランティアが刈ったものを町田工業さんに加工してもらって現物支給したのです。
 

 
また、今年の雪で被害を受けた梁の修理の際の屋根茅は町田工業さんにも在庫がなく、昨年の10月の茅刈でボランティアが刈った茅ボッチ80ボッチ(400束)を倉庫にストックしていたところ急遽使わせてほしいとの申し出に寄進したものでした。
 
 
花笠たちに連れられた獅子が入場
 
もっとも、素人がボランティアで刈ったもの、品質は今一で、400束のうち
根茅用に精選したら約半分になったそうです。ボランティア製といえどこうして
お役に立つのですから茅ボッチの品質の向上が望まれます。
屋根茅の寄進は私たちにとっても藤原の方々の心のよりどころである諏訪神社の修復に貢献出来るので大変喜ばしいことです。区長さんから私たちを皆さんの前でご丁寧に紹介していただき大変恐縮しましたがこれまでの活動が実を結んだと感じました。
祭りは、集落が輪番で担当しているようです。今回は四場の獅子舞の幕間に、子供達のダンス、歌謡ショ-、大利根源流太鼓の演武、地元婦人衆のユーモラスな踊り、カラオケなどまさに村人こぞってのお祭りとなっていました。
一場30分以上連続で、それが四場の獅子舞

大利根源流太鼓
 
婦人衆のとっくり踊り
 

 
獅子舞は笛や鐘の囃しに雌獅子1頭と雄獅子2頭が踊る伝統的な奉納獅子舞です。
私が見た第三場の「耶魔懸り」の獅子を北山さん、吉野一幸さん、この場の雌獅子は一幸さんの長男、そして第四場の「吉利」を中島真人さんが振っていました。花笠は親男さんや惣一郎さんも登場していました。
獅子舞は一場が約30分以上も続く長丁場で、大半が中腰の姿勢で、動かす頭や手足は数えきれないほど多く、振者の疲れは並大抵ではなさそうです。あとで北山さんに聞いたところ817日から稽古に入ったそうです。私たちと一緒に観賞していた民宿の女将さんの話によると、今年の当番の集落の振り手はまだまだいるようですが、ある集落は過疎化や老齢化で危機的状況のようです。
神様に感謝し五穀豊穣を祝う祭り、地域の人々の心のよりどころである祭り、そこで奉納される伝統芸能の獅子舞がいつまでも続きますようにと本殿に祈りました。
「祭りの終わりは地域の終わり」といいます。祭りに帰ってくる者がいて、残った人と移住してくる人が力を合わせ自分たちでできる間は自分たちでなんとかする気概で祭りを続ける藤原の健在ぶりを知らされた祭りでした。
 
 
動画を貼り付け皆さんに見てほしかったのですがうまくいきませんでした。
塾でもこの祭りに参加するツアーがあってもいいでしょうね。

                                 草野記

2015年7月13日月曜日

炎天下の防火帯刈払い、草花着花調査 ミッション終了

7月の定例活動は1112日に梅雨明けを思わせる高温・炎天下で行われました。

今回の作業は、動力刈払機による防火帯の刈払いと草原の草花の個体数と着花数調査に挑戦するプログラムでした。

 昨年から、一般参加者に刈り払い機を使う作業をしてもらっていますが、今年も初体験2名を含め6人で汗だくとなりながらの刈払いとなりました。

 午後1時、刈り払い機の特徴と安全作業などのミーティングを念入りに行ってから作業開始です。

 昨年の経験者は、慣れたもので機械を使う姿が様になっています。初体験者は、最初こそオッカナビックリでしたが、30分もするとコツもつかめたようで斜面がみるみる刈り取られていきます。 
カラマツ林に隣接している西側の防火帯は、傾斜も緩やかなところです。ここは、今年で4年目の刈払となり、ススキ主体の植生が衰退し、時期も少し早いため草丈も短く柔らかく演習の場として最適です。大汗をかきながら約1時間でこの斜面は終了しました。
刈り払い開始

初体験もすぐに慣れて

今年の新人カリジョ



 次の刈払い場所は、北側のミズナラ林に接し灌木や、切株、つるが多いためやや難儀するところです。ここでは、ベテラン組が山側を刈払い、時間をおいて横一列に刈りはらっていく方法を取りました。カエデ、タニウツギ、ヤマウルシにヤマブドウなどの木本が多い植生、刈刃にこれらが絡まりるうえ傾斜がきつく転石もあって能率が上がりません。2時間の作業で終わらず、1/3を残し本日の作業は午後4時過ぎに終了です。
 ここで毎年見かけるヤマユリが今年は見当たりませんでした。  
 
 この場所の残りと十郎太沢の防火帯は、2日目に二手に分かれて行ったところ涼しい時間帯であったこともあり、約1時間で終了しました。十郎太沢沿いの防火帯にはシオデがかなり生育しており、来年の山菜取りのために刈り残しておきました。
 草原を眺めると、刈払い跡が周りときれいに区別され、作業成果が一目瞭然、今年の参加者も達成感を実感していました。
シオデ発見
成果がわかりやすく達成感あり


 今年の防火帯刈払いは6台の機械がフル稼働し、炎天下にもかかわらず皆さん頑張っていただき、定例活動の中でミッション終了です。おかげで平日の臨時活動をしなくてよくなり助かりました。

 今回の宿泊は湯ノ小屋温泉の照葉荘です。大汗の疲れも温泉が吹き飛ばしてくれました。

 夕食後、西村会員の車座講座「上ノ原の植生調査の意義」が行われ、植生着花調査の意義や上ノ原の草花の紹介とともに植生調査を継続して行い、上ノ原の植生の生育の特徴が見えてくればどのように管理するかも見えてくるなどの貴重な示唆があり、参加者にわかりやすい講座となりました。
 この夜は、8時過ぎに前を流れる湯ノ小屋川の蛍の鑑賞のおまけつき、幻想的なひかりが疲れた体を癒してくれました。
 2日目は、皆さん5時に早起きして、三菱UFJ環境財団の水源の森林で探鳥会を行い、朝飯雨の仕事として県道の草刈りもやっていただき、早朝のならまた湖を訪れて宿に帰りました。
今年2回目の県道草刈奉仕

UFJ環境財団の森の近くのブナの種子

早朝のならまた湖

 早起きは清々しく、山並みに朝日が当たっていく輝く様子は太陽の光を待っていた自然の歓喜が聞こえるようで「希望」が湧いてくるような感覚になります。早起きは三文どころか値千金です。

****着花調査報告****

着花数調査では、今年は少し季節が遅く花が咲いていないものも多かったので、花にこだわらず識別しやすい植物(ノアザミ、ワラビ等)を調べることにしました。調査員4人で、事前に作っておいた6つの調査枠のうち、今年野焼きをしたところとしていないところを2つずつ、合計4つの枠で調査を行いました。暑い中で、茂ってきた草原の中に分け入っての作業でしたが、普段外からぼんやり見ているだけではわからない、草原での植物の生育状況をそれぞれ感じられたようでした。
調査結果は、厳密なものではありませんが、次の通りです。花の咲く植物については、今年野焼きをしたところにやや多かった植物もありましたが、地点ごとのばらつきも大きそうでした。ただ、今年野焼きをしていないところのうち、ススキの枯れ茎が分厚く積もっていたほうの調査枠では、明らかに種類、花数ともに少ないようでした。わかりやすい結果として出たのはワラビの個体数で、野焼きをした調査枠ではしていない調査枠の約3倍の個体数が確認されました(西村記)
 

ススキ草原に分け入って草花を調べます。

今回の活動には、埼玉から藤原に移住を希望しているNさんも一日体験として着花調査や散策をしてもらいました。ぜひとも仲間にしたい好青年でした。

Nさんのほかにも移住希望者の見学が2組、藤原に若者が増える予感がします。

北山さんがんばれ!!


                               文責 草野 

2015年7月7日火曜日

自分(ゆめ)プロジェクトのお手伝い  麗澤中一年生 奥利根水源の森林フィールド・ワーク


7月3日、廣池学園麗澤中一年生の奥利根水源の森林フィールド・ワーク(以下FW)を実施しました。

 このFWは、自分(ゆめ)プロジェクト(後述)の学習プログラムとして、5月にキャンパス内で行う樹木観察会とともに学校の依頼により当塾がお手伝いしているものです。

今年の一年生は4クラス8グループ148人、生徒たちは、前日2日に藤原ダムで首都圏の

水がめである奥利根地域にあるダムの役割や水没した集落などの話を地元の林親男さんから聞いた後、宿泊し2日目の上ノ原・森林散策、草木クラフトを体験して3日目にまとめをする2泊3日の日程です。

一方、受け入れ側の塾関係者は首都圏から7人、地元インストラクター9人、計16人が二人一組で1グループ14人~20人を受け持ちます。

地元インストラクター6名と首都圏インストラクター7名は、前日、青木沢集落~芦の田峠~平出集落の森林散策路のインストラクションポイントや危険箇所等を把握のため下見を行いました。
この後、首都圏インストラクターとIターンのIさんは、草木クラフトの茅編み材料となる茅をスグリ、切断して束にする作業を行いました。この作業が意外と大変で夜なべも覚悟しましたが何とか夕食までには終わりこれで準備は整いました。
 
安全と説明ポイントを下見

茅スグリ

出来上がった茅編み材料


 

当日は、やはり梅雨空、降雨も覚悟しなければならないような天気の中、9時の対面式後、草木クラフト、森林散策、草原散策、雲越家住宅、諏訪神社見学とそれぞれのグループごとに最初の課題から取り組み、全行程を終了したのは16時、この間、小雨程度の降雨はあったものの事故もなく無事に終了しました。
対面式
 

以下、私が担当したA組2班、5号車組のフィールド・ワークの様子です。

このグループが最初に取り組んだのは草木クラフトです。これは、岡田さんのアイデアと経験からプログラムに採用されたもので、昨年は4種類のメニューでしたが、今年は、ススキのミニすだれを作る「茅編み」と木の葉をアクリル絵の具でエコバックに染める「木の葉の模様染」です。茅編みの生徒たちは「習字の筆巻き」にするといって真剣に取り組み、出来栄えもよく、木の葉の模様染の生徒はメグスリノキ、コハウチワカエデ、シダなどデザインを考えながら取組み、世界に一つだけしかないマイバックが出来上がりました。
 
木の葉の模様染め

茅編み

シダの葉をデザイン
完成まじかの筆巻き


 

そのあと、バス移動で雲越家住宅を見学、茅屋根の特徴や雲越仙太郎さんの自給自足の暮らしぶりの説明を聞きましたが生徒たちには囲炉裏から上がる煙が目に染みたようです。

囲炉裏の煙が歓迎してくれた雲越家住宅



このあとの上ノ原草原では、ヤマウルシや蜂などについて注意を受けたあと、樹木や草原に住む動物や昆虫の話を聞きながら散策、ここでは小雨が降りましたが濡れることもなく約1時間の散策で草原の生物が豊富であることや草原を維持するための野焼きや茅刈作業について説明しました。

昼食後の諏訪神社は、時間の都合でバスの中から見て、屋根に使われている茅が上ノ原産であること、夏のお祭りは獅子舞神楽の奉納で賑わうことなどの説明になりました。

森林散策は、木沢集落を出発、集落、森林、畑がある風景の中で「森林のいろいろな働き」の説明を受けたあと武尊川に向かって散策をはじめました。途中、オニグルミの実がなっている姿を見て、落ちた殻からわかる二ホンリスやアカネズミの食べ方の違いのなどを解説しました。

水量も多く流れる武尊川に架かっている橋が少し傾いていたことから用心しながら一人ずつ渡り、その緊張が残っている間に、森に降った雨の行方、森林の水源涵養機能の説明をしました。
 
武尊川の橋
 

芦の田峠に向かう間は、あたらしい伐採・植林地があって林業のことを説明する絶好の場所です。伐採は悪いことでなく、適正に計画的に伐採して木材を利用しまた植林する循環が大事なことにふれました。。

芦の田峠の道祖神の前で、しばし休憩を取り、この間、尾島さんによる「森林は大気を守る」と題して「地球温暖化と森林」について約25分の緑陰講座が行われました。
 
緑陰講座
 

生徒たちにはすべてを理解することは無理かもしれませんが、今、世界的な問題でもあり自分たちの暮らしぶりに直結しニュースなどで頻繁に見聞きする話題として地球温暖化問題と森林の二酸化炭素吸収固定機能について解説しました。ここでは、その原動力である光合成をおこなっている実物の森林を見ながら聞くことの効果を考えて少し長く時間をとりました。

ここからの道は下り坂、足が早まりますが、途中には、森林土壌を学ぶには絶好のブナ林があります。前日仕掛けた紙コップの土壌生物トラップは残念ながらかかっていませんでした。このトラップは工夫の余地があるようです。ここでは、森林土壌の状態、色や手触り、においをかがせてキヤンパスの林との違いと土壌動物の話や森林土壌の特徴が水源涵養機能を高めていることを説明しました。


ブナ林では土壌の話を

途中にある、フジヅルのブランコ、炭窯、カラマツ・スギの人工林を見ながら平出集落に到着です。この間、2時間、ゴールに着きでホッとしたところで最後に、森林や草原で何を見たかを生徒たちに聞き、それぞれがあげたものを生産者、消費者(一次・二次)、分解者に分け、森林の動植物が豊かで、それぞれがつながって森林生態系を作っていることを説明してプログラムを締めくくりました。
 
フジヅルのブランコ
 
今年の生徒は、問いかけによく答えていましたが、全体的に声が小さい、もっと元気を出してほしいものです。また、一部の女子生徒と男子生徒4人はいつも固まって行動していましたが後ろのほうで聞いていることが多く、積極性が感じられなかったのは残念です。

麗澤学園中学の「自分プロジェクト」は、

・大きな志を以て真理を探究し、高い品格と深い英知を備えた人物

・自然の恵みと先人の恩恵に感謝し、万物を慈しみ育てる心を有する人物

・自ら進んで義務と責任を果たし、国際社会に貢献できる人物

の人物像を目指し、1年生から3年間を通した学習プログラムで、

・1年生は「自分と自然の関係を学ぶ、(樹木や森に学ぶ)」

・2年生は「自分と国家の関係を学ぶ(熊野、伊勢、奈良、京都などを訪ねる)」

・3年生は「自分と世界の関係を学ぶ(英国、ニュージランドなど海外訪問)」となっています。

生徒たち(子供たち)は未来からの留学生です。彼らの未来での存分の活躍を願って、塾としても、キャンパスでの樹木観察会とFWのプログラムに改良を加えながら対応しています。

対応いただいた地元および首都圏のインストラクターの皆さんに感謝申し上げます。

                                                    草野 記

2015年6月30日火曜日

継続はタカラ 茶草場農法が育む自然


 東海道新幹線を名古屋方面に向かうと、静岡駅を過ぎ掛川駅に到着する前の右側の小高い山の頂上付近に鮮やかな緑の「茶」の文字が見えます。茶処の象徴ということは分かっていましたが、見るたびに近くで見たいと思っていた風景でした。

粟ヶ岳の茶文字
 6月28日、全国草原再生ネットワークの総会が掛川市で開催され、そのエクスカーションで掛川市東山・日坂地域の茶草場農法を視察する機会を得て、茶文字のある粟ヶ岳(532m)にのぼるとともに、その文字と周辺の風景に秘められた日本農業の真髄を見ることができました
東山地区の風景は、茶畑、里山森林、草場、集落が織りなすモザイク風景であり、日本の原風景を堪能できますがその風景を醸し出しているのは江戸末期からといわれる営々と営まれてきたお茶栽培と草場の伝統農法であり、「茶草場農法」と呼ばれています。
茶畑、集落、茶草場、森林のモザイクが美しい

現地では、茶栽培農家の杉山さんと農業環境技術研究所の楠本さんに案内していただきお話を伺いました。以下、説明いただいたことを私なりに整理したものです。
茶栽培農家の杉山さん

研究者の楠本さん


「茶草場農法」の「茶草場」とは、茶園に有機物として投入するササ、ススキ、雑草を刈り取るための茶園に隣接あるいは共有地の半自然草地のことです。

笹とススキの茶草場


茶草場は、積極的に草を利用するため、茶畑の周辺に点在する静岡県の特徴的な風景ですが、それら草地には希少種を含む多くの草地性の植物が生育する環境となっています。

茶栽培農家は、より高品質なお茶を生産しようと当たり前に継続してきた営みがいきものを守っていて、農業と生物多様性が同じベクトルを持ち両立していることが国際的に評価され、2013年に世界農業遺産に認定されました。

 世界農業遺産とは、国際連合食糧農業機関(FAO)が世界的に重要な農業や土地利用のみならず、生態系や土地景観、習慣、伝統文化など農業に関する文化的な要素も含め次世代に継承すべきものとして認定するもので、2014年5月現在、世界では13か国31か所、日本では、新潟県佐渡地域(トキと共生する佐渡の里山)、石川県能登地域(能登の里山里海)大分県国東半島(クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産環境)、熊本県阿蘇地域(阿蘇の草原の維持と持続的農業)があります。

 静岡の茶草場農法は、晩秋から冬(11月~2月)に茶草場の草を刈り乾燥させ、裁断して、茶畑に投入するもので、その効果は、お茶の味に表われ、特に一番茶の味がよくなるそうです。

茶畑にとっては、刈草の投入により、土壌の保湿、保温、土壌動物や微生物の繁殖による土質改善、堆肥効果、肥料持ちが良い、降雨による土壌の流出防止、雑草の繁茂抑制、など土壌条件の改善効果があります。そして、草地にとっては毎年の刈取りにより半自然状態が維持され、生物多様性が保全されることになります。この関係は、「茶生産が草原を守り、草原が茶生産を守っている」ということになります。加えて、地域文化の形成にも貢献しています。
その効果は土壌に


ここの茶草場には、万葉集に詠まれている植物が当たり前のように生育しており

ここで見られる希少な生物として次のようなものがあります。

植物では、フジタイゲキ(静岡県固有種絶滅危惧Ⅱ類)、アキカラマツ、ワレモコウ、ハルリンドウ、ササユリ、ヤマハギ、リュウノウキグ、ヒオウギ、カワラナデシコ、オカトラノオウなど、昆虫や動物では、カケガワフキバッタ(新種)カモシカ、サシバ、モリアオガエル、などです。

実際、フジタイゲキ、ユウスゲ、カキラン、ノハナショウブ、オカトラノオウ、コマツナギなどを見ることができました。
フジの名前を持つフジタイゲキ

ササユリは時季を過ぎて

ノハナジョウブ

ワレモコウの花は未だ

ユウスゲ

トラノオウ

カキラン

コマツナギ

 
 茶草場農法のキャッチフレーズはわかりやすく「茶草場農法が育む自然」「豊かな生物多様性を育み、環境と共生する伝統農法」となっています。

しかし、一方では課題もあります。それはこの農法を継続するには農家の方の相当の労力が費やされることです。特に、急傾斜地での冬場の作業は口では言えない苦労があるようです。

東山地区の茶草場は、茶園182haに対して草地130ha、総面積312haの40%が草地となっています。そして、草地を利用しない場合、出荷組合の規定により売り上げの20%を徴収するペナルティーなども設けて伝統農法を守る努力が続けられています。

この茶草場農法は、伝統的農法ですがこれからの農業の方向性を示唆しています。これの継続のためには、後継者の問題もありますが茶の生産が継続しなければ成り立たないということですので茶の需要が増え、適正な価格により所得が安定しなければなりません。そのほかブランド形成や環境支払、グリーンツーリズムなども取り入れています。

・ブランド化 茶葉シール(ラベリング)三葉 茶草場面積/茶園面積=50%以上

                   二葉          =2550

                   一葉          =525


グリーンツーリズムも実績があるようで滞在した掛川市中心部のホテルで秋冬限定の「茶草場ツーリズム」というチラシを見かけました。
参考になる看板のスタイル

 

今回の視察で、継続が力であることを実感しました。上ノ原も半自然草原です。茶草場農法は業としてつづけた結果です。
 上ノ原の場合、業としての位置づけがないのが弱点ですが茅の生産という営みにより生物多様性を確保する茅場として、野焼きや茅刈などを営々と続けていけばいつか脚光を浴びることもあるだろうとの希望も湧いてきました。

 その時のキャッチフレーズは「茅刈・野焼きが守る茅場、育む生き物」としたいですね。
                               草野記